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勿忘草の丘  作者: 中さん
第2章 異世界への一歩
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49話 秘密の共有は二人だけで

結局午前中の授業には全く参加できず、3人で途方に暮れていた4時間目終了後。保健室の先生から給食を渡していただいた後、何故か一矢が保健室に来た。



「雪菜、今日はお前と食うからな」

「何故に?」

「早退して病院行くんだ、後で母ちゃんが迎えに来てくれる」



そう言って保健室の扉を閉める一矢は、その不安定な右手に給食を乗せ、白くて大きい保健室の机に近づく。

震える腕を見る限り、今にもバーっと崩れそうだ。そんな危なっかしい一矢の手に乗せらているのは、本日の献立のかきたま汁。名前の通り、卵をかき混ぜたやつ。小さい頃は、先に扇形の白かまぼこだけを食べていたっけな。そういえば、そんな時にも一矢と一緒に、早食いの対決をした覚えがある。

私が、「今日もかきたま汁か、嫌いじゃないけど」って呟くと、彼は「意外と美味しいんだぞ。卵とか卵とか、卵とか。あとかまぼこも」っていう。それで、「溢さなければの話ね」って、私は一矢に言い返す。どうでも良さそうな献立のことを忘れ、声のトーンに違和感を憶えた私は、サッと一矢の顔を見上げた。いつもの雰囲気は明るいのだが、今日ばかりは冷めている。



「さっきはどうしたんだよ、急にうずくまってさ」

「ただ、気分が悪くなっただけ」

「……なんかあったら言えよな、ホントに」

「何を?」

「隠し事してるだろ、俺も教えるから雪菜も教えろよ」



宝石の様に真っ直ぐな、瑪瑙(メノウ)の瞳に捕まえられて、逃れられない。あぁ、私もここで終わりなのか。だって、紗羅達は保健室の隅で、呑気に私の様子を伺ってるだけなんだから。

つまり、私は彼にどんな事を話しても大丈夫。アレンの方からは話すのを止められていないから、特にばれてはいけないものでもないのだろう。でも、アレを人に言うのは抵抗がある。


私が抱えている大きな秘密、私が魔女だってこと。


アレン、今は冷静に物事を判断する時だ。オドオドしていないで、早くテレパシーで伝えておくれよ。

それ以前に、一矢の隠し事って何。一矢が調子に乗ったせいで勝手に話は進むし…… ちょっとその視線を向き直して、私の声を聴いてはくれないか。



「じゃんけんで言う順番決めようぜ、負けたほうが先な!」

「いや待て待て、勝手に話を進めないで。私は秘密を教えるなんて、一言も言ってないからね」

「ふっふっふ、やっぱりお前にも秘密があったか」

「あ」



"教えるなんて言ってない=隠している秘密がある" ということで、これはまずい。

こんな事、以前にもあったような気がするのだが、今回は私の方が一方的に不利ではないか。

本当に、あいつはこういう時だけとんでもなく頭の回転が速い。このずる賢さを勉強に使うことが出来ればいいのだが、やはりここは普通の人間、そういう訳にはいかないのだろう。

な、なんて奴だぁ……

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