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勿忘草の丘  作者: 中さん
第3章 僕は君が好き、君はあの子が好き。
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97話 人攫いによる分裂

ゆらゆら揺れる獣人さんの尻尾を追いながら、様々な森の様相を眺める私達。長いこと足場の悪い獣道を通っていたので、いい加減箒にでも乗ろうかと思ったが、そもそも私は箒に乗るのが苦手なんだった。

そんな疲れ気味の我々の中で、異様に楽しそうにしているのがこの二人。勇助は植物やきのこに夢中だし、雷華さんは地上に剥き出しになった木の根や岩場をひょいと飛び越えながら移動してるし。あの177cmの長身で軽々と、ひょいって。

前世は猿ですか貴方。



「へくしっ、誰か私の噂でもしたか?」

「いえ」



どうやらこの獣人のルピナスちゃん、結構前からクラーレさんの助手をしているんだとか。いつもは彼女の家に住みながら、私達のような迷い人を見つけてアルセニック湖の入り口まで案内したりしているらしい。

そんな彼女が変身できるのは狼だけだが、多種多様な動物に変身できるアレンと違って、強い・大きい・でも可愛いという最強の三拍子。

しかも、アレンが使っているのは幻術で動物の姿に化ける魔法だが、彼女の方は完全に、狼の姿に変身できるそうなのだ。

どうやらそのような種族がこの世界に存在するらしく、その種族の血族の者であれば、種族の能力と同時に魔法も扱えるんだとか。逆に言ってしまえば、存在する種族のどれかに当てはまらない人間は、魔法が使えないということになる。となると魔法使いの人々は皆、何かの種族に属しているのだろうか。



「じゃあ魔力を取り込ませても、どれかの種族に当てはまる人間でなきゃ、すーっと抜けていっちゃうのかしら……」

「この街が属している王国の民は、普通の人間なので魔法は扱えません。その様な者が魔力を取り込んだとしても、そのまま流れ出てしまうのがオチです」

「あわわ、なんか心配になってきた……!」



この話を聴き、紗羅はぬおーと唸って頭を抱えた。それはもしかして、澪のことを言っているのだろうか。

私達が住む世界の人間は、何かの特別な種族というものが存在しない。私や一矢に魔法使いの素質があった理由すらハッキリしていないのに、澪がちゃんと魔法使いになれるだなんて、どうしてそんな確証のない自信が持てたのだろう。


夢を見すぎていたのだと、認めるしかなかった。


そんな現実を突きつけられ、冷や汗をかきながら目を泳がせる我々。世羅の怪我を治したら、既に終わってしまった澪の儀式がどうなったかを、あの街へ聴きに行かなければならないと思うのだった。

さぁ、答えの見えない謎に頭を悩ませても時間の無駄だ、急いで湖の方までいかなければならない。狼の少女曰く、最近この辺りに人攫いの魔物が出るようになったらしいのだ。だから、私達は周囲の気配に気をつけて、垂れ下がった木の枝を掻き分けている。私達が地面を蹴り上げる力を強め、歩行速度を上げていくたびに、その集中力は木々の物陰ひとつひとつに対して注がれていた。

しかし、私達のその警戒は、一瞬で水の泡になってしまったのだ。


そう、あの時の私達は一瞬の隙をつかれ、そのまま……


目の前に黒い何かが横切ったと思ったら、突然体が金縛りのように動かなくなって、どうしようもない寒気が全身を包み込んだ。私みたいな新米魔法使いにはどうしようもないような、強い力で。こうして次第に意識が薄れゆく中、珍しく焦った紗羅達が魔物に応戦する。

でも、どうやらこっちが押されているみたいだ。

狼に変身して戦っていたルピナスちゃんは、既に倒れている。雷華さんが樹上から飛び降りて、ナイフの様なもので奇襲をしたけれど、金属光沢のある魔物の方はびくともしない。紗羅とアレンも、戦闘と同時に出た黒い霧のせいで魔法が使えなくなり、その上身体もうまく動かせない状態になってしまった。要するに、私達は既に無力。ほぼ一瞬で、突然現れた魔物達に取り押さえられたのだった。

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