繰り返しの日々(私(夢)20代 ?10代
1
私はよく夢を見る…
ここは何処?ああ…そうか今日は小学校の授業参観の夢の発表の時間だな…親が後ろで並んでいる中に入り、目の前にいる自分を見る次は自分の発表の番だ
「私、水谷 夢は結婚することが夢です!」
「そうか…そうか…」
私はこう言いながらその子に近づく周りの目も気にせずに、そして耳元で小さく囁く
「君は20代になってもまだ彼氏すらいないのさ」
その子は泣き出す、泣き出したいのは自分の心なのに…そこで目が覚めた。
2
布団を持ち上げて体を起こすと、時計はまだ夜の3時を指していた。起きるにしては早すぎる、私はもう一度寝ることにした。
今度は何処に行くんだろ?今度は中学生の自分が見えてきた誰かとはなしている、相手はかなりイケメンだ「好きです!付き合って下さい。」私が告白されているしかし、私は断る
「ごめんなさい」
と、中学生の頃の私に近づきまた囁く
「その人以上にいい人何てこれからずっと出会わないよ、馬鹿だね私」
その子は唖然とする。そこでまた目が覚めた。今度こそ会社に行く時間の10時を指していた、また布団を持ち上げ、私は学校以上に人生を捧げている場所に向かうのだった。
3
「おはようございます!」
私自身ではない何かが私に挨拶しろと命令する、背くことはできない。命令するのは過去に学んだ、社会のルールとやらだ。
自分の席に座り今日も仕事を始める、1時間が過ぎた、私の所に嫌な奴が来る、
「ねえねえ夢さん 最近頑張りすぎじゃない 良かったら一緒にご飯食べに行かない?」
いつもやって来るセクハラに近い発言を毎日する先輩。
「結構です」
先輩にはこの言葉でしか背けない、こちらが反抗できない事を知りながら誘ってくるなんて、なんて嫌な奴なんだ、そうこうしてるうちに退社の時間が来た。
毎日こんな日々が続いている、毎日毎日毎日こんな繰り返しを永遠と続けて行く、普通の人、特に私みたいな上を求めすぎた人間には友達も殆どおらず彼氏もいない…。
こんな事を考えるのは鬱なのかそれすらもう分からない、ただ小さい頃は確かに人生を楽しんでいた。楽しくなくなったのは大人になってからだ…
4
家に着いた特にやることもない適当に料理して食べてテレビ見て寝るだけ、そんな生活。
そんなことを考えながら、今は毎週見てた恋愛系ドラマを見ている、もうすぐラストシーンだ…彼氏が彼女に告白して終わりだった。
終わった瞬間急に涙が出てきた
「私も…こんな人生…送りたい…いや…送りたかった…もう…ヤダ…こんな人生」
親に言われた結婚もできてないし、ましてや小学校からの夢も叶えられない人生
「もういいや…明日死の!」
驚くほど簡単に自殺を決意出来た。
いけないことなのは分かってる…けどもうどうしようもない。そう考えた瞬間だった!
「お届け物でーす」
と声が響いた。
5
「何か頼んだっけ」
と扉を開ける、そこには誰もおらず、かなり大きめの段ボールだけがあった、開けてみると中には少女が入っていた…。
段ボールにはこう書いてある、
(人生にお困りの一人暮らしの貴方、毎日が日々の繰り返しだと悩みませんか?そんな貴方にこの少女をプレゼントしますまずはお試しあれ)
「は?」と声がでた。何しろ頼んだ覚えがないし、まず少女を段ボールで送る時点で犯罪ではないだろうか?
「ん? ここはご主人様の家?」
少女が起きた、見た目は小学生位で金髪の髪が綺麗な子だ。
「君は誰?」
私が聞く
「お姉さんは私のご主人?」
少女が聞く、しばらく沈黙が流れた。
先に自己紹介を始めたのは少女だった
「初めましてご主人様 私の名前は
名咲 と申します、家事などを頑張りますのでどうか…見捨てないで下さい」
とその言葉の後半を泣きそうな声で言われれば断れる訳がない
「私は夢と言うんだよろしく」
こうして1人の生活が終わりを告げた。
6
それから1日後…
「名咲 一生懸命やろうとしてるのは、分かるんだけどさ…これは私でも許せんわ」
彼女を貰ったことは天からの恵と言うより天罰かもしれない、そんな風に思ってしまう程の光景が目の前に広がっていた。
床に何故か皿が裏返しに置いてあり、机の上は毎回拭かないからシミだらけ、しまいには洗濯機に服と一緒に皿が入ってた…。
「何か間違ってましたか?主人」「大間違えだー!」
私は間違っていることを全て注意した。
「なるほど、皿は洗濯機に入れたはいけないんですね。洗濯機って名乗るからには、皿も洗えるのかと思っていました。」
「次から気おつけてね…」
「はい!」
返事だけは立派な彼女だ。
7
彼女を注意し終わった時刻は11時だった
「じゃあ私仕事行ってくるから」「行ってらっしゃいませ主人!」
いつもと違うことと、いえば見送りの言葉が今日はついてきた。
会社に着いた
「おはようございます!」
いつも通り命令のまま言葉を伝える。いつも通りだ、一つ違うことと言えばいつもセクハラしてくる先輩が居なかった事くらいだ…何故?
