三話のようだ。
「(カキカキ)」
「あの…」
「(カキカキカキカキ)」
「あ、あの……」
「あん?あと五分で終わるから待て」
「は、はい……」
ん?
なにをしてるのかって?
陣とやらを書いている。
魔術を発動させるためのものらしいが、正直よく分からない。
しかし、このときに俺のどうでもいい得意なことが役に立つ。
俺は線を定規を使わずに真っ直ぐに書けるし、円もコンパス要らずに書ける。
いや、ほんと、どうでもいいな。
分かりにくい一発芸みたいだし…
「よし、終わったぞ!」
かれこれ六百枚は書いたはず…
あの後着替えて顔洗って朝飯食って頭の整理をして…
そして昼飯食って陣が必要なことを聞いて一個目を教えられながら書いて…
あとは永遠に書き続けていた。
なかなか、充実していたぜ…
「すいません。たぶんそんなにいりません…」
「…………………………………」
「えっと……てへ?」
持っていたボールペンで突き刺してやった。
「うわっ!!!何するんですか!?」
とはいってもあたらないんだが…
悪魔に物理攻撃は通用しない。
天使と精霊も同様である。
「いや、つい…」
「あなたはついで悪魔を刺すんですか!?」
「悪魔を刺すことは普通はない。つまり俺は刺してない」
「意味が分かりません!!刺したじゃないですか!!」
「でも刺さってないだろう?」
「いや、そうですけど…
はあ………
とりあえず、陣についての説明をしますね。
その陣は『全の陣』です」
「ぜんのじん?」
「はい。全の陣ではどの魔術でも同じように発動できます。
しかし、威力は期待できません。
そこで『攻の陣』を使います」
「こうのじん…」
「攻の陣では攻撃魔法しか使えませんが、威力は全の陣の二倍と云われています」
「二倍!?そんなに変わるものなのか!?」
「はい。続いて『守の陣』です。守の陣では補助魔法しか使えませんが…」
「全の陣の二倍?」
「いえ、三倍です」
「三倍だと!?」
「はい。補助魔法は弱いのでそのぐらいになってしまうのです。
それでは全の陣の戦いでの利点を説明しますね?
なんで全の陣があるのかというと、相手に分かりにくくするためです。
全の陣をだせば相手は次に術を使ってくることしか分かりません。
主に最初に使うべきですね」
なるほど…
相手はこっちが何をしてくるか分からないから、様子を見てくることになる。
でも…
「相手が馬鹿だったら意味なくね?」
「いや、まあ…
そうですね……はあ…」
「ため息一回につき天罰を百回くらうと云うぞ?」
「いいません!!!」
「ああ、正確には幸せが一つ逃げる、だな」
「はあ…」
「俺的には幸せが逃げたからため息をつくと思うんだけどな」
「本当にそんな気がしますね。
とりあえずその三つ以外にも陣があります。」
「へえ」
「火の陣、水の陣など、属性の陣があります。
あなたの場合は使える魔術属性は衝撃、水、闇、地、風、雷の六つなので、
その陣を作りましょうか」
「・・・ん?」
「はい?」
「今のははじめて聞いたぞ?」
「あ…
説明してませんでしたね。
魔術には属性があります。
その使える属性は人によって決まっています。
あなたは衝撃、水です。
そして私と契約したことにより私が使えた闇、地、風、雷が使えるようになりました」
「なんか主人公性に欠けるな…
衝撃はなんか格好いいけど、名前だけ出てきて本編に登場しなさそうだしな」
「なんでそんなにネガティブなんですか…
と、いうよりも主人公は自分だとでも思ってるんふぇすか?」
噛んだ。
「…思ってるんですか?」
「言い直したな。
まあ、主人公とは思ってないな。
俺の名前も山崎 康介とか普通すぎるし…」
「名前は関係ないのでは?」
「俺はあると思っている。
まあ、中二な名前よりはいいさ…」
「たとえば?」
「龍神 信仰という俺の親友とか、
光宮 聖という俺の悪友とかかな?」
「す、すごいですね…」
「そんな名前は正直恥ずかしいぜ…」
本人たちは気に入ってるんだけどな…
まあ、そういう時期なんだろ。
俺も小六のときになったものだ…
格好いいからという理由で英語を普通に話せるようになったな…
中学になって英語のテストが楽だった。
「まあ、とりあえず発動させてみましょうか」
「え?なんかヤダ」
「………」