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勿忘草の丘  作者: 中さん
第3章 僕は君が好き、君はあの子が好き。
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108話 繰り返す警告

百合亜さんに果物を渡した後、私達は買ってきた物の整理をしていた。

私は林檎をバスケットにゴールインし、痛みでイライラしている様子の世羅を避け、澪を探している所。勿論、投げたら林檎が痛むので丁寧に入れておいた。

こうして準備が終わった私達は、それぞれ好きな事をしていた。ちなみに、現在の時刻は2時過ぎ。昼飯は移動中に済ませたのだが、割と歩行速度が速かったので、昼食がおにぎりで本当に良かったと思う。



「あぁ、みんな可愛いわ~。食べちゃいたいくらい」

「あわわわ……」



何故かクラーレさんにくっつかれながら、私は久しぶりに澪と会話をした。

澪の姿に違和感があったのは、多分気のせいだろう。澪は私と似た魔法使いのローブみたいなのを身につけていたし、久しぶりに表情が晴々していたんだから。きっと、気のせいだろう。私の立場なら、彼女と久しぶりに話せたことを喜ぶべきだ。

そうしているうちに、私と澪の中に紗羅が入り、私達の会話内容はコロコロと変わっていった。クラーレさんがいることなど御構い無し、というか彼女自身も話に聴き入ってしまっている。



「さて雪菜殿、雷華さんと百合亜さんの関係についてだが、そちらにも新しい情報はなかったかね?」

「そうだな澪殿、雷華さんから聞き出した情報によりますと、あの二人は古くからの親友だそうで。特に百合亜さんは初めての友達だったらしく、信頼関係は人一倍のものかと」

「なるほど、これは美味しい情報だにょ」

「わー、二人共楽しそう。私も混ぜてちょ」

「紗羅殿も入会なり~、雪菜ももっと喜べー!」

「あんた達、クラーレさんがいること忘れてるでしょ……」

「それは雪菜も同じさっ!」



新しい出会い、美しい自然の景色、現実から解放された足取りの軽やかさ。自由を手に入れた澪の隣に、現実離れのできない私がいても許されると知って、嬉しくて仕方がなかった。


『今の彼女との時間を大切に』


私の心の奥から、私と同じ声質で、謎の警告が響いたような気がした。確かにそうだろう、"奴"の襲来や誘拐の件のように、いつ魔物と殺し合いになるか分からない。いや、魔物と戦うだけではないかもしれない。いつかは人間同士で意見が食い違い、戦うことになるかもしれないのだ。魔物と戦う紗羅とアレンの姿は、まるで生きるか死ぬかのような恐ろしい争い。いつか、澪や私も同じ様な事をするかもしれない。でも、今の幸せな雰囲気に心酔していた私は、その警告を深く考えずに未来へ進んでいった。


『やり直せない』 『犠牲を減らすことも出来ない』 『もう遅い』


そんな警告、何も知らない私の心にはちっとも届かない。

だって、私はまだ何も知らないんだもの。



「そろそろ行くわよ。準備出来た?」

『はーい』



何も知らない私達は、幸せそうな表情で扉をくぐる。

まだ知らなくていい、知らないままがいい。もう少しだけ、喜びに包まれた気持ちでいさせて。目を覚ますことができない私を甘やかす様に、暖かい春の風が身体を包み込んだ。

5月に近づく春風は、もう冷たくなんかない。

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