23話 たこ焼きの残骸
「じゃあねー!」
「バイバーイ! また来てよー!」
こうして楽しい休日は終わり、くしゃみが止まった澪に別れを告げて、静かな住宅街を去った。今にも燃え尽きそうな夕日に照らされた道路を、特にこれといって飾り気の無い自転車で走り抜ければ、夕暮れの寒さ対策の為に羽織っていた黒いパーカーはバサバサとなびく。風に揺れる髪の毛など、とうの昔に切ってしまった。
桜が散り去った春はまだ、夏に比べると日が出ている時間が短い。よい子は帰る午後5時の数分前、空はオレンジ色に染まっていて、東の雲は太陽の光の反射か何かで赤っぽい紫色になっていた。
自転車の前籠に積まれたベージュのショルダーバッグに入り込んでいるアレンは、鞄の中から頭を出して外を眺めている。水色の小鳥が西のオレンジ色の日の光に当たっても、紫色になることはなかった様子。
「ただいま~」
「おかえり、雪菜ちゃん。今日は雪菜ちゃんが食べたいって言ってた"アレ"だよ」
「"アレ"って…… もしかして、たこ焼きのこと?」
「それそれ、たこ焼きちゃん」
そういえば、この間たこ焼きを食べたいと呟いた気がする。こんな小さな呟きでも、叔母さんは気づいてくれたんだなと思うと、自分の存在がちゃんとあると感じて少し嬉しくなった。スーパー世間知らず魔導師のアレンはたこ焼きのことすら知らないようで、たこ焼きの具が入れられたり、ひっくり返ったりする度にワクテカしていた。そういえばこのたこ焼き、アレンから見たらバランスボールくらいありそうだけど。
………絶対残すよね。
「なんで僕のだけ丸くないんですかー!」
「ごめんごめん、アレンくんのサイズで作るのは難しくてね」
「あう~」
やっぱり、アレンには大きすぎた。アレン用の青い小皿には、分解されて残りカスの様になった小さいたこ焼き(丸くない)が置かれていて、しかも肝心のたこがいない。小鳥のままのアレンは、文句を言いながらも頑張ってたこ焼きを食べていた。私のクラスメイトでとても小さい鶴を折れる人がいるが、さすがに直径1cm以下のたこ焼きを作るのは難しいだろうか……?
そんな中、せっせと生地しか残っていないたこ焼きの、モチモチの残骸をついばむアレン。
それにしても、アレンはいつになったら本来の姿に戻るのか。本当は普通の人間サイズと言っていたので、早いところ私達と同じくらいの、人間と言える大きさに戻ってもらいたい所だけれど。私達の今の課題は、アレンの記憶を取り戻すことと、彼を元の大きさに戻すことか。
んぬぅ………
「あー、それじゃあ食費がもったいないか。」
「食費……!?」




