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第2話

 今僕たちは一切装飾がされていない一面真っ白な個室にいた。あるのは使い方の分からない医療器具と患者が暇をしないために唯一の目のやり場であるテレビがあった。昔は色んな事を知らせる為にあったらしいが、今は殆ど昔に作られていたアニメしか流れない。後は不審者が出た時の報告位だ。

 「ほれ、これで終わりだ」

 「いっつ!」

 張ってもらった湿布の上から勢いよく手で叩かれ、僕は座ってた椅子から転げ落ちそうになった。

 「大丈夫、純」

 「おいおい、ずいぶんと乱暴じゃないか。それでも医者か?」

 「お前らがもし女で、尚且つ美人だったら喜んで医者として働かさしてもらうのだがな」

 「あ、相変わらずだね。癒治さんは」

 「だね」

 ドームで唯一の医療機関で働く、よれよれしわくちゃの白衣を着て目の下に隈が常に出来ているこの人は癒治さん。明らかに不健康そうなのだが本人からすればこれが正常らしい。

 「全くよ、収入も良くてそこそこ顔も良いのにそんなんだからいつまでも独身なんだ」

 「ほっとけ、結婚なんか誰がするか。女は見てるだけで充分だし、金は全部俺が使う」

 「はっ、寂しい奴だぜ」

 大地さんも余りにも暇なのか座っている椅子でくるくる回ってわテレビを見てを繰り返していた。回る椅子が回るたびに金属の擦れる音を放ち、部屋を不快な音で包んでいた。

 最初の内は我慢できていたのだろうけど、大地さんがその音でリズムよく音を出してきた辺りで緑ちゃんが大地さんに注意をしようと立ち上がった。

 その時、アニメを流していた筈のテレビから突然画面が切り替わり、一人の女性が立っている映像に変わった。

 「緊急警報です。先程、植物工場が何者かに爆破されました。それにより当分の食事が制限がされると共に、爆破を試みた犯罪者が近くにいるかもしれないので外出は控えてください。繰り返します」

 女性は原稿から一切目を話すことなく同じことを繰り返し読んでいた。

 「うっわ、当分食事はスポンジかよ」

 「え~、スポンジ食べたくない~!」 

 「そうだね、スポンジは嫌だね」

 「スポンジって、まぁ確かにぴったりかもな」

 先程からスポンジといっているものは、何も本当のスポンジではない。本当の名前は水膨張型完全栄養食という物で、これを一つ食べて水さえ飲めばたちまちお腹が膨らむというのが特徴。けどひたすらに不味く、食べ物とは言いがたいものなので誰も正式な名前で呼ぶ人はいない、僕達の間ではスポンジと言わせてもらってる。 

 「でしょでしょ。他には確か座布団とか言ってたよ」

 「以前スポンジの美味しさを紹介するために放送されたテレビですら、食べてた人は終始嫌な顔してたもんな」

 「あれは面白かったな~」

 そういった後、大地が大声で笑っていると扉が突然開いた。大地は笑うのをやめ皆で扉の方を向くと、癒治さんとは違い綺麗な白衣を着た男の人が息を荒くし顔を青ざめさせた男がいて、その男は焦りながら癒治さんに近づいてきた。

 「ゆ、癒治先生!? ニュース見ましたか!?」

 男はかなり大きな声で喋ったため、癒治先生はすぐに指で耳を塞いでいた。

 「あの工場が爆破された奴だろ、見たけどそれがどうした?」

 「爆破された場所は例の場所です」

 「例の場所」と聞いた瞬間、癒治さんの顔は一瞬で入ってきた男と同じぐらい青ざめていき、目は見開いていた。そしてゆっくりと立ち上がると、僕達の方に体を向けた。

 「よ、用事ができてしまったから、すまないが今日は帰ってくれないか。そ、それと、帰ったら絶対に外に出るな。 絶対だぞ!」

 「へ、わ、分かりました」

 僕の返事だけを聞くなり、癒治さんはすぐに入ってきた男と部屋から出る準備をしていた。大地さんと緑ちゃんが何かを言おうとしたしたけど、癒治さんの慌てぶりに。

 「仕方ねぇ、さっさと帰ろうぜ」

 「そうだね、何だか私達邪魔そうだし」

 と言い、荷物を持ち始めた。

 そして僕達より先に準備が終わった癒治さん達は扉を勢いよく開けた。すると扉のすぐ目の前に人が立っていたのか扉は大きな音を出し、直ぐに何かが床に倒れる音がした。

 帰る準備が終わった僕達もすぐに部屋を出てみると、

 「あぁ、ごめんね。扉の近くにいるなんて知らなかったんだ。怪我はしてないかい?」

 「たく、何やってんだよこんな忙しいときに」

 入ってきた男が扉に当たって床に倒れてしまった女の子に近づいていた。癒治さんは本当に余裕がない用で、イライラしていた。

 「ほら、たてるかい」

 と言い、入ってきた男がしゃがみこみながら女の子に手を差し伸べた、女の子は上半身を起き上がらせ、入ってきた男の手を掴んだ。


 それはとてもゆっくりとしていて、明確で記憶に焼き付くような出来事だった。いや、もしかしたらそれは尋常ではない速さで起きた事なのかもしれない。

 手をつかんだ女の子は伸びきった手を引っ張りった。女の子の目線に合わせるためにしゃがんでいて前屈姿勢だった男は、突然の事で姿勢を保てずに前に少しだけよろけた。そして女の子はそのよろけた瞬間、ゆっくりと男の懐に入っていき、首もとに近づいていき。

 「へっ?」

 子供が無邪気にハンバーグにかぶりつく時と同じぐらい大きく開かれた口で、男の首にかじりついた。

 「きゃぁぁぁ!!」

 緑ちゃんが叫ぶ声でゆっくりとしていた感覚が正常に動き出す。それと同時に女の子は男の首を二回、三回と何回も噛みついていた。最初に噛まれた時に喉仏でもやられてしまったのか、既に声は出せずに小刻みに震える弱りきった腕をこちらに伸ばして、力尽きた。

 男が力尽きたことをからだろうか、女の子は首を噛むのをやめただ立ち尽くすだけの僕と目を合わせた。

 「ぁ、ご、ごめんなさい!」

 僕は何故か反射的に謝ってしまうだけで体は全く動かせない僕に、女の子は自分の体の2~3倍程に跳躍して僕の首目掛けて飛びかかってきた。

 「純! 避けろ!!」

 大地の大きな声が聞こえると僕の体は動きだした。僕はすぐさましゃがみこみ、女の子を避けた。すぐさま後ろを振り向くと女の子はまた僕に飛びかかろうとしていたが、大地さんがその女の子に喧嘩で鍛えた蹴りをくらわせ、女の子は遠くに吹き飛んでいった。

 「部屋にもどれお前ら!!」

 すかさず癒治さんが声を張り上げ、殆ど反射的に緑ちゃんの手を掴み立ち上がらせて部屋に入った。直ぐに大地さんと癒治も部屋に入り扉を閉めて鍵を閉めた。

 すぐさま扉は凄まじい力で叩かれた、何度も何度も叩かれて扉の音と一緒に肉が潰れる音が聞こえると、扉は叩かれることはなくなった。

 

  

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