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ふれんど♪  作者: 裕樹
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プロローグ

まず目に留めてくださってありがとうございます。すこし長くなりますがお願いします。誤字脱字も気をつけてはいますが、申し訳ありませんが注意してお読みください。

プロローグ


 僕の名前は新橋優介(しんばしゆうすけ)。高校二年生だ。そして目の前にあるのは校舎。ほとんど汚れていない門に、綺麗な自然、良い環境。

 僕がこれから生活するアリエルト学園は3年前に創立されたばかりの高校だった。生徒数は全学年で300人くらい。つまりは一つの学年で100人くらいと言うことになる。

 そして気になることがある。一つの学年100人いる中で転校生、つまり他の学校からこのアリエルト学園に転入したものが3分の1、つまり30人程度はいると言うことなのだ。さらにこの高校は男女比が圧倒的に女子が多い。元女子高とか言うわけでもないのに一体どうしてだろう。

 おまけの全寮制制度もあり。基本は寮生活、もちろん放課後は帰宅できるものは帰宅してもいいがほとんどの者は寮で寝泊りをしている。

 休日ももちろん帰宅可能だが、それ以上に寮生活を好んでいる生徒が多いようで、家との連絡は電話でしてる生徒が多いらしい。


 という話も全部先輩の受け売りなのだが。

 この学校には仲の良かった先輩が一人いる。言えば僕も転入した身だから知っているのは先輩だけだ。先輩はどこから僕の転入の噂をかぎつけたのか知らないけど転入が決まったと同時に携帯に電話がかかって来た。

 不思議な人だった。


 僕はクラスの扉を開ける。


 「うっ」


 僕が最初に入った時、何か微妙な違和感を感じた。しかしそれは感じたといだけであって、その違和感が何なのかは僕にはよくわからなかった。


 「よお、久しぶりだな。会うのは年々振りになるだろうか」


 ベランダの方から何か声が・・・いやこの声は聞きなれているぞ。この声は


 「幸平・・・さん」

 「おいおい、いくら何でもしょっぱなから呼び捨てか?まぁいいが」

 この人は戸塚幸平(とつかこうへい)。僕の仲良しの先輩さんだ。近くに住んでいるということもある。

 「ん?なんかこの教室へんじゃないか」

 幸平が小声で言った。聞き取れない距離じゃなかったから僕も伝える。

 「そうなんだよ。僕もこの教室に入った時に何か違和感を覚えたんだ」

 「うーん」

 幸平が手を顎にそえて考えている。

 「そうか、この教室は覇気が無いんだ。元気がない」

 「たしかに、そうかもね」

 クラス内を見回してみるが、友達と喋っている人はクラスの半分にも満たない数で、さらに笑って友達と仲良く喋っている姿は確認できなかった。

 また半数以上は下を俯いていたり、本を読んでいたりといかにも暗い塊だった。

 「でも当たり前じゃないこのくらい?だってクラス替えの後の教室なんてこんなもんだよ」

 たしかにクラス替えの後の教室はこんな感じだったと中学時代の記憶を掘り返す・・・ん?よく思い出せない?なんでだろう。まぁいいや。

 そして幸平の顔を見ると、その顔は微妙に心配そうな顔をしていた。

 「どうしたの?」

 思わず僕は声をかけた。

 「いや、優介は知らないのか?この学校はクラス替えなんて無いんだぜ」

 「えっ、じゃあ転入してきた僕を除いてはみんな一年前も同じだったってこと?」

 「ああそのはずだ」

 僕は再びクラスを見回した。暗そうな人が半数以上。笑い声も笑顔もないクラス。一体去年に何があったんだろう。

 「しかもだ。お前が転入する前、多分このクラスだったはずだ。このクラスの一人が自殺した。そしてお前はその穴埋めのように転入してきた。俺はそれがすこし心配でたまらねえよ」

 「えっ、そ、そんなこと」

 一度も聞いたことが無い。ただ急に転校を命じられて、そして僕はこの高校へ来た。だけどそんな自殺の話なんて聞いたことも無い。

 「知らなかったよ」

 続けて僕はそう言った。少し間が空いてしまったけど。

 「この騒ぎは創設されてまもなくだし、あまり大事にはされたくないらしくマスコミは前面拒否状態らしい」

 「あっ!」

 「ん?」


 僕は耳を澄ましてみた。

 声が聞こえない。

 普通だったら馬鹿みたいに暴れる奴がどのクラスにも最低一人はいるはずだ。

 だけど廊下からはそんな元気な声は聞こえてこない。むしろ静まり返っている。女生徒が多いからかもしれないけどさすがにこれは以上だった。


 「もしかして幸平のクラスもこんな感じなの」

 「・・・ああ」

 すこしためらっているような返事をする。

 「だがな、俺のクラスだけじゃない。全学年こんな感じのクラスだ」

 僕は最初耳を伺った。そんなバカな・・・で済ませるほど状況は冗談に追いついてなかった。今は休み時間。しかし何も聞こえない沈黙。いつの間にかおしゃべりをしていた生徒は自分の席へついている。

