プロローグ?
碧く美しい丘の上で、穏やかな風の音がした。
幼い少女の小さな体は、丘に根をはる花と共に静かに揺れている。
漆黒のワンピースを身につけた少女は、花畑に映る自分の影をぼんやり眺めながら、そよ風になびく丘の上にぽつんと立っていた。
すると、ひとりぼっちの少女の前に、彼女よりずっと年上の少年が近づいてきた。
それに気づいた少女はおずおずと顔を上げ、微笑む少年の顔を見つめる。
自然と握る手に力が入り、少女に摘み取られていた碧い花は、弱々しく陰を落とす。
その黒髪の少年は、顔がぼやけて誰なのか分からなかったけれど、とても大切な人だと思えた。
彼の手には勿忘草が握られていた。
この丘に咲き誇る、美しい花々。少女もその花を手に持っていた。
彼女がそれに気を取られていると、少年はくるりと少女に背を向けて、また歩き出す。
"行かないで"
耳の奥で、そんな言葉がこだました。
「まって!」
何度叫んでも、彼は歩くのをやめない。走ろうにしても、身体が呪われているように重くて動かない。
必死に手を伸ばして進んでも、どんどん彼の背中は遠ざかっていく。
ようやく追いついたと思ったら、振り向いた彼は切なげな面持ちでこう呟いた。
『僕のこと、忘れないで』
どうも、中さんです。今作がなろう初の作品になります。
花言葉は今作の大事な所。勿忘草の丘の少年は一体誰なのか、明らかになるのはずっと先になりそうですが、それが分かる頃には私の心も切ない気持ちで満ち溢れていることでしょう。
始めのうちは明るい内容なので、安心してくださいネ。
【基本的に主人公ちゃん視点でいきます】