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勿忘草の丘  作者: 中さん
第2章 異世界への一歩
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77話 敷地面積の広い家

結局無人ままだった寺を出て、交通の邪魔にならない程度の塊になりながら数分歩く。群青色の屋根、乳白色の壁の水色のライン、庭に植えられた大小様々な木が目印の、我が家。

もっと言うなら、門を開けてから玄関に辿り着くまでの距離がとても長い。門を開けたすぐ目の前に階段があるからだ。そしてその階段を駆け上がると、数学の様に最も近い距離を求めても、3m程の距離はありそうな所に玄関の扉がある。そんな訳で、門の近くにある郵便箱に、今日の新聞を取りに行くだけでもひと苦労。

この辺は海が近く、洪水や津波で浸水しないように1m程床が高くしてあるので、安全上の理由で仕方がないのだ。いや、それでも玄関から門までの、変な3mの距離は関係ないな。



「うわー、雪菜の家の庭広すぎないか?」

「私に聞かれてもなぁ……」



羨ましがる一矢にそんな事を聞かれたが、私は本当に何も知らない。家の位置が高いのはともかく、敷地が広い理由は知らないのだ。多分、私の本当の両親がここにいた頃、車とかを止めるために広い裏庭を買ったんだと思うが、本当のところはどうなんだろう。昔は外で叔母さんと絵を描いたり、ごっこ遊びをしたりしていたが、今となっては後者が恥ずかしいので、そんな過去を彼に言えるはずもなく。

まぁとにかく、今の問題はこの人達をどう入れるかだ。アレンが交渉に行っているが、未だに帰って来ない。一体何をやっているんだろうか……



「雪菜ちゃん達ごめんね、待たせちゃって。ちょっと部屋を片付けてたから……」

「そうなんだ。良かったよ、なんともなくて」

「え、なんともないよー?」

「うん、だから良かった」



アレン達の帰りが遅かったので少し心配したが、どうやらなんともなかったようだ。叔母さんの言動の怪しさは相変わらずで、何か隠し事をしているようにしか見えない。とりあえず、アレンがあっちの世界の2人の紹介を、私と一矢が勇助の軽い紹介をして家に入った。4時頃の頬にあたる風は、冬よりマシになったものの、やはりまだ冷たい。

……あれ、何をするためにここへ来たんだっけ。

そんな私の疑問をよそに、みんなは居間でお喋りをしている。話の話題はコロコロと変わり、一番始めだけは真面目に私と一矢の今後の話、次に世羅達が住むあっちの世界の話、そして学校の話など、この会話が途絶えることは無かった。

昨日酷いことを言ってしまった理由、今の一矢なら分かってくれるだろうか。そう思ってちらりと彼の表情を窺うと、偶然目が合ってしまった。目を離してくれないなら仕方がない、これは腹をくくって聞くしかないな……

私は彼にちょいちょいと手招きをした後、近づいてきた耳元に、「私の秘密、分かってくれた?」と尋ねる。彼はコレだったのかよとでも言うように目をパチクリさせ、その後はずっと目を輝かせていた。



「それじゃ、また明日な!」

「うん、10時に私の家ね」



生き残った方の右腕を元気よく振り回し、友人達と去っていく一矢。その危なっかしい姿に多少の心配はしたけれど、歯を見せてニコニコ笑う彼の表情に、私の心は和むばかり。居間の大窓からそっと手を振り返して、「帰りも気をつけて……」とつぶやいた。彼らの姿が見えなくなった頃、私はゆっくり腕を下ろし、そっと大窓に指の腹をつける。ひんやりと伝わってくる程よい温度が、温まった私の手の感覚をゆっくり戻していってくれた。これは夢なんかじゃない、そろそろ澪の履歴が消えたことを確認しないと。

明日は幸せそうな彼女(ミオ)の顔を見るために、あっちの世界へ会いに行く。

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