ボイスドラマ 壱
ぽんぽんと頭の中で飛び出るのが案外楽しかったでした。
「ボイスドラマを作ろう!」
♤やべっ、ミスった。
♢開始早々なにするの。
♤ごめんごめん。もっかい行くね?
「ボイスドラマとはなにか!」
♡勢い凄いねー。
♤ちょっと録音中だから変な事言わないの!
♧確かに台本とは違いますね。ここではもうちょっと、一人で噛み締める感じなのに。
♤む……そうだけど。わかってるもん。いいよ録り直せばいいんでしょ?
「ボイスドラマとは、なにか…?」
………。
♡続かないの?
♤え、続く?これでいい?
♧まぁこれはこれで普通の愛莉さんみたいな感じがしますね。こっちがいいかも。
♢……あ、あ、次やらんの?
♡かなめちゃん緊張してる?
♢してるしてる。だから早く終わらせて。
♤ぁー、ごめん。続くね?
「声だけのドラマ、声だけの演技。なら、別に衣装とかメイクとか――」
♧ちょっとちょっと、台本通りにしてくださいよ。違い過ぎでしょ今のは。声だけの演技じゃなくって、「声だけの劇の事」なの。
♡今のいいねー。なんか哲学がありそう。
♧ほんと?ありがとう。
♡いっそ、ゆうきちゃんがやる?
♧えー…?でも…
♢いつやるの。早く終わらせて……
♤詳しいのに突っ込まないの!勢いでいいんだからここは。また首を突っ込むと次のボイスドラマではその人を主役にするからね?!
♡すんごい脅し。
「こほん……………最近、TRPGを…楽しんでいたら演技が上手くなった。リスナーもみんなも『上手っ!』言ってくれて…」
♡ぼろぼろじゃね?途中に飛ばしたのもあるし。
♤言ったなぁ!次のボイスドラマの主役は鞠絵なんだからね?!次はめちゃくちゃ恥ずかしめの、恋物語にしてやるからねっ!!
♡えー……理不尽…
♤みんなお黙り!続くからぁ!
「……………あ。なに、してんの」
♡かちかちだねー。
♢ぶっちゃけ無理……恥ずかしいし。
♧まぁまぁ、じゃあ変わる?
♢…うん。
♡だめ!わたしが直々に書いたのだから、変わるのならわたしに許可をとりなさい!
♡えーめんどー。
「演技よ!劇、ドラマ!偽物の心を本物のそれに近くして客に伝える事!そんな軽い気持ちで挑んでいいわけではないの!」
♡変な台詞ー。
「えっと……、それが?」
………。
♧次かなめちゃんだよ?
♢あ。
「…ま、それより…退いてくんない?お腹すいたけど」
「むぅ、無視したな?!わたしの心を台無しにしたなぁ?さてはあなた、わたしが嫌いなのね?」
「急にどうしたの本当…」
「あいたっ!」
♡もっと痛そうなのがよくない?殴られたんだし。頭ぺちぺちされたんでしょ?
♧まぁ、確かにそうかもですよ。
「…あいたっ?」
♡なんか違う。ねね愛莉、覚悟はいい?
♤覚悟?なんの――
「痛ったぁ?!!!」
♡あんたが騒ぐのが悪いのよ。こっちは昨日から何も食べなかったせいで腹ぺこでイライラしてるっちゅうに。あぁ?なんだその顔。やんのかぁ?
♢それ、こっちの台詞…
♡代わりにやってみた。へへ、ごめんなさい。
♧可愛く笑って誤魔化せると思わないでください。
♤うぅぅ……痛いよぉ…
♡まぁまぁ。一旦休憩にしよ?お腹空いたー。
◆
「ボイスドラマを作ろう…!」
♡元気ないね。
♤なんか、食べ過ぎて気持ち悪い…
「とつぜーん。なにー?急に」
♢適当過ぎない?
♡こんぐらいがいいんじゃない?
「やりたくなっちゃって」
「ほぇー」
♧愛莉さんは気に入ったみたい。
♢そうなのか…?
「演技って面白くない?そういえば鞠絵、昔は演劇部だったよね。どうどう?やらない?」
「演劇部ではあったけど。私演技はやってないよ。やったのは服と、たまに台本?」
♡でもさ、どうして私が演劇部で裏方だって分かったの?文化祭で舞台にたった時もあるのに。
♤んー…お姉ちゃんの勘かな?
