第二話 親友
「ねえ、瑤子、今週の金曜日付き合ってよ、お願い。」
「ごめん、その日はだめなのよ。」
「あーん、残念だな。」
「ごめんね、弘美。」
いくら親友の頼みでも、その日はどうしてもはずせなかった。残念がる弘美に瑤子が言った。
「じゃ、こういうのはどう?あなたたち二人と、彼とで出かけたら?」
「え?矢崎さんひとりに付き合ってもらうっていうこと?」
「ええ、そうよ。」
しばらく考えてから、弘美が答えた。
「それもいいかもね。」
弘美は瑤子とはずいぶん性格が違った。付き合う男性の数も、半端じゃなかった。恋に破れると、必ず瑤子に泣きついて、次の日はけろっとしてしまう、明るい、というか、さっぱりとした性格の持ち主だ。それに彼女は、別れた男ともまた普通に友達のようになれる。瑤子には考えられなかった。でも、お互いに違う性格だから、5年もの間、親友でいられたのかもしれない。
弘美はまた、新しい彼に目をつけて、デートに誘っていた。そこに、瑤子と矢崎を呼んで、4人で一緒に飲みに行こうという計画だった。
でもその日はあいにく、瑤子は大好きなミュージシャンのコンサートにひとり出かけることになっていた。あの有名なギタリストのラリー・カールトンだ。もう1ヶ月も前からチケットを予約していたのだ。
「なんだ、瑤子は行けないのか・・」
「ええ、そうなのよ、ごめんね矢崎さん。」
早速次の日矢崎が瑤子に話しかけてきた。
「でも弘美のために行ってあげてね、お願いだから。」
「あんまり気が進まないけど、ま、仕方ないかな。」
「ひろみの恋が成功するように、うまくやってね!」
「どうなることやら。まあ、うまくいきそうになったら、俺はお先にさっさと帰ってくるさ、ははは。」
「そうね、それがいいわね。」
結局、矢崎と弘美、そして弘美のお目当ての彼と3人で、出かけることになった。そしてそれから瑤子は、もうそのことに関して、別に何も考えることもなかった。そう、あの出来事が起こるまでは。