46話 あらすじなんて存在しない
「なぁ、あんたがアレンの一番弟子ってヤツか?」
魔法使いになって数日経ち、見習い魔導師アレンとの生活にも慣れた主人公、繋木雪菜。彼女はアレンの記憶を取り戻す為に、自分が魔法使いになった理由や役目を探し、ついでに最強の魔法使いになろうと日々努力していた。
そんなある日、一矢が交差点に来なかった理由が原因で、雪菜の心は大きく揺らいでしまう。暗い孤独の海に沈みかけた彼女を繋ぎ止めるように、突然彼女の前に現れた少年少女。
_____彼らがとったその"方法"とは何なのか。
〜幻の想いが創り出す、悠遠の物語〜
1時間目終了後、怪我をした一矢が教室に来た。
彼は今、左腕がうまく動かせない状態である。むすっとした表情で、その重たそうなカバンを引きずりながら歩いてくる様子は、なんだかとても哀れというか……
木の枝のように細い左腕は、絹のような柔らかい包帯に包まれ、彼の身体が動くたび僅かに揺れた。この状態から察するに、彼のその怪我は、恐らく骨折の類だろう。
一矢はこれからしばらくの間、右手だけで生活しなければならないのか。ご愁傷様としか言いようがないな……
「……何故だ」
幼稚園児や保育児、小学校低学年などの小さな子供は、頭が重たく転びやすい。運動会の練習などで保健室に来る怪我人の比率も、全体的に見れば低学年の方が多い。しかし、いくらチビとはいえ一矢は中学1年生だ。普通の道で普通に転んだだけで、あんな事にはならないと思うのだが……
「本当にさ、なんで骨折したの」
「折れてねーよ、ヒビが入っただけだよ」
「でも骨折してる」
「そうだよ骨折だよ! それが何だってんだよ畜生めぇ」
ヒビが入っただけなら、骨折とは言えないはずだが…… そんな疑問を抱きつつ、私は彼の腕を眺めていた。
この喧嘩じみた会話だが、私達はこれでも普通に会話しているつもりである。私と一矢にとっては、本当にいつもの事なのだ。
周りがどんな風に思ってるかなんて、そもそも気にしたことがない。完全にクラスで公認されている存在だから、私達はいつものように会話する。
それで、骨折をやらかした訳はさっき彼が言った通り、本当に転んだだけで骨折したらしいのだ。
訳が分からないというか、情けないというか…… アホかお前。
「それにしても、その怪我って仮入部までに治るんですか?」
「確か、骨折ってひび割れでも治るのに1ヶ月以上掛かるよね。大丈夫?」
「おう勇助、心配すんな。このくらいなら二週間で」
「あんたの気分はそうでも、体はいうこときかないから」
「要は無理ってことですよ~、諦めてゆっくり治しましょうか~」
「ああああああ」
そう、常識的に考えれば不可能だ。部活の仮入部が始まる前に、その腕を治すなんて。
たとえ陸上部を第二希望にしても、絶対に間に合わない。
私にしか見えない透明アレンが、勇助の後ろから何か言いたげに見つめてくるけど、私は動じるわけにはいかないのだ。アレンがいたから思い出したけど、今ここで回復魔法なんて使わないから。まさか、こんな所で使える訳がないだろう。そんなことをしたら、私は………
______私は?




