表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/10

第七話

 休憩を充分にとれたおかげで走ることができるようにはなった。

 ドラム型ならまだ逃げられるだろう。だが、先ほどのようなロボットが現れたら今度は逃げきれない。

 それだけ与えられた物は深かった。精神的にも、肉体的にも。

 だからと言ってあそこで立ち止まるわけにも行かなかった。

 あそこで待っていても助けが来るとは限らない。

 なら進むしかなかった。


「……そう思っていたのだが」


 進んでいたのだが、予想外だった。

 何が違うかと言うと


「なんでロボットどもに合わないのだ⁉」


 この通路は一本道ではあった。

 わずかに歪曲していたりするのだが、分岐していなかったのだ。

 そのような通路なら相手にとって都合がいいはずだ。

 だというのに全く来ない。

 これほどの機会を逃がす方が間違っていると思えるほどだ。


「……やっぱりあの予想通りなのかね?」


 休憩しているときに感じた違和感。

 それから導き出した答え。

 京間としては信じたくない事ではあった。

 この施設には本来いるべき人達がいないということを……。

 事実だとしたら一体誰がここへ連れて来たのか全く分からなくなってしまう。


 目的も、


 手段も、


 アプリも、


 何も分からなくなってしまう。


「それでいいのかな」


 思わず呟いてしまう。

 心のどこかでは聞き出したいと思っていた。

 だが聞ける相手もいないのであれば聞くに聞けない。

 それならば


「……俺は一体なにを考えているんだ?」


 思わず自嘲気味に笑う。

 この施設を調べる(・・・)。

 ここの守っているロボットからの自衛手段。

 さらに先ほどの打撲。

 体調も万全でもなく完全に逃げ切れるとはいえない状態ではとても無理な話だった。

 ここから脱出が出来たとしてもまた来れるかといえばおそらく無理だろう。

 これほどの施設から逃げられたという認識されれば通報されるかもしれないと判断が下され破棄される可能性もある。

 もしここで引いてしまえばおそらく戻っては来れない。


「だとしても命あっての話だしな」


 仮に知ることができてもそこで終わりということにはならない。

 生きて戻ってこそのものだ。

 とりあえずこれだけのことでも充分だろう。

 気になることはあるのだがとりあえずそれで納得して進むことにする。



 どれだけ進んだかは分からない。

 だが、通路の先に扉が見えてきた。


「……出口なのか?」


 ここに来てとんでもない事にしか遭っていない。

 ドラム型に襲われ、背後から撃たれ

 広い通路に出たと思ってここの事を調べようとしたら巨大ロボットに追いかけられた。

 最後に追いつかれて腕を薙ぎ払いに当たり気を失ってしまってしまいどれだけの時間が経ったか分からなくなってしまった。

 このような事があれば疑い深くなってしまう。


「……」


 扉の前に立つ。

 扉の様子を観察してみる。

 装飾もなにも施されていないどこにでもありそうな扉だ。

 取っ手がないところを見ると自動ドアのようだ。

 その周りの様子も観察してみる。

 特に変わったところが見当たらない。

 そう、何も(・・)見当たらないのだ。

 これだけの施設だとしたらなければ不自然な事だ。


「ここにも何かあるのか」


 ため息交じりに呟く。

 あって当然施錠ロックしているであろう物が見当たらないのだ。

 まるでここには何かあると言っているようなものだ。

 誘っているとしか考えられない。


「……」


 仮に誘っているのだとしたらどういう事だろうか?

 京間を迎え入れるためだろうか。

 もしくはここまで逃げ切ったからなのか。

 それとも確実に捕まえるためなのだろうか。

 どれにしても興味を持ったからなのだろう。

 少なくともなにかしらの行動を観察していたということだ。

 それが誰なのかが分からない。

 人かそれとも……。

 考えても答えが出ない。

 通路を引き返すということは出来ない。

 ここまで一本道だったのだ。

 戻ってもあの巨大ロボットに阻まれてしまう。

 次は逃げきれそうにない。

 選べる道は一つしかなかった。


「ふぅ……」


 どう考えてもこの扉の先に何かがある。

 それが何かは全く予測が出来ない。

 少しでも気が軽くなるように深呼吸をする。

 混乱パニックにならないように出来る限りの心構えをして決心させる。


「よしっ‼」


 これで多少の事では驚くことはない。

 そう自分に言い聞かせるしかなかった。

 人は未知というだけでかなりの不安が出てしまうものだ。

 京間も不安や恐怖がないわけではない。

 だが無理にでも納得させて進むしかない。

 ここに留まる方が危険でしかないのだから。


 扉が開いて一歩踏み出す。

 その先は円形に広がった部屋だった。


「はぁ⁉」


 思わず声が出てしまう。

 確実に何かがあると思って入ったのだが、予想に反してなにもない。

 何一つ置いていないのだ。

 ドラム型のロボットも

 あの大型ロボットも

 コンテナも

 遠隔操作用の銃もなく狙われることや撃たれることもなかった。

本当に何事もなく、普通には入れてしまったのだ。

 これには京間も予想外だった。


「どうなっているんだ?」


 中をよく見てみる。

 周りの壁と同じ色をしていて気がつかなかったが同色の何かが中央に存在している。

 その周りにあるデスクも同じようにしてあって気がつきにくくされていた。

 だがそのデスクからは光が出ていた。

 もしかしたらあれがコントロールパネルなのかもしれない。


「まさかここがコントロールルームなのか?」


 だとしたらかなり不用心な気がする。

 普通、そんな重要な場所が占拠出来ないよう何重にも何かしらの仕掛けか鍵をするものだ。

 だがここにはそんなものはなかった。

 だとしたら偽物ブラフか、もしくはただの端末なのか。


「ともかく操作を受け付けるか確認だな。っとその前に……」


 デスクの近くにある円形の物がある。

 少し距離があるが京間の身長より大きいのが分かる。

 今の所何もないがあれには気を付けないといけない。

 何かを起こすにしても一番対応が遅れるのは近くにある物だ。

 デスクの確認をするためには近づかないといけない。

 だからこそデスクよりもこちらの方を先に調べることにする。

 調べたからと言って安心できるわけではないが少しでも心に余裕がなければやっていられないだろう。

 慎重に近づく。

 まだかと内心では焦っている。

 そこをなんとか自制してゆっくりと近づく。

 真後ろまで近づいてひとまず止まる。

 扉の前でいろいろと予想を立てていたがやはり緊張するものだ。

 特に得体の知れない物には……。

 深呼吸をしてから動くことにする。


「ふぅ……」


 落ち着いてから一気に前に回り込む!


「えっ⁉」


 それには女性が磔のように拘束されていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