76話 故郷の写真
「雪菜の家に行くのはどうですか?」
アレンの口から突然飛び出したのは、彼が今居候している家に行くという案だった。一矢の母に対する気持ちを察している様子だったので、発言する内容は大体予想できていたが、本当に先の事を見据えずに話を進める奴だな。叔母さんが家にいるかどうかも分からないし、ちょっと大人数な気もするし…… そういえば、雷華さんって叔母さんとはどんな関係なんだろう。喫茶店で話す仲なのか、叔母さんが彼女を見つめてイケメンだなーと思っているだけなのか。
「と言っても、私らがあっちの世界の人間だってこと、直美叔母さんはちゃんと分かってくれるのか?」
「それについては心配無用です! 昨日、叔母様に写真を見てもらいましたから」
「え、昨日言ってた写真、叔母さんに見せてたの?」
「うん。僕と師匠と寅君と、ロックさんと紗羅さんと雷華さんと、百合亜さんと知里花さんの」
「えー、私見てなかった……」
「じゃあまた今度見せてあげるよ、他にも写真が一杯あるんだ!」
写真といえば確かに昨夜、叔母さんが写真を見ていた気がする。趣味のプラ板をやりながら、机に置かれた1枚の写真のようなものを眺めていた。あれ、雷華さん達が写った故郷の写真だったんだ。じっくり見たいところだし、忘れていなければ今日の夜に見てみようかな。
それじゃあ、今から私の家に行くというのか…… なんの連絡もしてないのに?
「それに、もしかしたら写真のうちの数人が、この辺りに来るかもって言ったから! 多分大丈夫だと思うよー」
「いつ、何処で、誰に」
「昨日の夜、リビングで、あの写真を見ながらプラ板をやってる叔母様に」
「まぁ、アレンをすんなり受け入れる程の人柄だし、私らのことは知ってるんだろ? それならすぐに向かおうぜ、私もあの人ともっと話したいし」
「いや、なんか違うぞ。雪菜の叔母がアレンを受け入れたのは、当時のアレンの身長が手のりサイズだったからなんじゃないか!? 俺達は例外なんじゃ……」
「えっと、アレンをすんなりと受け入れた訳は世羅の言うとおりなんだけど……雷華さんの言ったように、ちょっとした用事って事なら大丈夫だと思うよ。私の家の敷地、日之影家には及ばないけど、それなりに広いから」
唐突に魔法使いだけの会議が始まり、このままでは本来の目的である、私の家に行く事が出来なくなってしまうと思った。そんな事はさせまい、こうなったら意地でも叔母さんに、あっちの世界の人々を紹介してやろうではないか。私は急いで会議の結論を出した後、「行くなら早く行こう」と手招きして、のんびりしているみんなを急かした。
現在の時刻、4時7分。まだ53分も残ってる。




