24話 原寸大に戻れない
夕食後、私達は未だに人形が溢れ返る自室へ戻った。アレンはようやく小鳥から小人に戻り、銀の箱の端に腰掛ける。私は部屋の電気をつけ、2段ベッドの布団に座り込んだ。
私にはアレンについて気になっている事があった。澪の玄関にあった黒猫の置物を警戒していた事と、普通の人間の大きさに戻れない事だ。アレンの練習不足で人間サイズになれないならまだ分かるが、置物については人の家の置物を警戒するなんて…… 何か訳がなければだいぶ失礼だ。
私の家にも人形や置物はあったが、アレンはそれを見ても何の反応も示さない。となればあの黒猫の置物に、何かあるのだろうか。
まぁその前に、早く人間サイズに戻ってもらうのが先だが。
「ねぇアレン、まだ人間サイズにはなれないの?」
「うーん、今はまだ小動物にしかなれないんだ。小人になった理由も分からなくて……」
「じゃあ、黒田家の黒猫の置物を警戒してたのは?」
「それはね、ちょっと魔力を感じたから生きているんじゃないかと思って」
「……あの置物は今日初めて見たから、生きてるかもね」
「え」
私がちょっとした冗談を言ったら、怖がりのアレンが岩盤みたいに硬化して動かなくなった。アレンの言うとおり、置物は生きているのか…… それとも、ただの勘違いか。
今度、学校で澪に聞いてみよう。場合によってはアレンと一緒に調べる必要があるし、もしも澪達が置物の被害にあったら、それで親友を失ってしまったら、より多くの人が殺されてしまったら…… 私の大切なものを失う恐怖は計り知れなかった。
失うのは怖い。
アレンの魔法は化ける物しか見ていないが、この先攻撃系の魔法を練習する事もあるはずだ。その魔法を実際に使う時、どれだけの人が傷つくだろう。返り血を浴びた小さな魔女は、どんな表情で彼らを見下ろすだろう。
いや、私の身長って平均のど真ん中だよね。見下ろすならもっと高いところに………あ、返り血を浴びるってことは人が死んでるから、死体の山に立ってるってことか。
「では、明日から本格的な魔法の訓練を始める! と言っても、体力さえあれば簡単だから楽勝だよ~!」
銀色の箱に腰掛けた何も知らない小人が、無邪気な顔で微笑んだ。
私は周りの人間と比べればそんなに体力がないけど、魔法で使う体力というのは本当に微量。だから、今後も息切れをするなんてことは、とんでもなく強い魔法を使わない限りありえないだろう。でも、もしもの事を考えて、これからしっかりと運動をしていかねば。魔法が不発になるなんて事があったら、本当に危ないかもしれないし。




