67話 入居手続きの合間
「……貴女の気持ちは分かったわ。手続きしてくるから、待ってて」
ついに諦めたらしい百合亜さんはそう言って、家の奥に行ってしまった。その言葉を言う前に、彼女から微量の魔力を感じたのだが、その魔法の名前が分からないので紗羅に尋ねる。紗羅は読心術だと言って、魔法の名称自体には自信を持っている様子だが、百合亜さんが読心術を使うのは珍しいとのことだった。
高い場所に置かれた四角い洋風の時計を見ると、現在の時刻は1時48分。なんだ、まだ1時間も経ってない。それなら百合亜さんを待っている間、何をしていようか。取り残された女子3人で悩んでいると、丁度雷華さんが身支度を終えて、上から紗羅のほっぺをもちもちした。やられている側の紗羅はやり返そうとするも、雷華さんとは身長的な問題で腕の長さが足りず、見事に惨敗した。
ちなみに、現在買い出しに行っている、夢の中で見た長身の青年の名はロック。まだ帰って来てはいなかったけど、気になったからみんなで聞いてしまった。さっきあった事を教えると、雷華さんは扉の取っ手に手を掛けながら口を開いた。
「おー、じゃあ今は暇なんだな。お前らも外行くか?」
「あ、行きたい! 行こうぜ勇助」
そして今、私、澪、紗羅、雷華さん、一矢、勇助、アレンの七人で、さっきの街の商店街に来た。
この街に一つしかない大きな商店街は、地図を大雑把に見てみると北と南に伸びていて、北はさっきの丘と百合亜さんの家、南には大きな湖と森がある。そして、東は住宅街、西には洋風のお屋敷が建っている。ちなみに、あの時に見た夢にそっくりな百合亜さんの家は、やはりあの丘の下にある。客人が多い時があるらしく、他の家より少し大きめ。
そんな中、何故か敬語を使おうとしなくなった一矢は、その言動の原因であろうフレンドリーな雷華さんに質問を続けた。
「そういえば雷華さん、世羅って何処に行ったの?」
「世羅ならロックと合流した後に、武器屋に行くって言ってたな。ハンドガンの調子が悪いんだってさ」
『は、ハンドガン………?』
ハンドガンって、銃の?
恐ろしい単語を聞いたアレンと紗羅以外の人は、彼女の言葉に全員驚いていた。だって、私達が住んでいる世界じゃありえないんだもの。もし世羅があの霰粒橋で職務質問や持ち物検査を受けたら、彼は恐らく銃刀法違反で、あっさり捕まってしまったことだろう。いや、銃をパッと消すこともできるから、それでなんとかなるのだろうか。そもそも半分田舎の荒澤町の、あんなボロい橋で職務質問なんて、絶対にあり得ないな。
こうして驚く中学生達に、雷華さんはによによと笑みを浮かべながら話を続ける。
「いやいや、この世界にとってはそんなに珍しくないぜ? 銃を使う奴は、こことは違う外の所の人間くらいだけど」
『ええええええ』




