51話 幽霊橋の少年
大抵の場合、夢の続きを見るのは極めて難しい。
だから、一矢が頑張っていつも通りの時間に来ても非常に気分が悪い。よりによってあんな場面で途切れるなんて、タチの悪い夢だ。
アレンに聞いたって、個人の夢のことじゃ絶対に分からないだろうし…… 私が魔法を使ったとしても、その夢の続きを確認することは、どうあがいても不可能なのだ。
結局は、自分の無意識の中にある力次第。つまり、夢を見続けて発見するしかないということだ。かといって、浅い眠りを繰り返すのは体に良くないだろう。
どうしようもない悔しさに、思わず眉間のシワがググッと寄った。
割とマジな方で、ひじょーに気分が悪い。
しかも、私達が今立っている場所は、あの幽霊橋と言われる場所の手前。
橋の中には、小さな子供の人柱が使われたという噂を聞いた事がある。それ故か、ここから落ちて亡くなる子供も数年に一度はいるのだ。しかも、この橋の本当の名前は霰粒橋と言って、いかにもこの町にぴったりなのである。危険な橋なのに名前がこの町にぴったりって、なんだか気味が悪い。
そして、私は魔女。あの日、一矢に水玉オレンジの人が見えたのは分からないけれど、この橋の幽霊が見えるのは、魔女や僧ぐらいだろう。いや、もしかしたらあの人柱はただの噂であって、意外と大したことないかもしれない。
……しかし、実際に幽霊が目の前にいるのである。頬を摘むと痛いので、これは夢ではない。どうやらあの幽霊らしき人は、一矢にも見えているようだ。
「俺さ、あそこに何か見えるんだけど、まさか、まさかなぁ……」
「夢で見た。紗羅によく似た顔の人、本当にいたんだ」
「おいおい、マジかよ。お前の正夢ってこんな事もあるのか?」
幽霊橋の隅に、夢で見た白髪の少年が立っている。彼はすぐにこっちに気づき、赤黒のハイネックスニーカーを履いた足で、ゆっくりとこちらに身体を向けた。
紅く鋭いつり目に睨まれ、一瞬後ずさりをしそうになったが、私達は逃げなかった。
彼自体は一つ下か、同い年くらいの少年に見えるし、私自身は夢の中でどんな性格なのかは把握していたから。勿論恐怖はあったかもしれないけれど、それは私の人見知りだと、決めつけておけばいいと思ったのだ。
それに、一矢にも見えているなら幽霊ではないはずだし。紗羅の仲間なら、攻撃してこないと信じていたから。
後ろからついてきているアレンからも、危険信号は聞こえてこない。むしろ、このままでいても大丈夫と言うように、左手でOKマークを送っている。陽気なその姿に若干呆れ、もう一度少年の方に目を移した。
恐らく彼は仲間だ、相手はアレンに任せてしまおうと、私はそっと霰粒橋に足を踏み入れる。
そう、その少年が右手でパチンと指を弾き、一瞬でこの空間をモノクロに変えるまでは。




