14話 金がない訳じゃない
アレンが住む世界は元々魔法使いが減少していた。
だから金がない訳じゃない。
私の世界には魔法使いがいない。
今のアレンは元の世界に戻れない。
だから作らなければいけない。
山積みになった情報に、私は思わずため息を吐く。母親は何を思って、娘に魔法使いになってくれと言ったのだろうか。
長年顔を合わせていないと、その思考すら考えるのが難しくなる。
母よりも叔母の思考回路の方が予測しやすいなんて、おかしな話だ。でも、母は遠いどこかの国で懸命に働いているのだから、私も皮肉なんて呟いている場合じゃない。まずは、この小人をなんとかしなければ。
「あんた、これからずーっとこの家に住むつもり? 話し相手は私だけでいいとか、考えてない?」
「えへへ、実は考えちゃってました。まぁ、よくよく考えると恐ろしいことだよね、話をできるのが君だけなんて。僕もお友達欲しいナー」
「はぁぁぁ。まず、あんたは小さいから人間として認識してもらえない。そもそも、この世界の常識だって知らないわけでしょ……? 」
「え~、じゃあ雪菜がこの世界の事を教えてよ!」
「……わかった」
アレンはワクテカしている、雪菜はどうする?
私はこの世界をアレンに教えるために、群青色の魔力の塊に触れながら考えた。それにしても彼は、本当にこの世界のことを知らないのだな。とりあえず、彼にあっちの世界の記憶を取り戻してもらい、こっちの世界のことも学んでいただかねば。そんな考えが浮かんできたため、渋々アレンの頼みを承諾することになった。
ちなみにこの塊は、私の魔力を凝縮して保存したものらしい。触れるたび、だんだん溶けていく。快晴の青空をそのまま閉じ込めた入れ物のような正八面体なのに、口の中に入れた飴みたいにどんどん溶ける。もし飴だったとしたら何味だろう、ソーダかな。
さて、アレンに外の世界を教える事ができる方法を考えようではないか。
わざわざ放課後に町を歩くのは時間の無駄だ。けれど、この姿のこいつを学校に連れて行くのは危険だし……
せめてアレンに透明になったり化けたりする力があれば……
「雪菜の学校に行けば、いろんな知識が入ってくると思うんだな~」
「……透明になったり化けたりする力があるなら、連れて行ってあげてもいいけど」
「あ、そのくらいの事は出来るので安心してくださいな」
「うん、それなら大丈夫。さっさと作ろう」
その後は頑張って、全ての道具を完成させた。
私の好きな色(寒色系)のリボンと黒いカバーで箒を包んだりしたが、杖に関してはただの黒い棒なので、あとでデコレーションする必要がある。いや、リコーダーの様に彫刻刀で名前を彫るだけでいいか。
鞄は肩にかけるタイプ。確かショルダーバックだった気がする。外側にもポケットが二つある焦げ茶の鞄である。あの学校の鞄を、ライフルケースのように扱う時の持ち方もできるようだ。あとでキーホルダーをつけよう。
「女の子ってやっぱり、ケースや鞄にデコるのが好きなの?」
「大体の女子は、何かしらワンポイントでつけてると思う。どこかで落としてもすぐに分かるし、うちの学校はちょっとだけなら大丈夫だから…… まぁ普通、つけるキーホルダーは1個ぐらいかな」
「ふむふむ」
うなずくアレンの側で、私は自分の鞄の方に目をやった。私の鞄につけられている"キーホルダーと言えそうなもの"といえば、自家近くにある喫茶店のオーナーの娘さんにいただいた、不思議な形の御守りくらい……
実はこれ、どこかで普通に製造されている訳ではなく、オーナーの友人のお婆さん経由で渡ってきたものらしい。材料はそのお婆さんが調達し、とある若い職人さんに作ってもらった世界に一つしかない品なのだ。
キーホルダー、ではないな……




