斉彬と斉昭
ナリ&なり……あー、まぎらわしい!
ってことで、ここでは島津斉彬と水戸斉昭でいきます。
本日も将軍継嗣問題です。
アヤシイ小説を書くため、幕末についてイヤイヤ調べていたら、意外なことがわかりました。
いままで、『一橋派』のみなさんは仲良く一枚岩なのかと思っていたのですが、前回の春嶽公の件もあり、じつはそうでもなかったようです。
で、今回、一橋派不動のセンター・ナリさんとエロさんのエピソードをひとつ。
ネタ元は、茶色い粉の出る例のあの本(『阿部正弘事績』)。
嘉永六年九月 将軍になったばかりの家定公(正式な将軍宣下は十月ですが、パパ家慶は六月にアボン)に縁談が持ちあがりました。
そう、あの島津篤姫さんとの政略結婚話です。
安政三年、本格的に話がすすんだころ、エロさんはこの縁談に大ブーイングでした。
それを物語るエロさん ⇒ 春嶽の手紙が残されております。
「家定って、三十すぎてもちょっとオカシイから、近臣もなるべくいろんなことを報告しないようにしてるだろ?
そんなこんなで、本人無視して、三人目の奥さんを迎えようとしてるんだって?
しかも、相手は家康公の敵だった薩摩の家臣の娘?
なにソレ?
そんな女に、将軍実母や大奥の女たちに頭を下げさせるなんて国家的屈辱だろ!
徳川の天下もこんなヘタレ具合じゃ、もし朝廷がよその家に征夷大将軍を任命しても、徳川、文句はいえねーわ。ホント情けない!」(意訳)
春嶽さんは、この罵詈雑言メールをスルーしたのですが、どういうわけだか、コレがナリさんの耳に入ったもよう。
(いや、どう考えても、春嶽がチクったとしか……)
当然、むかつくナリさん。
でも、オトナなので、表面上はエロさんを立てていたようです。
とはいえ、
「あんなおバカなエロジジイとは大事な話はできないね。相手になんかしないもんね」
と、思っているのがにじみ出ていたと、茶色い本にしっかり書かれています。
(すいません。おバカなエロジジイとは言ってません。意訳しすぎました)
ナリさんが一橋慶喜を担いだのは、エロさんを尊敬してたからでも、お友だちだったからでもなさそう。
春嶽も、一度も会ったことのない少年を「賢いらしい」といううわさだけで熱烈にプッシュしてたし(やっぱ単純)。
一橋派のオッサンたちにとって、ヨシノブくんのキャラはあまり関係なかったの?
つまり、オットセイ孫の紀州侯・慶福が将軍になったら、いままでどおり譜代や溜詰ががっつりまわりを固める形がつづき、自分たち外様が幕政に参画できるチャンスはない。
なら、前例のない水戸出身の慶喜を将軍にして慣行をぶっ壊し、ついでにいろいろぶっ壊せ!
――てな感じだったのかも。
オバマさんより百五十年早く「YES、WE CAN! CHANGE!」してたわけね?