表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/26

元禄赤穂事件 2

こちらも転載ものです。

今回は幕府サイドのお話です。



大事なイベント直前に刃傷沙汰におよんだタクミさんですが、叔父ちゃんとちがって吉良上野介に致命傷をあたえることはできませんでした。


「不意討ち・老人・無抵抗」というバッチコイの好条件だったのにぃ。


日ごろから、「ブンガクなんて大キライ! 武芸ひとすじ! ミリオタ最高!」なんか言ってたわりには……ねぇ?


これはタクミさんの腕前がちょっと残念だったことにくわえ、傍にいたオッサンが阻止したことによるものでした。


そして、将軍・綱吉は、幕府の威信をかけたイベントを台なしにしかねなかったこの凶行にブチギレ。

ということで、浅野内匠頭切腹・赤穂藩改易と、城内での殺人を防いだ功労者――旗本・梶川与惣兵衛に五百石の加増が速攻で決まりました。


武功によるご加増など期待できない泰平の世に、なんとプラス五百石!

もとの家禄と合わせて、千二百石の大身に!


そんなこんなでウキウキな梶川さんは、さっそく各老中宅へ御礼まわりに。


ところが、


「やあやあ、梶川くん、今回はお手柄だったね~♪」と、褒めちぎられるかと思いきや。


「あ、そ、あいさつに来たの? はいはい」


てなもんで、どのお宅でもやけに冷たい対応。


春うらら桜満開気分♡が、一気に大寒の寒さに逆もどり。


中には、応接室のとこ(床の間のこと)にわざとらしく『曾我兄弟仇討之図』をかけている家まで。


ようするに、


「てかさー、なんであのとき止めちゃうの? 

 君も侍なら『武士の情け』的なシンパシーはないわけ?

 あそこまでいっちゃったんだから、最後までやらせてやりゃいいじゃん。 

 もうちょっと空気読めよ~。

 で、なに? 自分だけ加増されてウハウハ? なんか君にはガッカリだわー!」


みたいな無言のブーイングを、その後もあちこちから浴びせられた梶川さん。


「え? うそ? なんで? だってふつう止めるでしょ? 殿中じゃ刀抜いちゃダメなんだし。たとえば、なんかの拍子にポロっと抜けちゃっただけでも目附にガミガミ説教されるんだよ? 減封だってアリだよ? それを斬っちゃってるんだもん! ねえ、俺、悪くないよねーっ!?」


いくらカジちゃんがそう思っても、世間の風は冷たいまま。


そして、梶川さんは周囲の視線に耐えきれず、ほどなく辞職を余儀なくされたのでした……(涙)……。



余談ですが、知り合いにすんごくイヤーなやつがおりまし、会ってしばらくしたときに、


「あなたの家系って【ドン百姓】なんですって? アタクシのご先祖さまは、浅野内匠頭をはがい絞めにした侍なんですの。あなたとは全然身分がちがうのよ。世が世なら口もきけないくらいですわ、お~ほっほっほ!」

とか、ほざいておりました。


(たしかに、父の実家は御百姓だけど、それがどうしたーっ!)


で、あるとき、そのはがい絞め侍が『梶川与惣兵衛』という旗本だと知り、共通の知人に、


「Mさんの先祖って、梶川与惣兵衛って人なんでしょ?」と聞いたところ、


「え? その家来だって聞いてるけど?」


な、なんだとぉっ!?


あんだけ言っときながら、梶川……の家来ぃーっ!?


盛る、ってか、バリバリ詐称じゃねーかっ!


しかも、その主君だって、上は幕閣から下は町人にまで嫌われてた大逆風男だわ!


……と、ひそかに真っ黒な喜びに浸ったことは、ナイショでございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