84話 また貴女に会いにいく
1時半、私達は水峰寺の裏に集合した。今日は紗羅もついて来ている。昨日と同じ様に、辺りには私達以外誰もいない。
世羅は昨日と違って私達を突然気絶させて向こうへ連れて行くような手荒なマネはせず、昨日ここに帰る時に百合亜さんが開いてくれた中身が夜空みたいなワープゾーンを開けていた。
どうやらこのワープゾーン、使い手の気分によって景色を変える事ができるらしく、難しい魔法であるが、開け方が分かれば簡単に模様替えが出来るようになるらしい。昨日のは百合亜さんが試しに模様替えをしただけであって、いつもは猫とか熊のぬいぐるみが浮いているとかいないとか……
ちなみに、世羅の瞬間的なテレポートはあの魔法の応用だ。そして、そのワープの魔法が難しいといわれている理由は、方向音痴だとか土地勘が無いとかだと出来ない上に、距離が遠ければ遠い程体力を消耗するからである。雷華さん曰く、「百合亜は間を置いてやらないと倒れるぜ」とのこと。
体力とかをあまり消耗しない特殊型の世羅達は、自分の故郷の近所でのワープであれば、こんなものくらい朝飯前だったりする。世に言うチートというやつだろうか、彼らばかりは魔力を抜いても、普通の人間に戻らない気がする。
「いや、俺は回復魔法が使えないからチートじゃないぜ」
「そうそう、私も運動はらい姉ほどできる訳じゃないし」
「読心術使ったな……」
世羅は瞳に赤みがかかり、紗羅は瞳に青みがかかっている。二人とも毛先が金色になっていて、明らかに魔法を使っている証拠だと分かる。私が見ていることに気づいたのか、二人はそこの色を見えなくしながら読心術を使っている。うーむ、なんとも小賢しい。
それにしても、さっきの紗羅の顔、見覚えのある誰かに似ていたような…… 誰だったっけ。
「まぁいいや、さっさとあっちに行こうぜー!?」
「早く行かないと、澪の魔法使いの儀式が終わっちゃうからねー!」
「棒読みー」
まったく、この2人は本当に悪戯好きというか、なんというか…… とにかく、早く澪の所に行こう。彼女が魔女になる瞬間まで、私達がしっかり見守ってあげるんだ。
世羅が開いた夜空のワープゾーンに、一歩足を踏み入れる。約3秒後、昨日と同じように目を閉じると、その暗闇で感じたのは頬にてりつく熱い感覚。明らかに、あの街の太陽からくる熱ではない。あの街には雪山があったから、本来のこの季節はもう少し涼しいはずだ。なんだなんだ、こんな季節に焼き芋でも焼いているのか?
「え……!?」
目の前に広がった光景は、昨日の陽気な街の景色ではない。
巨大な怪物のように燃え盛る、真っ赤な炎の海だった。




