50話 あっちの世界の少年少女
授業の大半をサボった木曜日の夜、私はまた夢を見た。
アレンの故郷であろう街の景色が、綿飴の様な霧の間から少しずつ見えてくる。前に見た夢は黄昏時だったが、今の夢の時刻は恐らく昼頃だ。今日の私が知っている夢の情報は、その家に5人の人間が住んでいること。住人は全員未成年だが、この世界ではこんな事があっても珍しくないらしい。
その中には保健室で知り合った元白猫の紗羅や、喫茶店で出会った亜瑠斗さんもいた。
「……そういえば、アレンの一番弟子は見つかったの?」
「安心してよゆり姉、今日保健室で会ったから。ちょっと調子悪そうだったけどね」
「ふーん、アレンも頑張ったよな。元々危なっかしい奴だから心配してたんだけど…… それにしてもあいつ、記憶が若干欠落してなかったか?」
「あぁ、私が会いに行った時には戻ってたから、大丈夫よ」
アレンのことについて話していたのは、白髪の双子と銀髪の女性。紗羅の隣に座る白髪の少年は、茶トラの猫を膝に座らせて彼女の話に耳を傾けていた。銀縁眼鏡をかけた銀髪の女性の名前は分からないが、紗羅からはゆり姉とよばれている様子。
そして、残りの二人は読書中の長身の男女。片方は亜瑠斗さんだ。横長に並ぶ深い緑色のソファーに、背中合わせで座っている長身の男性は、その人の彼氏か何かだろうか。
……私が気になっていたのは、中性的すぎる亜瑠斗さんの性別。ずっと分からずじまいだったのだが、亜瑠斗さんがうーんと伸びをした際に見えた光景が、私の観察眼を煌めかせた。その時の、胸部のほんの僅かな膨らみを見る限り、亜瑠斗さんは女性である。そう、亜瑠斗さんはあの男勝りな性格であっても、中身はれっきとした女性だったのだー!
こうして私が目線を三人の方に戻した直後、銀髪の女性が暗い表情をより一層曇らせながら、とても重たそうな口を開いて何かを呟いていた。
「……私、ずっと気になってる事があるの」
「おい百合亜、あのことはもう気にするな。きっと何かの間違いさ」
百合亜という女性がある疑問を口にした途端、白髪の少年も険しい表情を見せる。一方、紗羅は姉の想定外の発言に驚きを隠せていない様子だ。
目を伏せる彼女の一言で、周りの空気がしーんと静まり、私の関心はその一言に引き寄せられる。
あの事って、一体何だろう。
……と、気になったところで目が覚めた。




