68話 魔法使いと人間
雷華さんが行きたいと言っている場所は、この街の南にある森の奥だった。世羅達がいる武器屋も、森の入り口の近くで、その目的地には6分ほどで着くらしい。そうして家を出てから4分後、武器屋に寄っていたらしい世羅とロックさんのいる場所で合流。実は合流をした少しの間に、私は疑問に思った事を紗羅に聞いていた。
「紗羅、世羅も私達と同じ魔法使いだよね」
「うーん、私達はちょっと特殊なタイプだけど」
「じゃあ、どうしてハンドガンを使う必要があるの?」
「それは私にもよく分からないんだけど、多分あいつなりの戦法なんだと思うわ。だから、簡単な戦闘の時は銃ばっかりでねー、最近はライフルにも興味があるだかなんだか。相手が少なければ体術でやっちゃう時もあるから、本当に大怪我の常習犯っていうのかしら……」
「うわぁ、紗羅達も心配だね」
答えを聞いた時、世羅は魔法にはあまり頼らないタイプなんだなと思った。すると、紗羅は「まぁ死なないから良いんだけどね」とつぶやく。
世羅の身体の丈夫さに内心驚いたが、そういえば霰粒橋の時も、平気だとか言って去っていったな…… 半袖白パーカーのチャックが開いているので、そこから覗く黒いタンクトップがよく見える。彼が飛び上がったのと同時に、少しだけあらわになった細い腹には、確かに肌と同化しそうな白い包帯が巻かれていた。
それにしても、魔法使いなのに魔法を使わないというのは、少しもったいないような気もしてしまう。まぁ私自身も魔法の練習以外ではほとんど使った事がないし、そんな事をとやかく言えるような立場でもないけれど。
そういえば、雷華さんとロックさんは百合亜さんの家に居候しているらしいが、彼女らも魔法使いの血族なのだろうか。
「いや、私とロックは魔法使いじゃないぜ? まぁ、仕事の関係で危険な事が多いから、百合亜がちょっとだけ守りの魔法をかけてくれたんだけどな」
「でも、らい姉の身体能力とか強さとかはもともとだし、魔法を取った後で人間と比べても、結構凄い方よね。一体何処で、そんなに強くなったのよー」
「幼い頃にちょっとな」
紗羅の文句にそっと答えた後、また寂しげな顔からニコニコ顔に戻った雷華さんは、赤いバンダナからはねた濃い赤茶の髪をいじる。どうやらこの居候の長身二人は、普段から百合亜さん達の仕事のお手伝いをしているらしい。その仕事内容は、魔物の討伐や地方の調査。それ故に怪我をしやすいため、心配性の百合亜さんが、攻撃を受けても軽傷で済むようにと魔法をかけたんだとか。ちなみに、ロックさんについてはもう一つ理由があるそうだが、今はみんな知らないらしい。
私が今の会話で魔法使いと人間に関する事だと思ったのはここまで。その後は、私達が来る前にあった出来事や、日常の事、一家の豆知識ばかりだった。
豆知識でいうと、百合亜さんがかけている眼鏡は伊達メガネだとか、知里花さんは痩せの大食いだとか、世羅と一緒にいるキジトラの猫の寅は人の姿にもなれるだとか、世羅と紗羅の今の白髪の姿は本来の姿と違うとか、それでも今の方が動きやすいってことだとか。
……で、寅は世羅の弟だとか。
驚かされる知識が非常に多かったのであります。一緒にいる時間が長いはずのアレンも、私達と驚いていたのは心外だが、こいつは修行の時にどんなことをやっていたのだろうか。それで、一矢はそんなことお構いなしに風景を眺めてるけど…… ちゃんと話を聞いてるのかね。




