11話 小さな頼まれ事
「ねぇ、まだ思い出せないの?」
あれから約13分、小人のアレンはここに来た理由を思い出そうとしている。勉強机の窓から漏れる光に反射した銀箱が、その上に座り込んだアレンをおぼろげに照らすせいで、彼から醸し出されるファンタジーな雰囲気が全く拭いきれていない。その雰囲気自体は特に問題ないのだが、このほのかな暖かさのせいで、今でも夢ではないかと左手の甲をつねってしまうのだ。
小人を見た驚きから何とか落ち着いた私は、2段ベッドでゴロゴロしながら箱の上のアレンに問いかけたが、彼自身は全く反応しない。箱の上で胡座をかいて、石化をしているようだ。
アンタに待たされた30分を返したまえ、人間が生きられる時間は有限なのだぞ。
……まぁその内の17分は、ビビって起こさなかった私が悪いけど。
「雪菜さん、少しだけ思い出すことができました!」
「あ、そう。じゃあ教えて」
「はい!ちょっと長くなるのでよーく聞いてくださいね」
それから、アレンの地味に長い話を聞いた。
アレンは、お嬢様やそこに住む魔法使いの人達が治める、小さな街の見習い魔導師。アレンの世界は魔法を扱える人が減少しているので、時には他国に頼られる事もあった。ある日、その街で父の行政の手伝いをするお嬢様から伝書鳩が届き、屋敷に来てほしいと伝えられた彼。丁度、街の大魔法使いや彼の師匠の住む家で、魔法と武術の稽古をしていた最中だったらしい。
そして屋敷に行った時、彼女に"何か"を頼まれて私が生きている世界に来たそうだ。今は何を頼まれたのかという"本題"はまだ思い出せないが、何か私とやる事があるようで…… 思い出せないって言うもんだから、どうしようもないんだけれど。
「それで、やる事って何?」
「はい、まず雪菜さんの許可が貰えればいいんですが……」
「ここに住みたいんでしょ? いいと思うよ、あんた小さいし」
「本当ですか!? ありがとうございます! で、お願いしたい事はそれだけじゃなくって……」
「もう一つあるのか」
「………雪菜さんに、魔法使いになってほしいんです」