 そして僕たちの会話しか聞こえてこない暗闇。

 この学校はひっそりと存在を消しているかのようにただそびえたっていた」


 「どういうことなの?」

 僕は幸平に聞く。

 「そんなんわかんねぇよ。俺だっていろいろと聞こうとしたんだが誰も喋ってはくれねぇんだ。それに喋るのを拒否っているか怖がっている奴らもいる」

 「そう、なんだ」

 僕は返答に困った。これからそんな生活が始まるんだと思うと嫌気が差してきた。

 「おっともう行くぜ」

 時計をみればチャイムまでもう時間はない。幸平はベランダに縛り付けてあるロープを上って自分の教室へ戻っていたった。

 なにしてんだよと思いながら。


 幸平が去った後、僕はやけにベランダに立てられてる棒、自殺防止用の設備が高いと感じだ。やはり自殺の話は本当らしい。


 朝のHR。担任が出席を取るが、呼ばれている生徒は聞こえるか聞こえないくらいかの音量で返事をしている。

 というか担任からして元気が無さ過ぎる。一体なんでそんな悲しそうに出席を取っているのか意味がわからない。

 そして転入した僕の自己紹介を10秒で済ましてHRは終わった。


 ありえない。いや実際にありえてしまっているんだからそんなこと思ってしまってはいけないのだろう。机の上には僕以外の全員は次の授業の用意をしてある。

 トイレか水道など行っている生徒を除いてほとんどの生徒は本を読む、俯いている、予習しているのどれかだった。

 相変わらず笑顔は見れない。


 「はぁ~」


 僕はため息をついた。

 こんなムードなら自殺もマジありえるぞ。


 「ちょっとあなた」


 はじめてクラスで声が聞こえた。

 他の生徒は喋った人のことを見て、また自分の作業に戻っていく。


 「僕?」


 目の前には一人の女の子が立っていた。

 見事なツインテール美少女だった。クリーム色の髪の毛に少し大きな目、そして小さい鼻に小さい口。どっからどう見ても美少女だった。

 そんな女の子から転入早々話しかけられるなんて、喧嘩を売られてもうれしいくらいだ。実際何か喧嘩を売りつけているような喋り方だったしね。

 だけど、状況が状況だけに素直に喜べなかった。


 「そうよ」


 やっぱり元気があんまりない。他の子よりは大分ましだけど。


 「あなたさっき喋っていた人は仲がいいの?」

 さっきの・・・幸平のことだろう。

 「うん。昔からの友達でね先輩でもあるよ」

 「そう・・・」

 その女の子は暗い顔をして俯く。なにか考え事をしているような角度で。

 「できるだけこの教室で話さないほうがいいわ。出来るなら廊下とかで喋ったほうがいい」

 「なんで?」

 僕はストレートに聞いた。

 そういえば昔友達にもお前はある意味積極過ぎて困る。それじゃ女の子がかわいそうだぜとか言われた記憶がある。

 「なんでって?そんなのこのクラスの状況をみればわかるでしょ?」

 「みんな自殺の件でこうなったの?」

 そうだとしたら、その人は全校生徒から慕われていたわけになるな。そんなことはありえないと思った。

 「違うわ」

 予想通りの答え。そうでなくては困るけどね。

 「じゃあなんでみんな暗い?」

 「そんなの・・・知るわけないじゃない」

 「あ、ちょっと」

 そういい残すと女の子は自分の席に戻って予習をし始めた。見事に逃げられた形となった。


 一時間目は数学だ。

 「はぁ?」

 と声が出そうになった。

 なんと数学の時間、先生からの指名はいっさいなく先生が教科書の問を言う。みんなは無言でそれを解く。そして答え合わせの繰り返しだった。もちろん前には説明もするが僕たちはただ単に黒板に書かれたものを書き写すだけの作業だ。

 宿題も無い。指名されない。たしかにラッキーなことではあるのだが、おかしすぎる日常だった。


 またロープで幸平が降りてくる。

 「ちょっと来て」

 僕は幸平を廊下へ呼んだ。

 「ん?なんだ?トイレか?」

 「違うよ。なんか教室では話せる雰囲気ではないから」

 「だよな」

 気づいてたら朝の時もそうしてほしかった。

 「どうしたの?」

 「いや、暇だから優介と話そうかと思って」

 「幸平友達いないの?」

 「あんなんで出来るかよ。それにお前だっていねえだろ?」

 それは反論できない。たしかに僕もこのクラスで友達はいない。転入してきたばっかりだからと言えばそれは正しい理由にはなるが、僕はこれから先も友達が出来ないのではないかと思ったから言い訳は言わないことにした。

