43話 帰り道も幽霊
「寺にいた水玉オレンジの人って、幽霊じゃないのか?」
「幽霊じゃないってば…… 私や叔母さんの知り合い」
今日一日、一矢はその幽霊のことについて考えていた。私は幽霊なんて存在しないと言ったけど、アレンという見習い魔導師がいる時点で、普通に幽霊は存在するのだろうか。魔女になって、変なものが見えるようになったとなると、それは周りの人にも影響が出てしまうのか。今の私の考えが正解だったとするなら、亜瑠斗さんってガチの幽霊!? いやいや、そんなことはないだろうし……
そんな確証も何もない一矢の話を聞き終わり、私はそっぽを向いてため息をついた。
「なぁん」
『……なぁん?』
聞き覚えのない猫の鳴き声が聞こえて、さっと振り返ると、私達の後ろに赤眼の黒猫がちょこんと座っていた。まだ大人の猫ではなさそうだが、子猫のような純粋な眼差しでもない、少し大人びた猫。首にはあの日と同じ、紅い宝石のペンダントがついている。澪の家に置いてあったあの置物や、203号室の白猫とじゃれていた猫とよく似ていた。
私のそばで人の話を盗み聞きする様に立っていたアレンは、置物を見た時と同じ魔力を感じると囁く。やっぱり、あの置物は生きていたんだ。
「セラ~! そんなとこにいたのかよ!」
「あ、あの幽霊…… って、はぁぁぁ!? あんな活発そうな人が幽霊だってのか!?」
「幽霊って言い出したのは一矢でしょ…… それに、あの人は知り合いの亜瑠斗さんだってば」
「にゃ~」
角から出てきたあの水玉オレンジのその人が、黒猫のところまで駆け寄ってきた。左手のバスケットには月下美人の花が入れられており、その人が地を蹴る度に、白い花弁がふわりと浮かぶ。一矢はその人のことをまだ幽霊だと思っていたようで、驚きながら私に聞いてくる。だから、幽霊じゃないって言ってるでしょうが。だって私、この幽霊呼ばわりされている亜瑠斗さんが働く喫茶店で、頑張ってハーブティーを飲んだんだから。あの白い月下美人だって、食用にもなるから調達しているかもしれないし…… そう言って、勘違いをする一矢を小突くと、亜瑠斗さんはセラという黒猫を抱きかかえて私達の方を向く。
「あぁ、驚かせたか? ごめんごめん、見つけてくれてありがとな」
「いえ、その黒猫が偶然後ろにいただけなので……」
「なぁん なぁん」
「うぉ、なんだよセラ。この嬢ちゃん達が気になんのか?」
水玉オレンジの人の右腕の中で、突然黒猫が鳴きだした。私の方を見つめ、必死に何かを伝える様に。私達に向けられていたはずの紅い眼差しは、亜瑠斗さんに抱きかかえられた後から、ずっと学校のカバンの中に向けられている。アレンは黒猫のについて、とある疑問を持っている様だった。




