100話 魔法使いのお仕事
見張り達を倒し、薄暗い小部屋から脱出した私達は、紗羅の魔法で片割れの居場所を探していた。片割れの位置が近くなるほど、水色の光が明るくなる仕組みらしい。道筋は示してくれないので階段を上り下りするのは大変だが、明るさの度合が分かりやすいので、現在は案外順調に進んできている。
それで"アレ"が来なければ、とても嬉しいのだが。
「無駄に魔物が多いですね。僕、みんなを守らないと……!」
「珍しいわねアレン、いつもは怖がりなのに。ふふっ」
「雪菜達を守るためにも、怖じ気づいている訳にはいきません!」
「ふーん。前に出すぎて死んだりしないでよ、貴方はまだ見習いなんだから」
「み、見習いですか……」
そう、廃墟にいる魔物に遭遇しやすいのはあしからず。筋肉質なものからもう生き物の原型すら保っていないものまで、種類は様々だが、面倒なことに変わりはない。殺しをした事がない私と一矢にとっては、殺される様子を見ることだって耐え難いものだ。なのに、二人は蟻を潰していくように魔物を殺す。力の差は物凄く大きいはずなのに、魔物はただただ私達に襲いかかり、無残にその命を散らしていくのだ。
どうして二人は、こんなものを見ても平気でいられるんだろう。少なくとも、人や動物の形を保っている生き物を刃物で深く斬れば、当たり前のように真っ赤な血が流れるのに。
なんだか不安になってきたから、「魔法使いって、こんな事もやらないといけないの?」って、何故か返り血がついていない綺麗な紗羅に聞いてみた。
「あー、そういうのは専門によって分かれてるのよね。日之影家は代々魔物の退治や世界の環境を調べる事とかを生業としてたから、こんな物騒なものが多いのかもしれないけど」
「ふーん」
紗羅曰く、地元の人々の依頼を受けて仕事をするのが普通らしいから、殺しだけはNGってやり方も出来るっちゃ出来るらしい。それを聞いて、私は少し安心した。だって澪は、冒険ファンタジーものは好きだけど、グロいものはとことん苦手だから…… 昔聞いた話だが、特にゾンビは本当に駄目らしい。
そして、世羅の攻撃型という特殊な体質が、日之影家にとっていかに優位なのかが分かった気がする。魔物をバシバシやっつけられるのは良いのだ、生存率もぐーんと上がるし。
……いや、ちょっと待って。あの家系で生まれつきの攻撃型なんて都合が良すぎる。あの驚異的な生命力(黒いカサカサ虫以上)も、怪我を数週間で治してしまえそうな回復力も、おかしい。おかしすぎる。
私と同い年くらいの少年に限って、あんな細い身体(ロックさん以上の細さ)で? 失礼な話だけど、一番上のお姉さん(百合亜さん)なんか、驚異的なレベルで体力が皆無だし。
明らかに人間離れしている。あの体温の低さだって異常じゃないか、霰粒橋で戦った時についた、あの血だってまるで氷水。
彼って、一体何者なんだろう。
「まぁまぁ、いつか分かることよ~」
「ど、読心術……」




