17話 ファンタジック叔母さん
叔母さんがアレンを小人と言い当てた事が引っかかっていた。でも、焦る私はかまわずに説明を続ける。
私の手の平の上に乗ったアレンは、さっきから指先ひとつ動かさずに下を見つめていた。
アレンとは違って話の事柄を大雑把に話してしまう私は、説明を終わらせた後に叔母さんが意味を理解してくれるか心配だった。それでも、私は必死に彼女に伝えようとした。叔母さんは「うーん?」とか「はぁい」とか、色々な声を出しつつも相槌をうつ。途中で脳内を整理する為に話を中断することもあったが、私の想像以上に話はスムーズに進んでいた。
……そして今、私の大雑把な説明が終わる。
アレンの小さな冷や汗が、滴になってポタリと落ちた。
叔母さんの返事を聴く為に、私はゆっくりと顔を上げる。私の目の前で相槌を打っている彼女の表情は、いつもと変わらない優しい笑顔だった。
予想外の反応のせいで、開いた口が塞がらない私。その様子を見て首を傾げる叔母さんは、今の話を私の新作の物語だと思っているのか、それともアレンを既に知っていたのか。
「なんだかすごいね〜。後で詳しく聞かせてよ、魔法の事とか、この子の事とか。それにしても、雪菜ちゃんが魔法使いか〜。上達したら私にも見せてね」
「あ、うん。それにしても、叔母さんってこういう話を理解するのが早いよね」
「ふふ、小さい頃からこういう不思議な事が大好きだったんだー。私自身が魔法を使う訳じゃないけど、なんか面白いし!」
「うんうん、確かにそうですね。叔母様の言う通りです」
そういえば、叔母さんは昔からファンタジー系の小説が好きだったな。私も普通の人間が出来ないような事が出来るのは羨ましかったから、今となっては黒歴史だけれど、小さい頃はよく2人でごっこ遊びもしたし。
とりあえず、アレンがここに居座る事を許可してもらえただけ良かった。
安心してアレンの方を見ると、彼は叔母さんの意見に同感していた。折り紙の話を延々と続ける2人を見る限り、叔母さんに対する警戒心は解けたみたい。
……いや、たとえそうだとしても、流石に冷静すぎないか。
私だってアレンを見たときは、声には出さなかったもののかなり動揺したし。
すでに母さんから連絡を受けていて、今更知っていると言うわけにもいかずに、慣れない演技をしたのだろうか。
あの叔母さんなら割とありがちなケースだが、そうだったとしても、初めて見る小人に対してあのうっすい驚きの表情はないだろう。仕事へ行く前に、爆睡中のアレンを既に見ていたとでも言うのだろうか。
しかし、そうだとするなら尚更、2階で熟睡中の私を起こして確認しに行ったはずだ。
まさか、あの箱を郵便箱に入れたのって叔母さん? いやでも、叔母さんがそんな回りくどい事をするなんて到底考えられないし、その時点で何者なの叔母さん。
勿論、魔法使いの件に関わっている母さんもヤバイけど、叔母さんも相当怪しい。
もしかして、他に何か知っているのか……?
「よーし雪菜ちゃん、もうご飯の準備はできてるから、早めに食べちゃおうか。 今日は金目鯛の煮付けだよーん」
「おぉぉ、叔母さん凄い……!」
「小人くんのは取り皿に分けてあげるね」
「いいんですか!? ありがとうございます!」
私の魔法使いデビューを祝うかのように、市場に並んでくれていたらしい金目鯛。普段はなかなか食べられないその鯛を、私達は美味しくいただいた。
叔母さんへのちょっとした疑問は、味噌汁をすすった時に何処かへ行ってしまったようだ。




