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なにこれカオスーその2ー

 とにもかくにも。狩野から解放された俺は大きく息を吐く。

 今日はあいつのおかげで無駄に疲れた……。


「……あれは?」


 バス停まで来たとき、通りの向こう側に園神が歩いているのが見えた。


 あいつ、そういえば用事あるって言ってたけど、こんなところで何やってんだ?俺はてっきり殺し屋関係のことかと思ってたんだが。


「……」


 人間は好奇心には勝てない生き物だ。

 俺は自分にそう言い聞かせると尾行を開始した。


そして――。



 1分でバレた――。



 くそ、相手は殺し屋だった……。


「何してるの? 拓斗」

「あ、いや。――お前がこんなところにいるから、どうしたのかと思って……」


 困ったときは正直に話すのが一番だ。


「それで付いてきたの? 妙な気配だと思ったわ」

「悪い……」


 俺は軽く頭を下げて謝る。


「なら、一緒にくる?」

「は?」


 園神から思わぬ一言。


「いいのか?」

「拓斗ならいいわよ。アタシの仕事知ってるもの」


 やっぱり殺し屋関係か……。


「危なくないのか?」

「ただのお使いだもの。平気よ」


 お使い……買い物か。なら別にいいか。


「じゃあ、お言葉に甘えて」

「ええ、こっちよ」


 そう言って連れてこられたのは、カフェだった。


「おい、こんなところで買い物なんて……」

「人から直接買うの。――すみません、待ち合わせをしているんですが」


 なるほどと俺が納得している内に、園神が店員をつかまえて要件を伝える。


 店員に案内されたのはオープンテラスの席だった。そこにはすでに1人の男性が座っていた。


「つーか、店長さん!!」


 俺は驚いて声を上げる。


「君はさっき、狩野くんと一緒にいた……」


 店長さんも驚いて俺を見る。


「どういうことかな? 舞さん?」


 店長さんはすぐに事情を知る園神に質問した。俺も園神を見る。


「あら? 2人とも知り合いだったの?」

「さっきちょっと顔を合わせただけだよ。それより分かってる? 今日の目的」


 店長さんが困った表情で園神に言う。俺、来ない方が良かったか……。


「大丈夫よ。拓斗はアタシのこと知ってるから」

「それは本当かい?」


 店長さんが今度は俺に視線を向けてくる。


「あー、園神の仕事のことなら一応知ってます」

「それはそれは……」


 店長さんは少し驚いた様子をみせると、俺たちに席を勧めてくれた。


 俺はコーヒーを、園神はオレンジジュースを頼んだ。ちなみに、店長さんはすでにコーヒーをブラックで飲んでいた。


「じゃあ、自己紹介しないとね。僕は熊切朔眞くまぎりさくま。さっきのレンタルショップで店長をしてる」

「初めまして。麻川拓斗です。狩野と同じ大学の学生です」

「そうだったのか。どうして舞さんのことを知ったんだい?」

「俺が高校3年の時にいろいろあって……」


 熊切さんが園神を見る。


「落とした弾丸を拓斗が拾っちゃったの」

「わぁお」


 熊切さんが俺を見る。


「それは災難だったね」

「いやまったく」


 おれはここに来て、今日一番の常識人と会えたようで嬉しくなる。


 注文したコーヒーとオレンジジュースが運ばれてくる。はあ、コーヒーがうまい。


「それじゃあ、僕も裏の仕事について話しておこうかな」

「は?」

「僕は銃器の修理や開発、販売をしているんだ」

「……」


 なんだろう。コーヒーの味が急に分からなくなった。


「銃器専門のところにお願いするより安くすむのよ。腕は確かだし、重宝してるの」


 園神が余計な情報を追加してくる。いや、知りたくないから……。


「どこの業界も不景気だからね。僕は銃器(こっちでは利益求めてないから。これは癒しだからね」

「癒し?!」


 衝撃の言葉に俺の声がひっくり返る。


「うん。店にはね、よく分からないクレーマーだったり面倒な上司だったりがたまに来るんだよ。そういうとき、この人をどんな銃器で蜂の巣にしようかと想像すると開発が進むんだ。――ああ、これだから銃器も社畜も辞められないんだ」


 恍惚とした表情でとんでもないことを語る熊切さん。


「……」


 狩野! お前は騙されているぞ!


 先程尊敬の眼差しを熊切さんに向けていた狩野に真実を話してやりたくなる。


「当たり前だけど、僕の裏の仕事のことは誰にも言わないでね」


 言ったらどうなるか分からないよ? と、言ってもいない言葉まで聞こえてくる。


「もちろんです!」


 俺は必死に頷いた。社会怖すぎだろ…。


「園神は今日、熊切さんと何するつもりだったんだ?」


 熊切さんと話すのが怖くなった俺は園神に話を振る。


「情報交換と銃の取引」


 さらっと怖いこと言ったあああ!!


「そうそう、ここのところ武器がよく売れるよ。同業にそれとなく話を振ってみたら、そっちもそうだった。どこのどいつか分からないけど、武器を集めてるね」


 俺を無視して会話は続く。


「どこの奴らかは分からないんですか?」

「どこをどう流通して誰の手に渡るかなんて僕らには関係ないことだよ」

「そうですね」

「近々戦争でも起きるんじゃない? ……なんてね」

「情報ありがとうございます」

「……」


 俺はなんでこんなところにいるのだろうか……。


 俺は今日会った顔ぶれを思い出す。彼女欲しい病の残念なイケメンに中二病患者の女子大生、そして最後は裏で銃器取引してるレンタルショップ店長!!


――――今日はなんて1日だっ!!!




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