 しかし幸平はこの雰囲気に2年と耐えてきたのだろうか?そう考えると鋼の精神の持ち主かもしれない。


 くだらない話をして休み時間を終えた。


 「ねえ?ちょっといい?」


 僕はさっきの女の子に声をかけていた。いろいろと聞きたいこともあったし、何より僕がこのクラスで初めて会話した人でもある。友達というまではまだ果てしない道のりがありそうだが、少なくとも喋れないと言う壁こそは脱したように思えている。

 少女はめんどくさそうに嫌そうな顔をしながら。


 「廊下へ来て」


 そう一言残して、先に廊下へ歩いて行ってしまった。


 さっき、嫌そうなめんどくさそうな顔の中に一瞬だけ、驚いたって言うかなんていうか、とりあえず別の表情を僕は感じ取った。

 気のせいだったかもしれない。


 「で?何の用かしら」

 「あぁ、悪いね。ちょっと自殺してしまった子のことについて知りたいんだけど。何でもいいんだ」


 僕がこの学校に転入した理由はわからない。しかしこのクラスで一人の生徒が自殺してその穴埋めのようにして僕が転入してきた。これは何かあるに違いない。


 「私だって何も知らないのよ。でも・・・・・・・」


 長い沈黙。僕は次の言葉が出るまで待つつもりだったが、目の前の彼女は話そうとはしない。仕方なくこちらから聞いてみた。


 「でも?」


 彼女は俯き始めた顔を再び戻して。


 「でも、あの子は死んではいけない子だったの。あの子にはこのクラスにとても仲の良い子がいた、あそこの永森(ながもり)さん」


 指をさしているので僕もその方向を見る。気づけばその子は僕の隣の席だった。いつも俯いていて何もしてない一際暗い少女だった。


 「永森さんも暗い子じゃなかった。仲良く二人でおしゃべりしてて、それにつれてクラスの雰囲気も明るくなっていった。そんな時に自殺事件が起きたの。もちろん永森さんは相当のショックを受けて今あんな状態。それにまたつられるようにしてクラスの雰囲気は暗くなっていった。私が言えるのはこれくらい」

 「ありがとう」

 「あなたもあまり首を突っ込まないほうがいいわよ」


 それだけを言うと彼女は自分の席へと戻っていってしまった。

 名前を聞くのを忘れてしまった。


                      *


 元気を取り始めた矢先に自殺した女の子。それにつられるようにして暗くなっていったクラス状況。この高校の教師も明るい先生はいない。ギャグやダジャレを言う先生なんてどの学校にも一人くらいいていいもんだ。

 それがこの高校はない。誰一人として。言えば幸平は笑ったり出来る友達だ。だけどこの高校は異常に過ぎる。

 誰かがこの学校は幸せになってはけないと、幸せにさせないように仕向けているかのように感じられる。

 この学校の行事はどうなっているんだろう?


 一日の学校生活が終わり寮生活のスタートとなった。部屋は一人部屋で相部屋も可能なのだが誰もそうしたがらない。

 ということで先生に了承だけ貰って僕と幸平は相部屋にしてもらった。学年が違う相部屋なんてなかなかないし了承を貰うだけでも一苦労するかと思ったが。元気の無い寮長はそれを簡単に認めてくれた。


 「つまんねぇよなぁ」

 幸平が呟いた。

 僕だってつまらない。

 こんなの青春じゃない。

 みんな損しているはずなんだ。

 僕からすれば半ハーレム状態のクラスじゃないか。

 みんな損している。

 何とか友達になりたい。

 この学校にはどんな秘密があるのだろうか?


 やっぱり僕と一番近いのは、今日もはなした女の子だ。次に教えてもらった永森さん。だけど永森さんは自殺事件のことでショックを受けているから軽い気持ちでそのことを喋ったら大変なことになるだろう。やっぱりまずはあの人からだ。


 「ねえ?幸平はクラスで喋れる人いるの?」

 「入学した時は喋ってたけど、今はみんな心を閉ざしていて喋れる人はいねえよ」

 「そっか・・・」

 「ねえ幸平。この学校、学年末に体育祭があるよね。しかも全学年対抗の」

 「あぁ、3学期にやるのは異常だよな。いろいろと忙しい時期なのに」

 「僕、目標を決めたよ。その体育祭でみんな一致団結して元気いっぱいで僕たちのクラスが優勝するって目標を」

 幸平はぽかんとしていた。そして一言。

 「そうか、頑張れ。なんか手伝えることがあったら手伝うから何でも言ってくれ」

 「うんありがとう」



 始まる。これから波乱の毎日が。


 目標は一つ。

 一致団結体育祭優勝!

 

 

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