66話 若き日の記憶
【澪 視点】 ←視点が変わる際はこの形式でいきます
私は、どうしても魔法使いになりたかった。絶対にならなければと、既にボロボロになって動けないはずの心が、強く脈打っていた。
何故かって?
私の一番の宝物である雪菜を、これ以上ひとりぼっちにしたくない。もう二度と、あんな忌々しい家から、雪菜が離れていってしまう光景を見たくなかった。学習能力のないクラスメイトにも、嫌味しか言えない教師にもうんざり。第一、私は普通の人間のまま終わりたくないという願いがあった。
何でそう思うのかって?
だって、私はどんなに頑張っても報われなかったじゃない。
いつも親や教師の期待を押し付けられて、やっと一つの望みが叶えられたと思ったら、じゃあ次はこれをやりなさいって。どんなに頑張っても褒めてくれなかったのに、ちょっと答えを間違えただけで凄く怒った。両親は私の気持ちなんて知らないで、いつも幼い弟の面倒につきっきり。私のことは、テストや成績ぐらいしか見てくれない。
理不尽だよ、こんなの。
まるで、私達を操り人形のように扱って。ちゃんと我慢できた人の事は"あたりまえ"って言って、少しでもダメな人がいたらすぐ怒る。雪菜曰く、「私達は外の世界に出る前の、未完成の商品…… あるいは牧場の羊達じゃないかな」だって。やっぱりそうだよね、そんな気がしてたもん。
私達みたいに、怒りを覚える人はやっぱりいる。きっとそれは雪菜だって同じだよね? 整列の時も怒られたくないから、ずっと黙って静かにしているのに、周りの人間がずーっと喋りっぱなし。あの人達は、すごく能天気なお馬鹿さんなんだよ。
だからこそ、無自覚のあいつらは絶対に許せない。何事も気にしない心を持てるだなんて、悔しい、憎い、悲しい、妬ましい…… そんな黒い想いが積み重なっていった。そんな状態になっても、私はそれを発散する方法を探そうとはせず、ずっと我慢して放置し続ける。いろんな感情が混ざりあって、窮屈な生活に喉が詰まっていった。でも、自分の心はそう簡単に変えることができなくて、そうでもしないと辛い現実から逃げる事ができなかったのだ。
だから私は、魔法使いになっていいと言われた事に喜んでいた。これから、雪菜と本当の笑顔で向き合える事に、気持ちが高ぶる。たとえあの故郷で一緒に遊べなくなっても、他の友達に会えなくなっても、構わない。だって、雪菜がいてくれるんだもん。
そんな事を考えると、どうしようもない幸福感に思わず口元が緩む。
「澪、私も嬉しい……… けど、本当に良かったの?」
雪菜がちょっと困った様な、嬉しそうな表情で、私に問いかける。私は心の底からの笑顔で、「うん、私も雪菜と同じになれて嬉しい!」って、彼女の心を安心させるの。
雪菜が一緒にいてくれたから、今の私は笑っていられる。苦しい時も彼女が手を取ってくれるから、なんとか息をしていられる。
私、もう疲れたんだ。だからこれからは、ずっと一緒にいてね………
________雪菜。




