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勿忘草の丘  作者: 中さん
第2章 異世界への一歩
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78話 秘密の友達

【一矢 視点】


今日も楽しかった。明日も雪菜達と一緒に遊ぼう。そう考えながら、鼻歌を歌う俺は玄関の扉を開ける。

そのまま靴を脱ぎ捨てて、そっとただいまの声をもらした。

疲れを知らない足を動かして、二階にある自分の部屋に向かう。

おっと、その前に洗面所で手を洗わなきゃ。いつ母ちゃんに聞かれても大丈夫なようにしないと、うちの母ちゃん、そういうのにはうるさいから。適当に手を水に触れさせて、壁に掛けられた黄色いタオルで手を拭く。片手だから難しいけど、しばらくの辛抱なんだし、少しずつ慣れていくしかないな……

骨折で片腕しかかけられないリュックを、大切に抱きながら階段を駆け上がり、なんとか部屋の扉を開けた。そして、そのままの勢いで電気をつけ、リュックを勉強机の上に置く。次に、うまいことそれのチャックを開いて、中に入っている荷物を片付けた。最後に、本題である黄色い正八面体の塊を取り出す。



「世羅、出てきていいぞ。今から何やるんだっけ?」

「いやいや、それ忘れたらアウトだろ!?」



満月のような瞳を大きく見開き、俺の肩をガシッとつかんだ世羅。

さっきまで俺の後ろをついて来ていた彼は、俺に魔法のことを教えてくれると同時に、しばらくここに住むことになった。ついでに、弟の寅も。

家族には秘密で、学校で会話をする時は雪菜達と同じ形式のテレパシーだ。この部屋では魔法で声を抑えてくれてるみたいだから、大声で喋っても大して問題ないらしい。

俺が一番驚いたのは、世羅と寅に食事が必要ないこと。食べる気になれば普通に食べる、でも餓死は絶対にしないという、つよーい奴らなのだ。

人間や普通の魔法使いとは全く違う部分があるらしいが、詳しくは教えてもらえなかった。

実はこれ、紗羅も同じなんだとか。このような特異な体質の魔法使いは、今のところ分かっているのはあっちの世界にいる3人だけだという。

そう、今言った3人だ。

まぁいいや、食費的に助かることに変わりはない。本当は雷華さん達が住む203号室でも大丈夫なはずなのだが、家内といえど女子の空間には入り辛いらしく、どうしてもという事で俺が承諾。

そんなハイスペック性能でもお風呂にだけは入りたいそうなので、これはもう一緒に入るしか…… ハァ!?

ま、まぁまぁ、それはその時に考えるということで。

世羅の方は部屋の壁にもたれかかり、足元に擦り寄る茶トラ猫を抱き上げた後、俺に向かって話を始めた。



「んじゃ、魔法使いになる儀式でも始めるか。と言っても、その黄色い石をずっと触って、魔力を吸収するだけなんだがな。正直、どうしてお前の分が見つかったのかは分からないんだけど…… とにかく、10分くらいで終わると思うぜ」

「うっわぁ、そんなの儀式じゃないだろー。それに魔法ってさ、本当に想像するだけで出来るのか?」

「おぅ、大きい魔法だと体力使うけど大体はできるぜ。こんな風に」



世羅は俺の前に手を差し出した。なんだろう、と思って手の平を見つめていると、世羅の指先から水晶みたいなものがバッと生えてきた。不気味な血の色だけど透き通っていて、とても綺麗な光に目を奪われてしまう。魔法って凄いものなんだと改めて感じたし、澪が魔法使いになりたいって言ったのも、これならよく分かる。


でも、あんな決断してまでやりたい事か?


いや、どうでもいいか、あいつは喜んでたんだし。雪菜も勇助も、澪のことはしっかり応援してたし。あいつはあいつのやりたいように、自由気ままにやればいいんだ。小さくなっていく黄色い正八面体の塊を転がしながら、そんな事を考えていた。

そしてその話に飽きれば、いつまでも世羅と喋っていた。

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