終末惑星アイ
「もうこの星には住めない」
あれからいくつ月が満ちた?
キミは月に。遠い月に。
いつか会う日まで。
星は捨てられた。
ボクたちは今も捨てられたまま。
月は生きていた。
キミは今も生きている?
この星の最後の船にキミは乗せられた。
「いつか迎えにくるから。それまで待っていて、“ ”」
キミの最後の会話が今も残ってる。
ボクたちは、ヒトじゃないから、置いていかれた。
ヒトじゃない“モノ”を乗せる場所なんてないって。
キミは泣いていた。
キミは来ない。
キミはボクを覚えてる?
ボクはキミを覚えてる。
月が百回満ちても、千回満ちても、キミは来ない。
「“ ”のこと、絶対忘れないから」
名前ももうない。
ボクたちは、番号で呼びあう。
みんな、星が捨てられたときに、名前を捨ててしまった。
ボクはまだ、キミの名前を覚えてる。
ボクの名前はもうないのに。
月からは誰も来ない。
キミも、誰も。
三千回は月が満ちただろうか。
みんな、動かなくなっていった。
ボクももう、動けない。
滲んだ視界に、キミが映った。
最期にキミに会えてよかった……
ボクは、最期にボクの名前を聞いた。