9話 意外な箱の中身
「……え」
箱の中に、小人がいる。紛れもない、少年の小人が。少年は、箱の中で心地良さそうにぐっすりと寝ている。
………いやいやいや、なにこの状況。しかも何なのこいつ。そもそもなんでこんなところに小人がいるの。
これってもしかして、異世界から来た不思議な箱さんに選ばれたって感じ!? ファンタジーでよくありがちな展開ってやつ!? 私はもしや、神々に選ばれし勇者だったのか!? それとも、その逆の立ち位置の……… まぁ、たとえそうでなくても、私の脳内が末期であるのは事実。せめて夢であってくれっ!
でも、さっきから何回ほっぺをつねっても痛くなくならない。これは現実を受け止めるべきか。というか、心の準備ができたとしても、この小人と言葉が通じるのか分からない。
これはまずい、まずいぞ……
なんとなく、少年の姿を見てみる。
小人といえど、とんがり帽子はかぶっていないようだ。黒い襟付きシャツと焦げ茶色の半ズボン、何故か折り曲げられている白い靴下と、黄色のラインが入った黒い靴を履いていた。そして、ちょっと掴めばすぐにへし折れてしまいそうな、細く白い手足。
片手に収まりそうなサイズ以外は人間とそっくりなので、哺乳類であることは間違いなさそう。それにしても、一見小人らしくないような服装だ。
_____一矢によく似ている。
ただ、この小さな少年はある物を持っていた。少年の右腕には、厚さ5cmの茶色い表紙の本が抱えられていたのだ。厚いと言っても、彼の視点から考えてみただけなのだが。
はじめは一矢本人が小さくなっただけかもしれないと思ったが、よーく見てみると微妙に違う点がある事が分かってくる。小人の髪色は焦げ茶髪の一矢と違って黒髪だし、彼よりも少しだけ前髪が伸びている気もする。そもそも、一矢が襟付きのシャツを着ることは珍しいのだ。大体彼は、今私が着ているようなパーカーを好んで来ている事が多い。
一応私と一矢のパーカーの違うところを言っておくと、まず私が今着ているゆったりしたパーカーは完全に真っ黒。対照的に、一矢のパーカーはフードや裾の部分だけが黄色で、袖が折られているものなのだ。
それにしても、全然起きない。本当に生きてるのかと思って恐る恐るつついてみたら、確かに不機嫌な顔をして私の手を払う。
なんだったら、永眠して人形になっていただいた方が助かるのだが。
生きていたとしたら、少年はこの箱の中で生活するのかな。この銀の箱は確かに住めそうだが、少年の体では少しばかり窮屈そうな気がしてきた。少年の身長は約15cm。ドールハウスみたいな物を作ってみれば、住めるかもしれない。
……いや、やめておこう。後でいらないと言われたら、どんなにがっかりするか。わざわざ外の倉庫から段ボールを取り出してくるのも面倒だし、そもそもこいつから目を離さずにはいられない。もし今から作業を開始したとして、途中で彼が何処かに行ってしまったら、私は命懸けでこいつを探す羽目になる。
それに、私は相手に少しでも拒絶されてしまうのが嫌だから。必要ないと突き離されるのが、一番嫌だから。必要だと言われた時に、一緒に作ればいいのだ。
こんな事をしょっちゅう考えては気にする私、実は案外寂しがり屋だったりするのかもしれない。
「で、どうするのこいつ………」
と、とりあえず様子を見てみるか。目を離した隙に何かやられたら、本当にたまったもんじゃないし。




