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第五話

 狭い通路から飛び出す。


「出たあああぁぁぁ!」


 出口かも知れない。

 外から見たら気づかれないようにしているかもしれない。

 そう思いたかったのだが・・・。

 飛び出して気が付いた。

 ここはただ単に広くなっているだけだった。


「・・・そんな都合のいい事はないか。」


 落胆する気持ちは隠せなかった。


「って立ち止まる余裕はない!」


 走り出そうとしたときに気が付いたのだがさっきからしていた音が聞えなくなっていた。

 いや、正確には今も聞こえているのだが・・・。


「遠ざかっている?引き返しているのか?」


 ここで見逃すとは何を考えているのか?

 それともこの広い通路他の何かがあるのか?

 もしくは重大な物がこの通路に集中的に置いてあるのか?


「もしそうならそれを盾にするのも良いかも知れないな。」


 これだけのことをされたんだ。

 やり返さないと気がすまない。

 少し悪い顔になっていた。

 もし重大な物を貰っても問題ないだろう。


「ははは・・・。」

 どうするか考えていると自然と笑いがでていた。

 ともかく見つけないことには始まらない。

 あらためて周りをみる。

 この通路にはいろいろなコンテナが置いてあった。

 それも大量に・・・。


「この中から探さないといけないのかよ!」


 思わず頭を抱えてしまう。

 これだけの中から探すとなるとかなり時間がかかる。

 どれだけかかるか分からないがあのロボットもアームを変えるだけですぐにこの場所に戻ってくるだろう。

 もしかしたら探している最中に来るかもしれない。

 見つける前に来たら逃げるしかない。

 ロボットが先か、見つけるのが先か。

 この間に逃げるという選択肢もあるが・・・。

 逃げた先にロボットが会わないという保障もない。

 だったら探して見た方が何かあった時に役立つかもしれない。


「探し見るか。」


 そう決めるとコンテナの一つに近づいて開けてみる。


「なんだこれ。」


 中から出て来たのは良く分からない部品がぎっしりと入っていた。

 これだけの量の中から探さないと行けないのか。

 そう思うとため息が出て来た。


「はぁ。」


 ガサガサとかぎ分けて探す。

 どうも細かい部品が多い。

 本当にこの中に重要な物があるのか。

 コンテナはまだまだある。

 これ全てを確認をするだけの時間がない。

 どういった物か分からないが、少なくとも小さい部品の大きさではないはずだ。

 かぎ分けた中にそう行った物がなければ次へ行けば良い。

 そうすれば速く進む。

 そうと決まれば次に行く!

 二つ目のコンテナを開けようとしたときにあることに気が付いた。


「どうやってこれだけの大きさのコンテナを運び込んだのだ?」


 一つのコンテナは大体大人1人の大きさがある。

 そんな物を運び込んだとなればクレーンが必要になるだろう。

 天井を見上げてみるがレーンが見当たらない。

 となれば・・・。

 顔から血の気が引くのを感じる。


「・・・探している時間なんてなかった!さっさと逃げていれば良かった‼」


 絶叫しつつ急いでこの場から離れようと走り始めようと振り返ると・・・。

 目の前に大きな影現れた。


「ははは。言っているそばからかよ。」


 少し涙目で乾いた笑い声が出てしまう。

 この影の大きさだったらかなりの音が鳴っていただろう。

 その危険信号を見落としていたとは・・・。


「これはやばい・・・!!!」


 顔が真っ青になっていると自覚できる。

 この謎の施設に警備ロボット?が徘徊していた。

 クレーンが無い以上どうやってコンテナを運び入れたか?

 これをふまえた上で考えておけば運び入れたのはロボットであると気が付いたはずだ。

 問題なのはその大きさだ。

 この広い通路に合わせたであろう巨体だった。

 そして、


「なんで人間に近づけているんだ!」


 足はドラム型と同じ球体型なのだが、上半身が人骨のようなフレームに筋肉を思わせるチューブを纏っていた。

 当然、腕も存在している。

 まだ離れているがその巨体がここからでも十分見える。

 あれに捕まったら終わりだ!

 急いで入って来た通路に戻ろうとするが・・・。


 ドカァァァァン!!!!


 派手な音がしたので急いで見てみる。


「壊れてもいいのかよ!」


 絶叫するしかなかった。

 飛ばされてきたコンテナによって塞がれてしまった。

 本当に破壊してもかまわないとなると重要な物が存在するのか疑わしくなってしまう。


「ふざけた物しかねぇな!ここは!」


 人を殺してしまう装備をしたロボットしかない!

 ほぼ間違いなく必要な施設が無いだろう!

 ロボットとは逆の方向に必死に逃げた。



 追いかける方と逃げる方。

同じ条件だと思うが・・・。

先ほどから派手な音が後ろから聞こえてくる。

さらに・・・。


「適当に飛ばしてる物の方が最大の脅威だ!」


 先ほどから飛んでくるコンテナ。

 当たれば即死間違いなしの弾丸だ!


「うおおおぉぉぉぉ!」


 腕が薙ぎ払われる度に降って来る!


