第六話
どれだけ意識を失っていたか分からないが目を覚ました。
「つっ!」
起き上がろうして背中に痛みが走る。
そういえばあのロボットにやられたのだっけ?
なんでこんなところにいるのだろう?
まだ意識を取り戻したばかりで思考がまとまらない。
あの飛んでくるコンテナに潰されるのかな?
「???。」
天井がはっきりと見えてきた。
そこで自分が見ていたのが天井だと気が付いた。
それをきっかけに意識がはっきりとする。
自分の置かれている現状。
だとしたら・・・!
「ぐっ!」
無理やり立とうとするが痛みで上手く立ち上がれない。
どれだけ意識を失っていたか分からないが来ていても、すでにこの場所についていてもおかしくはないだろう。
「・・・なるようになる、か。」
どのみち体力と先ほどの一撃で走れるような状態ではない。
それならここで休憩をしてから行く方がマシだろう。
壁にもたれるように座る。
「ふぅ・・・。」
理由はともかくこれでようやく一息つくことができる。
一度はこの場所がどこでどういったものかを考えてみたが手がかりが少なかった。
だがここまでにいくつかの事実が分かった。
どうせ動けないのならその間にまとめておいて損はないだろう。
「・・・その前に確認しておいた方がいいだろうな。」
起きたときから気になっていた。
なっていたのだが・・・。
確認するのを少し怖い。
あんなロボットに追いかけられたらトラウマになってもおかしくないだろうと思ったぐらいだ。
確認をしておかなければ今後またどこか別の通路で出会うかもしれない。
その時のためにもあの通路に戻って見なければならない。
痛む身体を無理やり動かしあの通路に向かう。
「・・・。」
あまり近づかない方が良いとは分かっているのだがそれでは様子を見れない。
恐怖で足が動かない、ということはないが重くなかなか進んでいないように感じる。
それでも一歩ずつ確実に近づく。
息を飲む。
「・・・!」
恐る恐る通路から顔を出して様子を見てみると・・・。
何もなかった。
「???」
そう、何もなかった。
あの巨大ロボットがいないのは別に何もおかしくはない。
この通路の前で待ち構えていても良いかも知れないがあれだけの戦力をたった1人のために一か所にとどめておく必要はない。
だから戻ったと判断したのだが・・・。
「・・・どういうことだ?」
あれだけ派手に暴れたのだ。
コンテナが散らかっていておかしくないはずだった。
なのに散らかっているはずのコンテナが全く見たらない。
どれだけの時間でかたずけたのか全く分からない。
ただ長い間意識を失っていたわけではないはずだ。
辺りを見回しても全く見られない。
ならかなりの時間がかかってもおかしくないはずなんだが・・・。
どうやって?
いくら考えても答えが見つからない。
降りれば何か分かるかも知れないが今の状態で降りてしまっては逃げられないだろう。
あのロボットがいつやってくるかも分からない。
なら少し奥の方に戻って休むほうがまだ安心できる。
戻ろうとしたときにあることに気が付く。
「なんで明るいんだ?」
この通路全体がまるで照らされているようだ。
電球や蛍光灯が全く見当たらないのに・・・。
天窓があるわけでもなければ鏡で反射しているわけでもない。
ならこの光はどこから?
当然の疑問。
壁に触れてみる。
金属に近い鉱物で出来ていると思っていた。
だが・・・。
「温かい。」
まるで壁が熱を発しているようだ。
これではまるで白熱球のように壁が光源で熱を持っているようだ。
そんな素材は聞いたことはない。
仮に存在していたとしてもこの施設全ての光源がこれならそのエネルギーは一体どこからどれだけの量で送られているのだろうか?
少なくともかなりの規模になるはずだ。
それはこの先にあるのだろうか?
そこを守っているのが先ほどの巨大ロボットではないだろうか?
仮にエネルギー源となる物を護っているのだとしたら命令されて動いているわけではない?
「どうなってんだ?ここは・・・。」
一息つくことができて周りを冷静に見えるようになったと思えば更なる疑問しか出てこなかった。
ともかくこの新たな疑問はひとまず置いておくとして、他の情報をまとめてみる。
今まで追いかけて来たロボットはドラム型と半分人型で大型の二種類。
ドラム型は複数の装備が存在していることから、状況に応じて換装が出来るであろうと考えられる。
大きな通路に出たところでドラム型は引き返して行った。
そこに大型のロボットが現れた。
その通路にはロボット用の部品が大量に積み込まれていた。
大型のロボットは専用の武装を持っていなかったところからおそらく無いのだろう。
そのかわりパワーはかなりの物である。
もう会いたくはないがかなりの脅威である。
通路はかなり広く、いくつも枝分かれがされているためほとんど迷宮である。
おかげで全く出口が分からない。
相手は施設がどうなろうとかまわないらしく容赦なく攻撃を仕掛けてくる。
現にコンテナを大型は飛ばしてきた。
こちらがコンテナを登ればあれも加速してきた。
まるで追っている相手が登ったら加速しろと元から命令されていたかのようだ。
そういえばドラム型も似たようなところがあった。
引き返した理由ももしかしたら行動を元からそう命令されていたから?
だとしたら・・・。
「命令している人間がいない?」
最初からそう入力されていたのであればその場、リアルタイムで操作する必要がなくなる。
射撃だってどこを狙ったらいいか決められていたのかもしれない。
冷や汗が流れる。
ここに連れられてきた方法や理由は分からないが、どうも逃げ出すわけにも行かないようだ。
もしそうならここにいるのは自動で動いている。
もし暴走してここから出てしまったらどうなることか。
「・・・はぁ。エネルギー源を切らないと戻れないな。」
やることが出来てしまい思わずため息を吐く。
出口も分からないのにそれを探さないといけなくなるとは・・・。
それもおそらく出口とは逆方向だろう。
外に出ても奥に行ける機会があればやっておくべきだろう。
先に出口が見つかれば逃げるが。
元々、この施設の構造が全く分からないことに変わりないのだから。
いろいろと考えていればそれなりの時間が経ったと思う。
「そろそろ行くか。」
立ち上がり通路の奥に向かって歩き出す。
休んだとはいえ走れる状態ではない。
もしロボットとあえば間違いなく逃げ切れないのだろう。
ここから先は会わない事を願いつつ進むしかなかった。
何事もなく奥に進む。
「・・・」
順調に進んでいる。
それが何かあると考えるべきだ。
それにこの通路は不自然だ。
ここに至るまで全く分岐がなかった。
一本道。
先ほどのコンテナの通路以外ではかなりの分岐が存在していた。
それがここに来て無いとなるとこの先に絶対に何かある。
出口、または重要施設か。
こういう場所にドラム型が来ないことを考えればおそらく出口だ。
重要施設ならばむしろ出てこなければおかしいと考えた。
勘があったようだ。
「・・・戻ったらとりあえず警察に連絡しておこう。」
そんなことを考えつつ歩く。
そうしている扉が見えてきた。
これでようやく帰ることができる。
この先はロボットがいない理由は必要ないからだ。
そう思った。
だから扉が開き中に踏み入ったときは全く思わなかった。
ロボットが近づかないようにされていた理由に・・・。
その時は全く気が付かなかったのだ。