55話 貴方の服がナッシング
ようやくやって来た土曜日の午前中、叔母さん達と買い物をしに行った。行き先は何年も前からやっている、商店街の中の小さな服屋。私がよく着るパーカー類は、今でもあそこでしか売っていない。いつもなら私は叔母さんと並んで歩くのだが、何故か今日は叔母さんが先を行ってしまい、仕方ないと思ってアレンと一緒に歩く。アレンは学校に行くときとは違って、普通の人にも見える状態だ。買い物の時ぐらいはさすがにこうしておかないと、サイズ合わせが大変だから、こればっかりはどうしようもないのだ。
そんな居候のアレンの服を買ってあげられる程、お金にはそれなりに余裕がある我が家。これも全て、朝早くから仕事に出向いてくれている叔母さんと、遠い外国から仕送りをしてくれる母親のおかげなのだ。
「アレンの服、叔母さんのお下がりでも良かった気がする」
「うん、確かにそうだね。その方が地球環境にも良いだろうしー」
「えぇ!? 流石にそれはちょっと……」
他愛も無い会話が繰り返される中、気がつけばその店の前についていた。最近取り付けられたばかりの、動作の遅い自動ドアに、よそ見をして頭をぶつけたアレン。黒シャツの襟が風で立ったことも気にならない程、彼はその痛みに頭を抱え、蚊の鳴くような呻き声をあげている。それと同時に集まった民衆の視線を察知し、私と叔母さんは静かに先を歩いていった。
2階の洋服スペースを目指し、一段飛ばしで階段を駆け上がっていく我々。なんでエレベーターじゃないんだって? 理由は簡単、エレベーターの重力のせいで酔うからだ。一応新幹線でも酔ったことあるよ、ある意味自慢だよ。
さーて、アレンの服の好みは一体どんなものだろう。一般人並みのセンスは持っていて欲しいんだけど。いきなり江戸の文字がプリントされた服を持ってきたら潰すが、にゃんこなら許してやる。そんな事を考えながら、約1時間掛かって買い物が終了。服の他にも色々見てきたのだが、優柔不断な私達に決められるはずもなく。
そんなわけで、私達は疲れ切っていた。今日はやけに客が多く、売り場にはいつも以上の人間が溢れかえっていたのだ。アレンも今回の人混みにはやられたみたいで、屍のように床に転がっていた。
「アレン、午後から澪のうちにも行くからね」
「頑張る~」
今日買って来たのは、紺色のパーカーと黄土色の半ズボン、そして半袖のモノクロシャツが2枚。一つは正面にべったりと白い絵の具が塗られているデザインで、もう一枚は背中に白文字で桃山と描かれたものだ。これで、アレンの分の服紹介は終わりだ。数十年の違いは出てしまったが、見事に私の予想ジャンルを裏切らなかったので、とりあえず叔母さんのおさがりをひとつ没収しよう。私は夏に備えて青と白のチェックの襟付き半袖シャツを買って貰い、叔母さんはクサノオウの柄のワンピを入手した。




