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勿忘草の丘  作者: 中さん
第1章 魔女の目覚め
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33話 湿ったお風呂場

その日の夜、風呂場の温かい湯につかっていた私はふと考えた。

そういえばアレンって、あの黒い襟付きシャツしか持っていなかったよね? だとしたら、今度買いに行かなくちゃ。今身につけている服は叔母さんのおさがりがほとんどだから、そろそろ調達しないと叔母さんの気がすまないだろう。「二人共、欲しい物はない?」と、ついさっき彼女に聞かれたばかりである。

幸い、叔母さんの部屋着センスが中性的なものだったから助かった。私の場合はたとえ外であろうが何だろうが、とにかく着られればいいもの。叔母さんが仕事や授業参観の際に着てくる、女性っぽい可愛い物とかは、私の場合ほとんど持っていない。しかし、たまーに西洋の青いドレスとかを見たりすると、少しだけ興味が湧いてしまうのは事実。とは言っても着付けが面倒というのが本心で、ついでに付け加えると私は自力で髪飾りをつけたり、髪をしばることができないという女子力の低さ。ただつけるだけなら簡単だが、自分の満足のいく位置で綺麗につけられないのだ。髪をしばるのも同じで、叔母さんや友人の髪をしばるだけでも中々綺麗にまとまらない。ハチマキをしめるのは得意なのだが、それとはまた違うのだろうか。



「そういうのも魔法でなんとかならないのかな……」



……ちなみに、私と叔母さんの決定的な違いは、男に間違えられそうなベリーショートかセミロングをサイドでまとめているかだ。女子力の差というのは、こうもハッキリと出てしまうものなのか。

しかーし、一瞬危機感を覚えた私だが、こんな所で引き下がるほどやわじゃない。若さと女子力(物理)、それと魔法が扱える点では叔母さんに勝っているのだ。正直、こんな事で勝った気になるのは虚しいだけだが。

さて、その程度のことで落ち込むことはやめにして、そろそろ風呂から出よう。

寝間着は半袖短パンのだぼだぼなパジャマを着ているので、どうしてもひらけた襟の隙間から、柄も何もない白シャツがちらりと見えてしまう。なんたって暑いんだから、灰色ストライプのパジャマの下は昭和の少年だと思えば、これぐらいはどうってことない。むしろパッツパツのタンクトップを着た少年の方が…… うーむ。

濡れた髪を水色のバスタオルで軽く拭いてから、それを首に巻いて居間に戻る。叔母さんは、趣味のプラ板作りで板の表面に色塗りをしていた。アレンは座布団の上で丸くなり、紺色のクッションを抱きながらうとうとしている。アレンが起きるまで、もう少しだけこの部屋でだらけていようかな。もう家族の一員だし、ゆっくりしていても別にいいよね。

そんなことを考えながら、私はソファーの上に転がった。右手の人差し指を立て、何かを頭の中でイメージする。出てこいと心の中でつぶやいた瞬間、指の先から碧い光が溢れ出す。

どうしてこんなにも美しく、儚いのだろう。何故彼は、私にこの力を与えたのだろう。私なんかより頭が良くて、強い人は世の中に沢山いるのに。別に私じゃなくても良かったはずなのに。

アレンは何の目的のために、ずっとここにいるんだろう。何故私を魔女にしたんだろう。彼はお嬢様の頼まれ事で、記憶喪失気味になりながらもここに来た。私を一人前の魔女にした後、彼らは何をするんだろう。

………まだ思い出せないのかアイツは。



「雪菜ちゃん、今度のプラ板はどんな絵がいいと思う?」

「叔母さんが好きなのは花の絵だよね、今度もそれでいいと思う」

「ふむふむ、花と言っても結構種類があるよねー。どうしよ?」

「どうしよって言われても…… じゃあ、叔母さんは先週の始めに菖蒲を作ったみたいだから、今度はカリフォルニアポピーでどうかな」

「おぉ、了解なり!」



おふざけ気味の叔母さんに少々呆れつつも、横目でもう一度アレンを確認する私。規則正しい寝息を立てる少年は、時折険しい顔をしてうなされている様だった。

まだ、聞くべきじゃないのか。

小さな座布団で熟睡する少年は、その澄んだ紺色の瞳を閉じたまま、ずっと答えてくれない。

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