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勿忘草の丘  作者: 中さん
第3章 僕は君が好き、君はあの子が好き。
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95話 お医者様を探して

あれから五日経ち、今日は土曜日。世羅の大怪我を早く治すために、医者のクラーレさんを探しに行く日だ。世羅の意識は戻り、怪我もだいぶ良くなってきているが、まだ腹と頭の傷は良くならない。それと同時に気になった事があるのだが、何故か彼の怪我が治った所は、傷跡が全く残っていないのだ。私はこれがチートの回復力かとつぶやいたが、紗羅は世羅の事をチートではないと否定する。しかし、明らかにチートに近い能力だと思えた。



「さっさとクラーレさんの所に行って、治療してもらおうぜ。あの人ならこいつみたいな体質の奴でも、簡単に治してくれるからなー」

「とにかく世羅の怪我を治して、次の依頼や襲来に備えなきゃ!」

「あ、そうだ。一矢は骨折してるけど大丈夫なの?」

「ふっふっふ…… そんな事もあろうかと、一時的に骨折を治せる魔法を練習してきたわ! ほら一矢、ちょっと左腕を貸しなさーい」

「うわ、魔女の特権ってやつかよ」



紗羅の言葉に若干引き気味の一矢は、渋々彼女に左腕を差し出し、魔法をかけてもらっていた。すると、本当に一時的に骨折が治り、バッチリ動かせるようになってしまう。これなら一矢も安全に箒に乗れるし、足手まといになる心配もない。キラキラと目を光らせる一矢は、包帯を巻いたままの腕を上げて、誇らしげに胸を張って見せた。



「ほら雪菜、二週間足らずで骨折が治ったぜ」

「一時的にね」

「あ、帰ってきたら元に戻すから、あんまり無理しすぎないでよ」

「え」



一矢を悲しみの淵に叩き落とした紗羅は、ケミストリーの街に続くゲートを開く。よっこいせと布団をたたんだ雷華さんの方は、自力で黒猫に化けた世羅と、その弟の寅をアレンに任せた。

紗羅のゲートの景色は、真夏の太陽の光が燦々と降り注ぐ、美しい珊瑚礁の海の中。その鮮やかな煌めきを見ているだけでも、心がすーっと浄化されたような気分になる。3秒後にはいつものように視界が明るくなり、眩しくなって目を閉じる。光が収まったと思い目を開くと、そこには百合亜さん達の街よりも随分発展している、大きな街の景色が広がった。昔のヨーロッパ中心部の様な都会に、田舎で生まれ育った私達は圧倒され、だって、この世界の印象といえば昔の西洋しかなかったんだもの。それとも、あの街が田舎だっただけ?

ふと紗羅の方をみると、見事に読心術を使っていた。



「えぇ、私達の街がちょっと田舎だっただけなのよ。こんな都会も滅多にないんだけどね」

『ええええええ』

「でも、こんな都会に湖なんてあるのかよ?」

「勿論よ、街の外れの方に小さな湖があるの」



あぁ、こんな都会にも湖が残っていたのかと、私達は正直に安心した。こっちとあっちの世界では産業の発達などに大きな差があるのか、都会っぽいこの街にも、車などの機械は全く見当たらない。そういえば、アルセニックは英語でヒ素という意味だった気がするが、その湖のほとりに住んでいるお医者様は、本当にそこで生きていられるのだろうか。心の中でそんな心配をしながら、私達はアルセニックという湖へ向かうのだった。

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