「ただいまー」
いつも通り家に帰る…違うのは家で待ってる人が0ではないことだ…。
「お帰りなさい主人!」
と元気に返事を返す少女、しかし朝と違う何か違和感がある。
服が朝より汚れていて、何故か少女は私に見せないように手を後ろに隠している。
「名咲 手見せてごらん」
「べべべ別になんにもないですよー嫌だな〜主人」
どうやら彼女は嘘が下手らしい
「見せなさい!」
と彼女の手を前に持ってこさせると、予想どうり手の色々な所から血が滲んでいた。多分料理をしている時に誤って切ったのだろう、
「名咲痛い?」「凄く痛いです」「消毒して絆創膏貼ってあげる、ごめんね 私の為に…」
引き出しを開けて絆創膏と消毒液を取り出す、
「まずは消毒ね」「ひっ…」
名咲の顔がひきつる。
「染みる?」「大丈夫…です」
大丈夫と言いつつも彼女の目には私の目の前では我慢してたであろう涙が出ていた。
「よし!終わったよ」
「終わったんですか?」
「ほーら終わったから泣かないの…」
私は彼女を抱きしめた。そのまま服に顔を埋めさせて涙を拭いてあげる。
「ごめんね…朝に注意したから失敗しないように精一杯努力してくれたんだね…」「…」
彼女は何も言わずしばらく泣いていた。
8
「さぁご飯食べよっか!」
私は泣き止んだ名咲を連れてキッチンに行くと朝とは全く違う光景があった、そこにはキャベツの千切りとコロッケが綺麗に並べられていた。
横に置いてあるご飯がさらに食欲を引き立てる!
「これ名咲が作ったの?」
「はい…キャベツの千切りに少し血がついてるかもしれませんが…」「凄い…やれば出来るじゃん!食べてもいい?」
「え…あっはい!お口にあうか分かりませんが…」
私はコロッケを食べる、サクサクしていて中のジャガイモが私の口を温める、続いてキャベツを食べる少し鉄の味がするけど気にならない丁度いい位に切られている。
ご飯も丁度私が好む柔らかさだ!「名咲ご飯ありがとう、凄く美味しいよ…」
「はい!ありがとうございます」
彼女の嬉しそうな声が食卓に響いた。
9
その晩寝る支度をしている私の所に名咲が来た。
「主人一緒に寝てもいいですか?」「どうしたの急に」
「少し話したいことがあるんです…」
と言うと彼女は私の隣に入ってきた。
「あったかいです…」
確かに一人で寝るより確かに暖かい、私は暖かさのあまり本題を忘れていたことを思い出した。
「名咲何を話したいんだい?」
「主人の高校時代のを私に話して下さい!」
確かに私は毎回見る夢の内容を名咲に話したが、高校時代の夢は見てないので、まだ名咲に話したことは無かった…。
「いいよ…ろくなこと話せないけどそれでも構わないなら」
10
「高校時代の私には色々な人生を見過ぎて、もう夢なんて無くなっていた。
だけど夢なんて無くても、
皆んなといるだけで楽しかった。
満足だった
夢がないから私は高校時代の夢を見ないそれだけさ…夢を無くしたから大学には行ってない…だってやりたいことがないんだし」
私は楽しかったと嘘をついた
「…」
重い空気が流れる、先に口を開いたのはまたもや彼女だった。
「…主人は今 名咲が居て幸せですか?
ずっと同じ日々が続くと考えていた主人を、私は今日変えれましたか?
迷惑ばかりかけてる私を邪魔だとは思いませんか?
正直に答えて下さい…主人…」
かつてここまで自分のことをここまで下げて話す人物を見たことがあるだろうか…私には無かった。
「私はね…今 名咲が居てくれてとっても幸せだよ…今日は私の為に手を血だらけにしてまで、料理を作ってくれたじゃないか。
ここまで私に尽くしてくれるのは名咲だけだよ… だからね、 私は名咲が邪魔なんて全く思わない ましてや君は私の繰り返しの毎日を変えてくれた恩人さ…」
話し終わると名咲は私の頭を撫で始めた、撫でてもらうのは何年ぶりだろうか…。
「主人…いや 夢さんは頑張り過ぎなんです、もっと人に甘えてもいいと思います。一人で悩まずに私に相談して下さい!」
と彼女は胸に手をあて私の目をしっかりと見ながらこう言った。私は今まで貯めてきたものを吐き出せて安心したのか、そのまま寝てしまった…
ダンボールで届く少女との出会い…少し憧れる…