「あぶねぇっ!」


 自分めがけて飛ばされたものに冷や汗が流れる。

 コンテナとコンテナの間、細い道を通っていたのが幸いだった。

 上から降って来た物が置いてあった物の上に落ちて来た。

 派手な音が鳴っているが止まるわけにも行かない。


「くそっ‼」


 それにしてもこのコンテナの変な配置によって迷路になっている。

 進んでいるのか、戻っているのか、苛立ちがつのる。

 それならばと上に登ればと考えたのだが・・・。


「っ!!!!」


 先ほどから飛ばされた危険な物が降っているのを見て止める。

 さらに間隔そろえられていないため跳んで進むしかない。

 とどかない所は迂回しなければならない。たとえ迂回しても届かなければ一度降りなければならない。

 それでは追いつかれる上に、飛んでくるコンテナに狙われるリスクがある。

 かなり危険なことだ。

 こちらの位置が分かりにくい下を行く方がまだ安全のはず。

 幸いにも向こうも邪魔なコンテナによって思ったほど進めれていないようだ。

 それでも近づいている事には変わらない。


「この迷路の行き止まりはどこだ!」


 入って来た通路が使えない以上、別の道を探すしかなかった。

 逃げつつ探しているのだが・・・、


「くっ‼」


 さっきから壁際に近づけない!

 壁際に近づこうとするのだがさっきからそこが行き止まりと分かるようになっていた。

 まるでそこには無いと言っているようにも感じる。

 だとしたら存在する所といったら・・・。


「上しかない、か。」


 走りながら上を少し見上げる。

 未だに飛ばされてくるコンテナが通り過ぎる。

 下手に上に登ればあっという間に潰されるだろう。

 場所によってはもたついている時間もない。


「・・・。」


 あの中に身をさらすと考えることさえ嫌だった。

 覚悟がなかなか決めれずにいる。

 思わず下を見てみるとわずかに足が震えていることに気が付いた。

 いつからだったか分からないがおそらく始めからだろう。


 死に対する恐怖。


 ずっとこの場所で追いかけ始めてからまとわりついていたもの。

 逃げることに必死で気が付かなかったこと。

 今、自分は命の危険にさらされている。

 その事実を再認識してしまった。


「っ・・・!」


 思わず叫びかけた。

 助けを呼びたかった。

 だが、叫んだとしてもおそらくとどかないだろう。

 さっきから派手な音を出しても誰も来なかった。

 おそらく防音対策がされているのだろう。

 もう一つ理由がある。

 もし叫んでいたらパニックになっていただろう。

 そんなことになればもう動けなくなってしまう。

 あっという間に後ろのあれに殺されることは間違いなかった。

 だから耐えた。

 叫ぶのはあとにする。

 一度落ち着くために大きく深呼吸をする。

 今は何としても逃げきる。

 あの日常にもどる。


 朝早くに起こしに来る迷惑なユウ。


 いつも迷惑な作業を押し付けてくる響子。


 勘違いでいろいろとやってくれる七海。


 騒がしいクラスメイト達。


 あの騒がしく忙しいが楽しい日常。

 まだまだ楽しい事がありそうだ。

 だからまだ死ねない!

 それには・・・。


「やっぱり登らないと行けないよな・・・。」


 そんなことを考えながら走っていたら、上のほうに出口が見えた。

 この施設の出入り口ではないだろうが少なくともあのロボットは追いかけてこれない。

 ひとまずはそれだけで十分だ。

 頃合いをみはらかって上に登りあそこに入る。

 あの高さならコンテナに登らないとたどり着けない。

 それならここから登るのも近づいて登るのもたいして変わらない!。

 一度止まり深呼吸をして覚悟を決める!


「よしっ!」


 コンテナによじ登る!

 登った瞬間に派手な音が後方から響いてきた。


「っ!!!」


 思わず振り向いてしまう。

 そこにはあのロボットが跳んで障害物を越えていた。


「なっ!」


 急いで見つけた出口に向かう。

 さすがにこれは予想外だった。

 タイヤついているのが見えたのでてっきり跳べないだろうと思っていたのだがどうもちがったらしい。

 それに出来るのであれば使っていたと考えていた。

 いきなり使ってきた理由は分からないが急がないとこれはまずい!

 コンテナからコンテナに跳ぶがロボットの方がかなり速い。

 これではすぐにでも追いつかれてしまう!

 考えている間にすぐそこまで来ていた。

 あと1つ!もう少しなのに!

 おそらく、わずかな差である。

 これで終わりだ。

 そう思ったときに大きな音が聞えて来た。

 だが振り向く時間はない!

 立ち止まらず、前に進め!

 まだ捕まっていない!

 最後のコンテナにから出口に跳ぶ!


「くそっ!」


 あとわずかに届かない!

 もう一度!

 早く、コンテナに!

 コンテナに落ちるのが長く感じる。

 そんなときに影が覆いかぶさる!


「かはっ!」


 落ち始めたところで背中に衝撃が襲った!

 息が肺から強制的に出させられる!

 何が起きたのか分からなかった。

 だが、


「げほっ!」


 何度か転がって周りを見てみる。

 どうも先ほどの衝撃で飛ばされてなんとか出口に入れたようだ。


「はぁ、はぁ、はぁ、・・・。なんとか生きている、か。」


 どうも悪運は強いらしい。

 一時はどうなるかと思ったのだがなんとかなるもんだな。

 安心したら気が抜けたせいなのか、意識を失ってしまった。

 通路はまだまだ続いているが少しの休憩に入ったのだった。


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