奥山さんの合コン。4
奥山さんはモテたい。
「あかりちゃん、相談があるんだけど」
「お金は貸さないよ」
「違う違う」
合コンの次の日、奥山さんは落ち込んでいた。
「昨日の合コン?」
「うん、なんかさ……」
「奥山さん、モテてたもんね」
奥山さんはあかりちゃんプロデュースの出で立ちで合コンに参加した。何度も何度も、これ部屋着だよ?と確認して着た服は、黒の細身のボーリングシャツと黒の細身のパンツだった。
「なんかね、昨日の夜からケータイが鳴りっぱなしなんだ」
「さすが!」
「遊ぼうとかごはん行こうとか」
「すごい!」
「合コンて、異性と出会うんじゃないの?女の子からしか連絡来ないよ?」
合コンに来た女の子はパステルカラーのふわふわした可愛い女の子だった。奥山さんだけ黒かった。黒くてさらりとした髪は明らかにふわふわの真逆だった。
「ビールは美味しかったよ?でもなんで女の子からしか連絡来ないの?スーツのヤツらはなんだったの?」
「銀行で働いてるって」
「職種じゃなくて」
「26歳だっけ?」
「年齢でもなくて」
「何?」
「ヤツらから連絡ないんだけど、いやあったけど、合コンに誘われたけど、女子枠じゃない方で誘われたけど、なぜ?」
奥山さん、気がついてないね。奥山さんはきのこみたいに髪をカールさせて象柄とか虹色とか着てたらただ背が高い人だけど、ちょっと変えたらイケメンなんだよ。奥山さんは間違えたんだよ、性別を。
「恋愛対象はタバコとビールと寿司の趣味が合うかっこいい男子なんだけど」
「男子とか贅沢言わないの、奥山さん」
「贅沢なの?恋愛対象が男子なのは贅沢なの?」
「贅沢!人として贅沢言わない!」
「人としてと言うか。女子として最低限な主張じゃないのかなって」
悲しそうな目で奥山さんを見るあかりちゃんを見て、奥山さんは自分が悪いのかと思い始めた。
「でもこの罪悪感は錯覚だ」
奥山さんはモテたい。