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自家製。 其の弐

「かなめちゃん、おいで?」

 始まりはその優しい声と共に。

「…わかった」

 恥ずかしそうに、でも期待に満ちた声を発するのはかなめ。顔も少々赤い。

「そんなにうずうずしてたら、やめちゃおっかな」

「ま、待って…まだ、心の準備が……」

「いらないでしょうそんなの。ただ膝枕するだけなのに心の準備とかいる?」

「こっちには大事なんだよ…!」

 絞り出すような声を出しながら、かなめは鞠絵の膝に頭を乗せる。

 後頭部に伝わる、むにっとする太ももの感触と、ふんわりと広がるマシュマロの匂い。

 なんとなく、彼女とぴったりな匂いだな。かなめはそう思いながら目を閉じた。

「準備は終わったの?それともまだ?」

「終わった」

「そっかぁ」

 今から始まるのは、ただただ恥ずかしい甘やかし。こうしているところを見られるときっと、誰でも幻滅してしまうんだろう。

 でも仕方ないのだ。

 鞠絵が先になんでも言うこと聞いてくれるって言ったから、つい自制心が壊れたんだから。

 あの顔で、あの声で、なんでもって言うのなら、人である限り、誰でもこうして甘えたくなるだろう。

「じゃあ始まるよ?」

「っ…」

 壊れやすいものに触れるような、優しくて消極的なタッチ。鞠絵の手がかなめの頭を撫でる。

「すりすり」

 その手は、擦り付けるようで。

「なでなで」

 撫で下ろすようで。

「あぅ…♡」

 かなめは蕩け落ちてしまう。

「気持ちいいの?かなめちゃん」

「うん……すき」

「好き嫌いは聞いてないけど、まぁありがとう」

 耳をくすぐる鞠絵の、少し低めの声。

 広く、太く。

「ふふ…可愛い顔になったね」

 鼓膜を叩く心地よい音。

「はぁ…っ♡」

「変な声。そんなに好きなの?」

「だいすき…♡」

「ありがとう。私も好きだよ」

「うへへ…」

 とんとんと、鼓膜をノックする度にかなめは頭のネジが外れていく。

「好き好き。かなめちゃんが好き」

「かなめも…好き♡」



 ◆


 ♡キショくない?

 ♢流石にやばすぎ。

 ♤前にしっかりレコーディングに参加しなかった罰なんだから。きちんと、台本通りにやるのよ!

 ♡ねね、かなめちゃん。

 ♢なに。

 ♡やってみる?

 ♧結構乗り気……もしかして?

 ♡ゆうきも混ざる?

 ♧結構ですよ。

 ♡ふふ、かなめはやろうね。

 ♢なんで…?

 ♡とろーんとさせてあげるよ。こんな下手くそな台本通りの台詞を言わせてあげるよ。

 ♤何が下手くそだ!わたしが一生懸命に考えて作ったのに!

 ♧一生懸命でこれ……?

 ♤ま、まだ終わりじゃないもん!今はちょっと立ち止まっただけで、すぐに書けるもん。

 ♡短いの気にしてたんだ。

 ♤別に?気にしてないけど?どうすればもっとらぶらぶあまあまにさせるか悩んだだけだし。

 ♢帰るわ。

 ♡あら、ばいばい。また明日ねー。

 ♢ん。

 ♡明日早速やろうね。

 ♢やらないし。

 ♡ほんとー?むにっとする太ももの感触を後頭部で感じられる唯一のチャンスなのに。

 ♧うわぁ…言葉にしてみるともっと……いやだな。

 ♡そうだね。

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