29話 懲りない少年
登校中、また一矢とぶつかりそうになった。
今日は少年は、学校の門が開く光景を見てみたかったんだとか。
「懲りない奴、その気持ちも分からなくはないけどさ…… いい加減やめたらどう?」
「えー。別にいいだろ、怒られないんだから」
「今度ぶつかったら私が怒る」
「おぉ、怖い怖い」
一矢はふざけた言葉遣いで、冷ややかな目を向ける私の方を見た。歯を見せて笑う姿を見る限り、反省は全くと言っていいほどしていない。これはおふざけの時の表情だが、実は授業中になると急に真面目になるのだ。あんたの性格の温度差を見た人々の心情を考えてみたまえ、この猫被りめ。
アレンは学校の鞄に入ることが出来たので、今は私が背負っている鞄の中だ。何故かは知らないけれど、興味深げに一矢の方を見つめている。一矢の顔に、ホクロ以外の何かがついていると言うのだろうか。それとも、彼にもあっちの世界と関係のする事柄があるのだろうか。……でも、土曜日に顔を見たはずだよね。異変に気づいたなら、彼はすぐ私に相談していたはずだ。
もう一度、一矢の顔を見る。
「なんだよ雪菜、顔になんかついてるか?」
「ううん、なんでもない。早く行こう」
今思えば、何で私は友達を作らなかったんだろうと思う。確かに澪達といるのはすごく楽しいけれど、彼女は「もっと友達がいないと後々困るぞー!」と言っていた。
いつかどこかで、"友達作り"という言葉を聞いたことがある。私はその言葉に違和感を覚え、むず痒い感覚に眉をひそめた。何かが違う気がする、友達は作るものじゃない、勝手に出来るものなんだ。澪もルシアも一矢も勇助もアレンも、偶然があったからこそ今友達になれている。
やっぱり、友達を"作る"っていう言葉はあまり好きじゃないかな。
「やっぱし一番乗りぃ~!」
「皆勤賞、目指したらどう? 文化部に入れば、今の状態なら楽勝だけど」
「やってやろうじゃねぇか…… って、俺は陸上部に行くから無理だし!」
「誘導に失敗したか……」
あぁ、友人と一緒にいるだけでこんなに楽しいなんて、それなら小学校の時にもクラスメイトと仲良くしておけばよかった。6年生の時に聞いた澪お姉ちゃまのちょっとした警告が、ふっと頭の奥で流れ出しそうになったが、廊下から聞こえる足音によって遮られる。
多分この後、金曜日の時と同じような順番で、うちの3班が揃うだろう。
「Buongiorno! 雪菜、一矢!」
『うわぁ!』
「今日も良い天気ですね~」
うーむ、やっぱりこうくると思った。