♡ストーカー?
「いいじゃないそれくらいで。あの時出来なかった夢を今こそ叶えるの!どうどう?興味が湧いたんでしょう?演劇やりたくて仕方がないでしょう?!」
♢無視した。
「ぜんぜん」
♧今の可愛かったー。
「なぁんで」
♡そんな顔しても。愛莉のは可愛くなかったみたい。
♢あんたのはちょっとキショい。
♤次はかなめと鞠絵のラブラブなんだからね?!!覚悟してなさいよ!
♡あらぁ。かなめちゃん、頑張ろうね。
♢……うん。
♧二人ともなんか乗り気。
「私、演技が嫌で服作ったの」
♧てか演技してる感じがしませんね。
「じゃあ演劇部入る理由なくね?」
「友達に誘われたから」
♧普通に話してる感じ。
「そうだったんだ………」
♢ゆうき、あまりぶつぶつ話すな。うるさいから。
♧えぇー。
「興味、ないんだぁ」
♡真似された。
♢だからキショいって。
♤もぉー!!!可愛いって一言がそんなに難しいの?わたしも可愛がられたいのよ!
♧年下に可愛がられたいんですか。
♡そういう趣味?
♤違うの!そもそも女の子なら誰でも可愛いって――
「まぁ、なにするの?ボイスドラマって」
♡次どうぞー。
「……気になるの?知りたいの?一緒にやりたい?」
「知りたい。やるのは、また今度。考えとく」
「ふふふふ。いいぞいいぞ。最初はみんなそうやって始まるんだから…」
「やっぱ知らなくても」
♤なんか、疲れてきた。これやる意味ある?
♡じゃあ解散?
「うわぁああ!待って待って!話すね?話すよ?聞いてね?お姉ちゃん、今とても話したい気分!」
♧台詞か台詞じゃないのか。
♢現実味がする。
「ボイスドラマって言うのはね、その言葉通りボイスのドラマの事。声の演技。画像がないアニメって言ったら伝わるかな…?」
「声優さんのみ?」
「そうそう!天才だねー。よしよし」
「んっ」
♡撫でないで。
♤うふふ。
「わたしがやりたいのは、その画像のないアニメなの。鞠絵も一緒にTRPGやってたらわかるでしょ?素人でもそこそこ楽しくしてたじゃん演技。あれをやろうとしてね」
「シナリオ通りの?」
「そうそう。台本通りの」
♧今更なんだけど、ボイスドラマなのにどうして台本には動きが書かれてるの?
♢合わせて動けって事かな。
♤想像を手伝うの。
「えー、絶対ない方がよくない?」
♤いやいや、あった方がいいって。
♡これ台詞だよ。
♤あっ。
「やってるわたし達は面白くても、聞く側からしたらむしろ台本がある方が楽しいの」
「ふーん。配信者だね」
「まね。長年やってたんだから」
「でも愛莉、今更ボイスドラマにする必要はないんじゃないの?顔出ししてるし。演技もちょっと前やってたし」
「演技をやってたからこそ、ボイスドラマをやるのよ。わたし器用貧乏がモチーフなんだから」
♢書かれてる通り、器用貧乏って悪口じゃない?
♤そうだね。
♡じゃあなんで書いたの?
♤ドジなところを強調したかった。
♧えぇ………
♡ドン引きだな。
「だからだから、一緒にやろ?鞠絵は声がいいからさ、まだ顔出しもしてないし、リスナーさんもみんなドキドキすると思うよ?」
「えー…私が?」
♢そろそろ疲れた…いつ終わるの?
♧後ちょっとだよ。
「そうそう。わたしはもう顔出ししてるから、声と顔が何となく結ばれちゃったの。でもあなたは違う。顔がないから、どんな顔も使える」
「でも顔使わなくない?」
「それはそうだね」
「そもそもなに作るの?」
「まだ考え中」
「じゃあ決めたら言って」
「え、ちょっと?え待って行くの?ねぇどこ行くのー。ぇ…無視……?」
「…作ってやるよ、ボイスドラマ」
♡終わったー!!!!!!
♤うるさいっ!
♧びっくりした…
♢どうしたの急に……?
♡疲れてたからね。トイレ行ってくるー。




