15話 叔母さん帰宅
「ただいま~」
下の方から聞き慣れた声がした。叔母さんが帰って来たんだ。身体がビクリと反応して、咄嗟にドアの方をを振り向く。
焦った私はひとりで部屋を出ようとしたが、行かないでくれとアレンに引き止められてしまう。
アレンは寂しがりやなのだろうかと思いつつ、彼が入っていた軽い銀の箱を置いて、一緒に下に行こうとした。
つい最近取り替えた、新しいドアノブに手をかける。すると、一瞬視界がぐらりと揺れ、私の脳内から強い危険信号が発令された。
「大丈夫?」
「う、うん。大丈夫……」
私が気がかりだったのは、アレンの事だ。
普通の人間がこんな小人を見て驚かないわけがない。こんな奴を見たら、叔母さんはどんな反応をするだろうか。あの人は雰囲気がふわふわしていてとても優しい性格だから、私が魔法使いになることや、正体不明の小人をここに住まわせることを許してくれるだろうか。
記憶喪失気味のアレンの情報によると、既に母さんからの許可は下りている。でも、叔母さんはまだその事を知らない。もし彼女に駄目と言われたら、叱られたらと思うとゾッとした。
「人間に姿を変えるのも今の時間帯だと不自然だし、現在のアレンには不可能。叔母さんに正直に言えるかが問題だ………」
「おーい、雪菜? 多分大丈夫だよ。時間もないから勢いで行こうよ!」
「アレンが言ってくれればいい話なんだけど、どう?」
「あー、遠慮しときますネ。僕なんかが行ったら絶対に、叔母様に気づかれる前に踏み潰されるかもしれないしさ。それに、雪菜が連れて行ってくれないと、僕があそこに移動するまでに何時間かかるか……」
「仕方ないなぁ」
「まぁいつか必ずやる事だったんだし、早めに終わらせちゃおう!」と、アレンは言う。じゃあやっぱりお前が言えよと思いながら、私は覚悟を決めてもう一度ドアノブに手をかけた。
少し急な階段を、私の肩に乗ったアレンが落ちないようにゆっくりと確実に降りていく。黒いパーカーのフードをつかんだ彼は、私の肩の上から見える景色を眺めて、小さく歓声の声を上げている。
居間のドアについた。私がいる居間の隣にある台所、そこに叔母さんがいる。台所にもドアはあったが、わざわざ遠回りしてきた。包丁を使っている時に小人を見られたら、叔母さんが驚いて包丁を床に落とすかもしれないから。
叔母さんには怪我をしてほしくない、ずっと健康でいてほしい。
だからわざわざこっちまで来て、何も危険なものを持っていない状態で叔母さんに来てもらうのだ。
というわけで、居間から呼び出せば安心安全。悪くても腰を抜かす程度かな。




