力の披露
アルグレンでの館で一晩を過ごし、翌日。
私は練兵場の中心部に立っていた。
昨日買ってもらった服装のままで。
「これからディフェルナ皇女の加護を実演させてもらう!皆のもの、しっかりとその目で観るのだぞ!」
私の前に立つリアス様は周囲で待機している兵士たちに、大きな声で語りかける。
私も周囲の景色を見てみると、心配そうにしているアシュ様とサリナが目に入った。
なので私は安心するように手を振って返すことにした。
「それではディフェルナ様?準備はよろしいでしょうか?」
「ええ、大丈夫です」
「……一応言っておきますが、剣と矢は鋼鉄製、魔法は氷魔法と十分に殺傷能力はありますからね?死んでしまってもよろしいのですか?」
「全く問題ありません」
どうにかして引くようにリアス様は問いかけてくるけど、言葉通りだ。
「……殿下、本当によろしいのですね?」
「……」
「アシュ様、大丈夫です」
「……構わない」
「……まずは射撃手!三人編成での射撃体勢に入れ!」
リアス様の言葉で、三人の弓兵が壁際から弓を引く。
「放て!」
シャッ!
号令とともに、放たれた矢は一直線に私の胸を目掛けてくる。
だけど私は手を前で組んだまま動かない。
当然矢はそのまま私の身体に接触するけど、突き刺さることはなかった。
「なっ……!?」
うぉぉぉぉぉぉ!?
3本の矢は見えない壁にぶつかったかのように、運動エネルギーを失いそのまま地面へと落ちている。
自分では大丈夫だと思っていても結構怖いものね。
ぶつかる瞬間目を閉じちゃった。
「次は剣ですか?魔法ですか?」
「……魔法兵!アイスアローの用意を!」
今度は一人の魔法兵が私から少し離れた位置に立ち、詠唱を開始する。
こつん。
魔法兵の持つ杖が詠唱完了の合図をつけた。
「放て!」
「アイスアロー!」
放たれたのはまるで腕のような大きさの氷柱。
さすがにあれが目の前まで来るのは少し怖い。
なので私は右手を前へ突き出した。
そこに氷柱が突き刺さろうとしたけれど、氷柱は粉々に砕けていく。
「最後は剣ですね」
「……もはやその加護に疑いはありませんが、一手手合わせをしてもらいましょう」
リアスは剣を抜くと私の前に立ち塞がった。
その瞳にはもはや敵意もなく、純粋に輝いている。
「お手合わせということなら、剣をお借りできますか?」
「もしや、剣を扱えるのですか?」
「ええ、手慰みなものですが」
私は近くの兵士から一本の剣を借りると、両手でその柄を握った。
ずっしりとした重さが腕に軽く響く。
「それでは……はっ!」
リアス様の上段からの振り下ろしを私はなんなく剣で弾いた。
「なにっ!?」
横に流される体勢のリアス様は石畳の上を転がり、勢いを殺すとすぐに立ち上がった。
「……ふぅ」
そして今度は素早い一撃で私の胴を左から狙ってくる。
だけどそれも軽くいなすと、今度はこちらから剣を突き出していく。
レイピアのごとくまっすぐに突き出した剣をリアス様は身をひねってかろうじて避けると、そのまま回転するように薙ぎ払いを繰り出した。
私はそれを左手で持った剣で防ぐ。
勢いの乗った重さある攻撃だったけど、右手を剣の側面に当てることで全身で防いだ。
そしてそのまま剣を押し当てて、リアス様の身体をバランスを崩す。
するとリアス様は後方へと倒れ込んでいった。
私はそこに剣を突きつけ、
「これで認めていただけましたか?」
そう問いかけた。
「認めるしかないでしょう……まさかこれほどとは思いませんでした。どうやってこれほどまでの技術を?」
「日頃の自身の鍛錬です」
「……鍛錬?姫君が?」
「力なくして理想は語れませんから」
「そ、そうですか……ん?鍛錬とおっしゃっていましたが、どうやって対人戦闘の経験を?」
「観ておりましたから。兵士たち同士の模擬戦を」
「観ていただけで……?」
「ええ、どうやら武に関しては父の才を受け継いだようです」
私の目はかなり精度が良く、瞬発力や持久力といった身体能力も抜群によかった。
それらを10歳の頃から密かに磨き上げてきたの。
軍という力も重要だけど、個の力も必要だと思っていたから。
「あなたの力は十分に理解しました。ですが、ここからは政治の領域に入っていきます。我が国は専守防衛。そんな我が国のあり方を変えることができると思いますか?」
「この国の未来のために、平和を乱すものという汚名を被る覚悟はできています」
「……このリアス。殿下とその妃となられるディフェルナ様の剣となることを。ここに誓います」
「ありがとう」
「皆のもの!殿下の妃様である!歓迎の声を上げよ!」
リアスの声に続くように、大きな歓声が上がったのだった。




