64話 普通じゃない女子会
数十分後、澪と一矢と勇助は百合亜さんに呼び出された。僅かな確率が当たってしまったら、彼女らは私より少し先に元の世界に返される。恐らく、彼女らを呼び出したのは最終確認の為だろう。ここに残るか、あっちに帰るかの問題で。
それで、残された私は紗羅とお喋りしながら、器に残されたクッキーの欠片をつまんでいた。話の内容は、私の今後について。私がこの世界にいる間の向こうの世界の時間はどうなるのか、お祝いが終わった後はどうするのか、アレンとの修行内容はどうなっていくのか。出来れば、アレン達の本来の目的も。聞きたいことが沢山あった、分からないことが少し不安だった。
そして、紗羅はその質問に対して苦い顔をしながら、簡単に説明をしてくれる。
「まず一つ目、雪菜の今後について。最近また物騒になってきたから、こっちでも魔法の練習をして手伝いをしてもらう事になるかもしれないの。雪菜の日常生活に支障がでないようにしたいんだけど…… もし何かあったら、こっちの世界で生きることになるかもしれないってところ」
「ふーん、今のところは曖昧かぁ」
うーむ、こちらに住むということは、あちらの生活にはもう戻れないってことか。だいぶ深刻な内容だが、覚悟を決めなければならない時が、いつかくるかもしれない。実際、今も中学生と魔法使いを兼ねて生活しているわけだし、もう既に魔法の色に染まってしまっているのかもしれないな。
「それじゃ、二つ目。雪菜がここにいる間の向こうの時間について。ここはあっちの世界と時間が並行してるから、今でもあっちの世界の時間は進んでる。もしもこっちの世界に来るときは、時間をしっかり見てから来るように。まぁ、あっちとこっちって言うけど、本当はある場所で繋がってるらしいのよ。今はテレポートでしか、まともな移動方法が見つかっていないけどね。テレポートは強い魔法を使えないとダメだし、あるいは特殊な人間でないと出来ないみたい」
「いつかテレポート出来るように頑張る」
「うんうん、頑張りなさい」
世羅も気にしていたように、繋がっている所があるのかどうも気になるが、まさかその繋ぎ目が荒澤町にあるのだろうか。そうなれば寺や学校を調べる必要がありそうだが、私の実力ではとても調べようがないのでやめておこう。今の一番の心当たりとしては、水峰寺の小さな湖か……
そしてもう一つ気になったのは、この並行世界に行き来できるのが、この世界の魔法使いと特殊能力者だけだということ。しかし、極稀に私達の世界の人間が、こちらに来てしまうこともあるんだとか。一体どういうことなんだろうと思ったが、紗羅の話が再開するので、考察を中断しよう。
「じゃあ、三つ目のお祝いが終わった時のことは、終わった後に話すわね。四つ目のアレンとの修行内容はいつも通りで大丈夫よ、内容も段々強い魔法になっていくだけだから。また何かあったら部屋にお邪魔するかもしれないけど…… ご家族の皆さんにも挨拶した方がいい?」
「……うーん、それはもう少し考えさせて」
「りょうかーい」
紗羅との話でほとんどの謎が解けたし、心の奥で黒く渦巻いていた心配も、一筋の光が確認できる程度に減った。詳しい目的は聞けずに終わったが、やはり魔法使いの文化を絶やさないためという理由が、含まれているのだろう。あとは、母さんに聞いてみないと分からないかもな……
まぁ、魔法使いの生活も案外悪いものじゃないし、今はこれでいいかな。




