表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勿忘草の丘  作者: 中さん
第2章 異世界への一歩
56/176

54話 ダンサー系女子

午後の授業の睡魔に耐え抜いた後、そのまま掃除を終えて下校をしていた私は、一矢の妹について考えていた。

正面から見て左側に涙ボクロがある一矢とは違い、逆の位置に小さなホクロがある、ゆぅちゃんこと榎原柚香ちゃん。

彼女は小さい頃から、ダンサーになることが夢らしい。実際に、結構昔からダンス教室に通っているそうで、実力は中々のものなのだそう。

顔もお母様似で、可愛いからストレスが溜まった時には癒してもらっている。実は、お兄さんの顔にもよく似ているそうだ。私の場合は、この兄妹が仲良く並んで立っている所を見た事がないので、詳しい違いは分からない。

しいて言えばもう一つ。一矢を正面から見た時の口の右側に、小さなホクロがあるのだが、これがゆぅちゃんにはないのだ。

ちなみに、お母様にもゆぅちゃんとお揃いのホクロがあるらしく、何もないのはお父様だけなのだとか。

子の遺伝子に嫌われた親父さん、お疲れ様です。

それで、ゆぅちゃんの好きな色はピンクでとても女の子らしいのだが、髪の縛り方は下の方に二つ。ついでに前髪ぱっつんなので、学校の校則なんて余裕でクリア出来そうな髪型なのである。

これは本人のお気に入りの髪型で、お母さんが強制的にやらせている訳でもない。そんなゆぅちゃんの髪色は、やはりお母様譲りで、漆のような艶のある黒髪黒眼なのだ。

私は小学校の運動会やお楽しみ会で、偶然ゆぅちゃんと同じ班だったから、今でも何かと仲が良い。昔私が通っていた習字の塾も、いつの間にか彼女がいた。

しかし彼女のお兄さんは、ながーいことそれを知らないままだったそうだ。



「ゆぅちゃんは可愛い」

「なっ、あのセーブデータを消した忌まわしき柚香がぁ!? 」

「まだ根に持ってたの?」

「ああああああ」



記憶の隅に追いやっていた彼の記憶を、意地の悪い私がぐりっとえぐり出す。

本当に良いデータだったのか、思い出すだけで悲しいようだ。立て続けに悪いことが起き、一矢の心は悲しみと退屈の森に迷い込んでいた。

彼の気持ちは痛いほどわかる…… 確かにあの喪失感は辛いだろう。

もし、私が彼にやってあげられる事があるのなら、日曜日の事をアレンに頼んで一矢も一緒に連れて行けないか。データが消えたことによる退屈を、なんとか紛らわす事ができないものか。

それにしても、どうしてアレンは、私が魔法使いだと言おうとする行為を止めないのだろうか。

私にはわからなかった。自分から言い出そうと思ったことはないが、聞くことを忘れていたし、聞きたくもなかった。

私は、一矢に教えてあげたい。私が魔女だということを。




「あの白い奴に、もう一回会いたいんだよな」

「……聞いてみる」

「やっぱり本当にいるんだな。どんな奴なのかな、あいつ」




さっきから一矢は、幽霊のような世羅に会うことを諦めたくないという表情で、同じ様な言葉をずっとつぶやいている。

帰ったら、アレンに聞いてみようか。そんな考えを頭の中で巡らせながら、八百屋の交差点の信号を長いこと待った。そうだ、明日の午前中は夏用の服を買いに行くんだった。午後はまた、澪と遊べる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

匿名での感想・評価

感想はこちら

※感想掲示板 雫封筒(外部)へ移動します

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