王子の腹心リアスとの論戦
街の中心部へと到着した頃にはすっかりと日が暮れてしまった。
「ずいぶんと遅い到着でございますね?」
「姫君に街を案内していると時間が経ってしまってな」
「そうですか」
館の門をくぐり、出迎えてくれたのは青い髪の男性。
歳は20歳を過ぎたくらいかしら。
長い髪が右目を隠しているけれど、見目麗しい方だと思う。
ただ、少し冷たい印象を受けるけれど。
「ああ、紹介しよう。この男はリアス。私の腹心だ」
「ご紹介ありがとうございます。私はディフェルナでございます。そしてこちらはサリナです」
私とともにサリナが一礼すると、リアス様は表情を変えずにこちらに礼をした。
しかし、
「殿下、今回の婚姻はお断りするのではなかったのですか?」
すぐにアシュ様へと視線を向けると、問いただし始めた。
「そう思っていたのだが、フェルナの決意は固くてな。それにただ結婚をするだけの為にこちらへ来たわけではないようだ」
「というと?」
「お話し中申し訳ありません。そこからは私から説明させてください」
「私は殿下と話しているのですが?」
優男のように見えて一切の配慮を見せないリアス様。
まあこれくらいの扱い、実家でも受けていたからどうということはないわね。
「ですがお話しの当事者は私のことのようなので、こちらからお話ししてはダメでしょうか?」
「……お願いいたします」
リアス様はアシュ様に視線を向けると、アシュ様はコクリと頷いた。
「私はオルフェリア皇国の侵略を止め、この国に平和をもたらす為にやってきました」
「平和?私は束の間のでしょう?」
「そうですね。私との婚姻で結ばれた条約など数年で破棄されるでしょう。ですからその前にこちらから攻め込むことを提案したのです」
「そのような愚行ができるわけないでしょう?条約とは重いものです。相手から破棄されるのであればこちらに非はありませんが、こちらから破棄するなど我が国は信頼できる相手ではないと大陸中に宣言するようなものではありませんか?」
「いいえ、盟約を破るという行為は私がします。各国に対する檄も私の名前で行い、その正当性としてはオルフェリアの侵略を止めるためとします。それだと正義はスイレースにあります」
「しかし、領土を拡大するとなると侵略戦争とのそしりを受けますが?」
「皇王と皇子を討てば領土は返せばいいでしょう。領土関係は後の火種になりますからね」
「それでは我が国は何のために戦争を仕掛けるのですか?」
「それこそ、平和の為です。私は出国する際に言われました。せいぜい数年の平和を楽しめ、と」
「……それだけの覚悟があるのなら、前線へと赴く覚悟がお有りなのでしょうね?」
「リアス、そこまでは私は求めていない」
アシュ様の助け船があったものの、私は一向に構わない。
「もちろん。そのつもりです。前線のオルフェリア兵士に告げるつもりですから、戦争が嫌なものはこちらに投降してくださいとね」
「そう簡単におっしゃいますが、あなたが戦場で死んではすべてがふいになりますよ?」
「私は死にません。どのような攻撃でも矢でも魔法でもね?」
「守護の力ですか?」
「あら、ご存知でしたか?」
「ええ、それなりには調査しておりますので」
「ですが、その強さまでは知らないでしょう?試してみてもよろしいですよ。その剣で私の首を狙ってください」
「フェルナ様!?」
「フェルナ!?」
アシュ様とサリナが驚く。
まあ首を斬れと言われれば驚くのも無理はないか。
「わかりました。そこまで言われるのならば明日、全兵士の前で披露していただきましょう。そうすればあなたを快く出迎える兵士も増えるかもしれません。ですがおっしゃられた通り、剣だけではなく弓と魔法も用意させていただきますね?」
「どうぞ、ご随意に」
「それでは殿下。私も納得致しましたので中へ」
「……納得したというのか?それで」
すでに数人の兵士を引き連れ、中へと去っていくリアスにアシュ様はため息を吐く。
「大丈夫、なのか?」
「フェルナ様ぁ……」
「大丈夫です。こう見えて私、強いんですよ?」
私は向けられる不安を吹き飛ばすように、笑った。




