79話 特殊型の魔法使い
【一矢 視点】
あれから数分後、最初よりずっと小さくなった黄色い塊を、ころころと手の平で転がしながら、俺は世羅に花札を教えてもらっていた。
月見とか、猪鹿蝶とか、聞いたこともないような難しい言葉ばかり。今ちょうど、こいこいを簡単にしたような花札の対戦をしているが、あいつは手加減と言うものを知らないらしい。
教えの元で2回程戦って、現在の俺は全敗中。あともう少しで勝てるってとこで負けるから、それはもう悔しくて仕方がない。今度トーナメント戦もやってみたいから、いつか勇助達にも教えてやろう。
で、今更思い出したけど、世羅って前に霰粒橋で会った白い奴だったんだよな。
「魔法使いってさ、魔法の得意不得意とかあるのか?」
「あー、たまーにそういうバランス悪いヤツがいるんだよな。ごく稀だけど」
「世羅は?」
「俺、生まれつきの攻撃型でさ。回復の魔法は使えなくて、治せるのは自分の体だけなんだ」
「勝手に治るタイプなのか…… ひとりで戦ったらチー」
「チートじゃない」
チート気味の世羅はその3人の中で、最も特殊型の魔法使いだ。身体能力が高く、相手の能力をコピーして記憶する能力を持ち、百合亜さんの弟だからか頭も良い。しかーし、性格は気まぐれでずる賢いのだ。なんとなく見てみると、世羅はボケとツッコミが両方出来そうなタイプだと思えてくる。
あの塊はどのくらい小さくなっただろうと思って、ふと手の平を見つめる。今だに男らしくなれない、小さくて細い手も、いつかは雪菜より大きくなる。いつか魔法使いの仕事でピンチになった時に、いつでも守ってあげられるように。
……ん? どうして雪菜の名前ばっかり、頭に浮かぶんだろう。
「あ~、なるほど」
「え? あ、読心術使ってるだろ!?」
「心の目」
世羅の瞳が、金色から若干赤色になっている。白かったはずの髪先が、金色になっている。これは特殊型の彼らだけが持つ、魔法を使っている証拠だという。それにしても、俺が考え事をしている最中に、隣から読心術を使ってくるなんて…… しかも、何がなるほどだよ、お前は俺の心の中で何を見たんだ。
ゆらゆら揺れるキジトラ猫の尻尾を、何も言わずに目で追いかける俺。
世羅はこれ以上読心術を使ってこなかったが、なぜか彼は気まずそうに、こちらを見て俺の頬をつついた。
「それにしても、お前らってまだ付き合ってなかったんだな………」
「……ん? なんか言ったか?」
「いえいえ、なんにも言ってましぇん」
呆れ顔の世羅のつぶやきは、俺の耳には届かない。兄の白い腕にキジトラ猫が擦り寄り、柔らかいその尻尾は、俺の指の間からするりと抜けていった。




