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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

何か違う童話&昔話シリーズ 落語もあるよ

かにさる合戦

作者: 結城藍人

さるかに合戦の蟹って、本当に善人なんでしょうか?

柿の種からしてみたら、実はとんでもないブラック社長なんじゃないでしょうか?

そんな視点から、さるかに合戦を再構成してみました。

「猿さん猿さん、ここ、ひどい職場ですよ! 確かに猿さんが()けないなら、きちんと蒔く人に私を譲って欲しいって頼みましたけど、この蟹って人は本当に酷い!! だって『早く芽を出せ』って命令するのはまだしも『出さないとハサミでちょん切る』って脅すんですよ! ブラック企業じゃないですか!?」


「ほー、それでこんなに早く大きくなったのかい、柿の種ちゃんは…いや、もう立派な柿の木だね。実もおいしそうじゃないか」


「そうなんですよ! 知ってますか『桃栗三年柿八年』って言葉を? 普通は私たち柿って実がなるまでは八年、つまり約三千日は必要なんですよ! それが三日ですよ、三日!! 一千倍の速度で成長させるとか、無茶すぎるでしょう! どこぞの飲み屋チェーンのブラック社長だって、そんな命令しませんよ!!」


「しょーがねーじゃん。おにぎりとか、俺が食えるモンと交換してくれそうなのが蟹のヤツだけだったんだからさ。で、今も実を取るって条件で半分は貰えることになってるんだ。悪ィけど、大人しく取られてくれや」


「え~!? 猿さんに実を取られたり食べられたりするのはいいけど、蟹に渡さないでくださいよ。実を食べられるのはしょうがないけど、そのあとで(私の子)たちも、また蒔かれて『早く芽を出せ』とか『出さないとちょん切る』とか脅されそうじゃないですか! そんなのゴメンですよ!!」


「あ~、やりそうだなあ、蟹のヤツだと」


「ねえ、この青い実だったら、おいしくないし、まだ種も発芽しない(子供になってない)状態なので、これを蟹に投げてくださいよ。実を取って半分貰えるって契約なら、青い方の半分を蟹に渡したって契約違反じゃないでしょう?」


「さすがに信用失うから、あんまやりたくないんだけどなあ。でもまあ、柿の木ちゃんが酷い目にあったのも俺のせいだってんだから、少しは協力してやるよ。全部とは言わないけど、最初の一個は青い実を投げてやるからさ…おーい、蟹ィ、これから投げるからしっかり受け取れよ~。それっ! …あ、あれ?」


「おー、さすが私の実、ナイスストライクですね!」


「ちょ、おま、勝手に弾道変えるんじゃねえよ! 蟹の頭直撃して、死んじゃったじゃないかよ!? これじゃ、俺、殺人犯になっちまうだろ!」


「不幸な事故ですよ、事・故!」


「俺、知らねえからなっ!?」


「あ、猿さん、ちょっと!? …逃げちゃった。お礼においしい実をいくつか持って行ってもらいたかったのにな」


◆ ◆ ◆


「あれ、雉さん、怖い顔して、どうかしたんですか?」


「やあ、柿の木さん、君も猿君には恩があったよね?」


「ええ、そうですけど」


「猿君が無残に殺されたんだ! 栗と蜂と馬糞と臼の奴らに!!」


「ええっ!?」


「蟹の件は事故だったのに、仇討ちと言い張って、卑怯な罠にかけて惨殺したんだ!! 許せるものか! 犬君や桃君とも協力して、絶対に仇を討ってやる!! 君も、協力してくれるよね?」


「え、ええ…」


 こうして、猿と蟹の不幸な行き違いによる仇討ち合戦は、本格的な全面戦争へと移行していったのだとさ。おしまい。

これまた、童話のCDを聞いていて思いついた話です。

ジャンルは「童話」にするにはブラックすぎるのと、ちょっと現代風のフレーズを入れてみたので「ローファンタジー」にしてみました(笑)。

「寿限無の真実」に引き続いて、最後のフレーズ以外は会話文で進めてみました。

少しでも楽しんでいただけましたなら幸いです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 確かに、柿からすれば、無理やりだった!w 昔話は見方を変えると、横暴な話にもなるのは、事実だけど、この視点はなかったですw あれですよ、桃太郎は、たぶん、成長して、侍になってるはず これ以…
[一言]  おにぎりという確実に食べられ価値のあるものを、育つかどうか不明な柿の種と交換しようと持ちかけるあたり、詐欺師な気配も漂っていますよね。「絶対儲かるから」とか、そういうものに対する警告にする…
[一言] 猿君っていうと、プロゴルファー猿の覆面男を思い出します。
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