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舞の組織

「どうした舞!そんなことでは殺られてしまうぞ!!」

「はい!!」


 舞は自身の祖父を頭とする組織――通称G2≪ジーツー≫の訓練施設にて実戦訓練を行っていた。


訓練場は室内にも関わらず、いくつもの建物が障害物のように乱雑に立ち並んでいる。建物や地面、壁面はそれぞれに戦いの痕跡を色濃く残している。ここはG2組員の鍛錬の場なのだ。


 舞は今日、その鍛錬の場を貸し切って訓練に当たっていた。


 舞の相手をしているのはG2の幹部の1人、島倉元太しまくらがんたである。今年40歳を迎えながらもその肉体に衰えはない。短く刈り上げられた髪に混じる白髪が唯一年齢を感じさせている。


「ふんぬっ!!」


 固く握りしめられた拳が、舞に向かってふり降ろされる。


「!」


 舞は地を蹴り、後方へ一回転。



ドゴォン!!



 舞の居た場所に大きなクレーターができる。


「はっ!!」


 上がった土煙から飛び出し、舞は右足を軸にした回し蹴りを元太の側頭部に放つ。が――。



がしっ!!



「!!」


 元太に左足首を掴まれ、そのまま投げられてしまう。


「ぅあああ!!」

「ゴラァ!! 舞!! んなおやじにやられてんじゃねえぞ!!」

「!!」


 なんとか受け身を取った舞に飛び込んできたのは、銃を構えた女性。彼女もG2の幹部の1人、駿河愛華するがあいかである。腰まである長い黒髪に一か所赤いメッシュを入れ、風に靡かせている。


「オラオラ!! 止まってんじゃねえ!!」



パパパパァン!!



「くっ!!」


 舞は体制を立て直し、弾丸を避けながら自身も太もものホルスターから銃を抜く。



パンパンパンッ!!



 愛華に向かって3発撃つ。



バババンッ!! ――ビチャビチャビチャ!!



 空中でカラフルな色彩が舞う。舞と愛華の銃には実弾ではなく、訓練用のペイント弾が

装填されている。愛華は舞が放った弾を空中ですべて撃ち落としたのだ。


「遅え! 死にてえのか!!」


 愛華の激が飛ぶ。


「それから、背後ががら空きですよ。舞さん」

「!!??」


 舞は反射的に右に飛んだ。



ザン――!!



 一線。刀が空を斬る。


 刀の持ち主は細い目の青年、清灯幸正せいとうゆきまさである。彼も同じくG2の幹部だ。前髪を左側に流し、短めに髪を整えている。彼の周りは空気の流れが止まっているかのように静かだ。


「愛華に気を取られすぎです。1対多の場合、気配を読み落とすとそのまま死にますよ?」


 にこっと笑って幸正は追撃を開始する。


「―-っ!」


 舞は銃をホルスターに戻し、腰にクロスさせていた2本のナイフをそれぞれ引き抜く。



キィンキィンキィン……!!



 斬り合いの連続。銀色の線と火花が両者の間に散る。


「てめえ、ユキ!! まだわたしと舞がヤリ合ってたんだ!! 邪魔してんじゃねえ!!」



パパパァン!!



「!」

「!」


 幸正と舞は互いに後方に飛ぶ。



ビチャ!



 地面にペイント弾の赤色が広がる。


「はぁ、乱入のタイミングは自由だと決めていたはずですよ? 愛華」


 幸正は刀を鞘に納めながら、こちらにやってきた愛華に言った。


「そうだぞ、あのとき舞は背後への注意が疎かになっとった。タイミングとしては完璧だ」


 合流してきた元太も意見を述べ、愛華を注意する。


「うるせえ!! まだヤリ足らなかったんだよ!!」

「これは舞のための鍛錬です。私情を挟まないでください」

「ああ? うっせえって言ってんだろうがユキ!!」

「あの! やめて下さい!!」


 口論になった幹部たちを見かねて、舞が止めに入る。


 この3人の幹部たちはそれぞれに実力があるが故にどうも噛み合わないのだ。




舞の祖父、園神玄造が率いる組織G2には3人の幹部が存在する。


1人目は島倉元太、40歳。格闘技の達人であり、この3人の中ではリーダー的存在である。2人目は清灯幸正、26歳。剣技の達人であり、殺し屋とは思えない外見と性格をしている。そして、3人目は紅一点の駿河愛華、27歳。銃器の達人であり、この3人の中で最も性格も口も悪い。


それぞれが各分野において組織内最強であり、組織を統治するのに重要な役割を果たしている。


舞は昔からよくこの3人に訓練を付けてもらっていた。1から舞を仕込んだのは祖父の玄造だが、技に磨きをかけたのはこの3人なのだ。




「すまんかったなあ、舞」


 ようやく口論が収まったのか、元太が頭に片手を置いて謝る。


「鍛錬を中断させてしまい申し訳ありません」


 元太に続いて幸正も丁寧に頭を下げる。


「チッ! 悪かったよ」


 最後に愛華も舌打ち交じりだが謝った。


 3人とも舞には甘いのだ。元太は娘のように、幸正と愛華は妹のように舞を可愛がっている。


「いえ、お忙しいのに付き合ってもらっているのはこちらですから」


 舞が大学生活を始めて早1カ月と少し。舞の殺しの仕事は激減しており、学生生活が生活の主体となっている。


 そのため舞は、戦いの勘を鈍らせないようにこうして訓練をお願いしているのだ。


「いいってことよ。わしらは好きで付き合っとるからな」


 元太は笑って舞の頭をがしがしと撫でた。


 舞は嬉しそうに頬を緩ませる。


「舞さん、そろそろ学校の時間では?」


 幸正が横から申し出る。


 時計の針は8時を回っていた。


「あ!」


 舞は時計を見て慌てだす。


「おやっさん、ユキさん、愛華さん! 今日もありがとうございました! 行ってきます!」


 舞はぺこりと頭を下げると走り出した。


「ったく、慌ただしいな」


 悪態をつく愛華も表情はどこか優しげだ。G2の幹部は3人とも舞の大学生活を応援しているのである。





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