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勿忘草の丘  作者: 中さん
第3章 僕は君が好き、君はあの子が好き。
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102話 片割れの救出

紗羅が言った通り、道筋を示す水色の光は力強く輝いている。これ以上ないほどに彼女の手元を照らす光、その輝き具合を見る限り、片割れの位置はすぐそこだ。



「うわぁ、なんでこんな時に……」



ようやくついた目的地の前には、なんと悲しいことに、私達の時と同じように見張りが二人立っていて…… 守られっぱなしの私と一矢は、何度も起こるこの状況にうんざりしていた。

それでも、魔物が怖くて動けなくなるよりはよっぽどマシだったと思う。そう考えてみると、何故このような残酷な光景を見ても、足がすくまなかったのかが疑問である。正直、自分達の謎の耐性が不思議で仕方ない。

目的地の前に立ちはだかる見張りは、先程私を襲った金属光沢の魔物と、誘拐された時にもいた黒い人型の魔物だった。

人型の魔物の方の体から、霧や炎が流れ出ているのが、どうしても気になって仕方ない。主に足から流れ出る炎は、黒や紫、時には赤に色を変え、死んだ魚のような目で周囲を見張っていた。

この様子を見れば、遠くから見ても絶対にただの人ではないとわかる。

それでも外見は全身真っ黒装備の人間そっくりなので、もしかしたら、どこかの屍が操られているのかもしれない。あるいは、強い未練を残した魂が、成仏できずに残ったのかもしれない。後者が正しいのなら、ただの地縛霊かと思った。

しかし、地縛霊がその場から離れて行動するのは至難の技。襲われた森の位置が離れていたのであれば、尚更あの魔物は動けないのである。どっかの赤猫地縛霊とは違って意思も持っていない様だし、前者の操られているという答えの方が正しい。

今回の誘拐、少なくとも"ヴァイス"が関わっているに違いない。

……さーて、先程アレンに庇ってもらったこともあるし、今回こそは2人の役に立っちゃいますか。そう思って右手を軽く構えると、この意見に賛成した一矢が、その焦げ茶色の瞳を煌めかせる。



「っしゃあ、俺らも加勢するぜー!!」

「あ、じゃあ一矢達はそっちの金属光沢をお願い。そうだ貴方達、頭上にだけは気をつけなさいよ。まずは雪菜が足元を凍らせて、そこから一矢が……」

「まぁまぁ紗羅さん、まずは2人に任せてみましょうよ」

「う、うーん…… 危なかったらすぐ言いなさいよー?」

『はーい』



心配性の紗羅に許可を貰い、金属の魔物の首を思いっきり跳ね飛ばそうとする我々。

しかし、そこで爽快に敵を倒すことができないのも、新米魔法使いの運命である。

指をさして「爆破ァ」と叫んでも、想像力の貧弱さのせいで、爆竹並みの威力しか出なかったのだ。

仕方がないので、私は紗羅がつぶやいていた戦法を試してみる。右足から鱗雲のような氷を発生させて、盛大に魔物の下半身を氷漬けにした私。

こうして動けなくなったところを、一矢が一筋の電撃でトドメを刺そうとしたが、彼の電撃に勝る鎧の丈夫さ故に、魔物を仕留められず……



「うおりゃぁぁぁっ、なんで死なないんだよー!?」

「こいつは物理じゃなきゃ無理ってことでしょ! どうなの紗羅!?」

「これ以上強い電撃ができないなら、そういうことね。物理でボッコボコにしちゃってー!」




結局手の空いた私が、バッグに入っていた杖を金属バットに変化させ、魔物の頭を思いきりぶっ叩いた。カーンと鳴り響く魔物の振動が、金属バットから私の腕に伝わって、思わず手の力が緩みそうになる。

だが、ここで耐えなければ、私は強い魔法使いになれない。

ここが踏ん張りどころだろう、そう心に言い聞かせて、私は震える腕に力を込めた。ボロボロになった床石の凹凸に足を引っ掛け、思い切り身体を前に押し出す。

私が握っていたはずの金属バットは、いつの間にか私の手元で形を変え、立派な日本刀になっていた。これなら、金属の魔物の頭と胴体の隙間に刃を入れて、首を飛ばせるかもしれない。

勝利の可能性を見つけた瞬間、私の身体は勝手に動いていた。何の迷いもなく刀を振り上げ、勢い良く魔物の鎧の溝に刃を入れる。

想像以上に柔らかな肉感と、軽やかに運ぶ刃の滑り。紗羅達はいつも、こんな感覚で魔物を殺しているのだろうか。

そんなことを思いながら、私は倒れた魔物の前で立ち尽くしていた。



「雪菜…… お前、なんで抜け駆けしたんだよ………」

「ごめん、魔力の酷使でキツそうだったから」

「あれは、お前らが巻き込まれたりしないように頑張って調整してたんだよっ! ちぇっ、こうなったら俺だって、いつかお前を越してやるからなー!? 目指すは最強の魔法使い……!」

「私も一応その目標で頑張ってるけど、その為にはまず世羅に勝たなくちゃ」

「うわぁ」



張り合ってくる一矢を受け流し、私の金属バットで飛んでいった、魔物の頭部を探す。

吹っ飛んだ魔物の頭部が床に落ちても、大きな衝撃音が響くだけで、大して残酷なものは出てこなかった。

こうして見てみると、魔物達は危険性の無い炎と血を出すだけで、中から出てくる物はそれ以外ほとんどない。要するに、血痕と大きめの残骸が残るだけで、ただそれだけなのだ。

しかも、よほどの魔物は一撃で倒れるし、魔法の攻撃なら外傷が見えない位綺麗に仕留めることも可能。

これらの物事は今の戦闘で実感したのだが、ここの魔物は雑魚の集まりという事なのか……?

その程度の疑問で頭を抱える内に、周囲に魔物がいないことを確認したアレン達は、外れかけた扉の前に駆け寄る。数秒すると雷華さんの声が聞こえ、古ぼけた扉は彼女に勢いよく蹴破られた。

そして、そこから一番最初に出てきたのは、二匹の可愛い猫達。



「師匠、無事でしたか!」

「おぅおぅ、悪いな。わざわざこっちまで来てもらって」



黒猫に変身している世羅は、彼の目線に合わせて座るアレンに向かって、申し訳なさそうに話しかけた。その光景を見ていると、澪がこっちに来る前のたこ焼きの日が思い出される。もう二度と、あっちで澪と遊ぶことはできないのか…… でもいいんだ。こっちで一緒に遊べるから。



「みんな怪我はないわね、一気に目的地まで行っちゃうわよー!」



これでメンバーは全員揃った。幸いなことに、拐われたのにもかかわらず、みんな怪我はしていない。世羅の怪我を治すため、私達はまたアルセニック湖のクラーレさんの所に向かった。

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